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「オフラインよりも近い組織を作る。シリコンバレーで学んだモブワークの勧め」Qiita Conference 2023 Autumnイベントレポート

2023年10月25日〜27日の3日にわたり、日本最大級*¹のエンジニアコミュニティ「Qiita」が開催するオンライン技術カンファレンス「Qiita Conference 2023 Autumn」がオンライン開催されました。

*¹「最大級」は、エンジニアが集うオンラインコミュニティを市場として、IT人材白書(2020年版)と当社登録会員数・UU数の比較をもとに表現しています

当日は、ゲストスピーカーによる基調講演や参加各社のスポンサーセッションを通じて技術的な挑戦や蓄積された知見等が共有され、登録参加者数も2,800名を超える盛況ぶりでした。

本レポートでは、NECソリューションイノベータ株式会社のシニアプロフェッショナル、ITアーキテクトである茂木 貴洋氏によるセッション「オフラインよりも近い組織を作る。シリコンバレーで学んだモブワークの勧め」の様子をお伝えします。

* 本レポートでは、当日のセッショントーク内容の中からポイントとなる部分等を抽出して再編集しています

プロフィール

茂木 貴洋(もぎ たかひろ)
NECソリューションイノベータ株式会社
シニアプロフェッショナル/ITアーキテクト
組み込みシステム開発、業務アプリケーション開発、SaaSアプリケーション開発、自社(及びNEC)の新規事業開発などの経験を経て、現在はDX事業の推進に従事。 過去にはシリコンバレーで新事業開発のデベロップリーダーとして活動していたこともあり、シリコンバレー仕込みのリーンスタートアップやデザイン思考を駆使し、顧客のDX実現に向けてコンサルから新事業創出や業務改革向けたデリバリまで、ITアーキテクトとして一気通貫の併走も行っている。

チームもプロジェクトもリモート前提で発足した「DX推進グループ」

茂木:私はNECソリューションイノベータ株式会社でデジタルビジネス推進本部 DX推進グループに所属していまして、お客さまのDXの推進およびデジタル技術を活用した新規事業創出のお手伝いをしています。専門はITアーキテクトですので、クラウドネイティブなITアーキテクトを得意としています。

「お客さまのDXの推進」とは、デジタルを前提としたお客さまの新事業創出だったり、お客さまのお客さま(エンドユーザー)へのデジタルを前提とした新しい顧客体験の実現だったり、お客さまの社内プロセスをドラスティックに改革をしていくことだったりのご支援だと、我々は捉えています。

DX推進グループが発足されたのは2020年4月。ちょうど新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で緊急事態宣言が出た頃でしたので、リモート前提で新しいチームを始める、ということでスタートしました。よってチームメンバーは、日本全国から集められた先端技術を保有するエンジニアが集められました。私も含めてクラウドネイティブエンジニアが結構多いのと、ITアーキテクトも多数所属しています。

茂木:チームが発足して最初にメンバー全員で考えたのが、「オンライン前提でオフラインよりも効率的にお客さまに対して価値提供し続けるためには、どのようなチームであるべきか」という点です。DXをお客さまに価値として提供する組織なのだから、自分たちもDXする必要があると。当たり前のことですが、それがまず大前提としてありました。そこで私は、過去の経験を活かそうと考えました。

茂木:こちらは(上図)ざっくりとした私のキャリアが書かれているのですが、2018年から2年ほど、シリコンバレーで新規事業開発のDevelop Leaderを務めていたことがありました。そこでの経験等を活かして、新しい組織の立ち上げやリモートベースでのお客さまへの価値提供の実践を進めていきました。

(スピード+体験+越境)× それらを強要する組織文化

茂木:具体的に、私がシリコンバレーでの新事業開発から得ることができた経験は、大きく分けて以下の3点です

茂木:1つ目は「スピード」です。日本での新事業開発と比べると、シリコンバレーでは提案に対して「これはすぐに使えるのか?」と、スピードが求められていました。
当時、提案こそシリコンバレーで行っていたものの、実際の開発はインドや日本で行っていた中で、オフラインと遜色のないスピード感で対応できていたので、リモートでも全くもって問題ないと感じていました。

2つ目は「体験」です。自分自身が実際に体験しないことには地に足のついた提案ができない、という文化が向こうにはありました。そのため、「分からないなら使ってみよう」「良いものは真似してみよう」という考え方が強くあり、そこもオンラインで実践できるなと考えました。

そして3つ目は「越境」です。自分はエンジニアのDevelop Leaderとして参画していたのですが、事業開発自体はCEO兼マーケターの人とリサーチャー研究者、それからエンジニアの私、そして実際の開発を進めるチームがインドと日本にいるという、小さな組織体で運営していました。つまり、開発業務だけでなく、例えばビジネスデザインやUXデザイン、データ分析など、自身の業務を越境して対応する必要があったのです。越境することで、ビジネス全体の解像度が上がるため、そのような観点も活かせるだろうと考えていました。

また新事業の創出では、間違いなく失敗することの方が多いです。だからこそ、失敗を許容するような組織文化も必要だろうと考えました。
ここまでの内容を自分たちのチーム作りに活かした方針が以下(右側青枠内)の6つとなります

スピードアップのために重要なモブワーク

茂木:まず1つ目のポイントは「コミュニケーションのスピードをあげよう」です。オンライン前提でのコミュニケーションを模索しました。今では結構当たり前かもしれませんが、具体的には、非同期でコミュニケーションするメールや同時編集ができないファイルサーバの利用、ローカルにメモを取るようなことを廃止しました。
メールに関してはチャットツールで代替し、ファイルサーバの代わりにBox等を活用し、さらにはローカルメモ対策としてNotionやBox Notes等を使うようにしていきました。

2つ目のポイントは「アウトプットのスピードをあげよう」です。お客さまへの価値提供スピード/仮説検証スピードをあげるためにも、DXの検討序盤段階では精度よりもスピードが重要だと考えています。だからこそ、あらゆる仕組みを利用してアウトプットスピードをあげることを意識しました。具体的には、まずはNCP(ノーコードプラットフォーム)/LCP(ローコードプラットフォーム)を使うということで、BubbleやAirtable、他にはAzureやGCP、Power AppsやPower Automate、それから今だとOpenAIサービスのようなところを組み合わせていって、より早く価値提供できるように工夫しました。
またお客さまとのやり取りもチャットツールに移行していただくようお願いし、コミュニケーションスピードを上げることで、お客さま理解のスピードも結果としてどんどん上がっていくことになりました。そしてお客さまとの作業についても、MiroとかOneDriveなどを使うことで「その場で共同で作り上げていく」ようにしました。

茂木:アウトプットのスピードをあげる点についてはもう1つ、モブワークによる作業の共同化も効果が高い取り組みでした。プログラミングはもちろん、資料作成なども全部モブワークにすることで、チーム間での共同化が爆速で進むことになりました。全体業務に対する比率としては、3分の1程度がモブワークになっていたと思います。

モブワークについて興味を持たれた方は、ぜひこちらの記事をご覧になってみてください。

Qiitaで記事を読む : テレワークでの働き方はモブワークがいいと思う

茂木:3つ目のポイントは「良い体験を増やそう」です。先ほどもお伝えしたとおり、お客さまに提案するにしても自分たちが体験していないものに関しては本質的には提案できないかなと思っています
ですから自分たち自身が、まずは様々なサービスを業務で使って体験してみるということをやりました。ここに挙げているもの以外にも、多様なツールを使ってお客さまのDXを進めるための提案に活かしていきました。もちろん、NECグループとしてしっかりとセキュリティ審査を経て利用するようにしています。

茂木:良い体験の続きでお伝えすると、我々は開発者体験(Developer eXperience)も重要だと考えていまして、開発メンバー全員に、当時としては最新だったM1チップ搭載のMacBookを手配しました。MacBookにすることで、iOSアプリ含め基本的にどのようなアプリでも開発できますし、洗練されたUXも体験できるというメリットがあると考えました。また、M1チップで高速ビルドができる点も大きかったです。

自分のやるべき仕事は自分で勝ち取ろう

茂木:そして4つ目のポイントが「自分で考えて行動しよう」です。我々はエンジニアですので、課題解決のプロとして、常に自ら考えて行動しようということをルールとして定めました。
例えば、繰り返しの作業については「自動化」を考えましょう、というものです。RPAや各種ツールを自ら開発していくことになるのですが、その際に、作る時間と効率化される時間を天秤にかけて、自分1人だけの効率化ではなく、組織や会社としての効率化を考えるようにしました。

また、日常にある「不便」、「不満」、「不安」、「不足」、「不快」……といった「不」を常に意識して、それらが解消された世界を考えながら解決方法を模索していくということも話していきました。

茂木:それに付随して、5つ目のポイントでもある「自分のやるべき仕事は自分で勝ち取ろう」をテーマとして掲げています。我々は基本的にシステムエンジニアなので、サービスデザインやデリバリー、運用が得意なところです。
しかし、お客さまのDXはそれだけでは実現しないので、ずっと継続してEnd to Endで並走するということをやっていきました。ですから例えば、お客さまの課題発見だったり仮説立案の部分なども、越境してやるようにしています。

お客さまはお客さまの業務のプロですから、そこはしっかりと任せる一方で、我々はデジタルのプロとしてビジネスデザインをご一緒して行ったということです。

同じ要領でデリバリ以降に関しても、システム安定稼働のための運用だけでなくカスタマーサクセスのためのメトリクス収集および運用に向けて、越境していきました。ちなみに、弊社独自のDX検討フレームワーク・プロセスでお客さまのDXをサポートするサービスとして「NEC デジタル変革支援サービス」を立ち上げています。こちらもよろしければご覧ください。

茂木:これは内部の話なのですが、業務のアサインはほぼ手あげ式でやりました。その際に、自分ができそうな仕事に手を挙げるのではなく、やるべき仕事を自ら選択してやりましょうというルールを作りました
まずは、お客さまから相談が来たときやアカウントSEから支援依頼が来たときなどに「誰か一緒にやりませんか?」と手を挙げ、手を挙げたからには主体的に責任をもって動くということを条件にしました。

また役職に捉われずに権限移譲を進めました。これは、主体的に責任をもって業務を遂行するための権限移譲なのですが、そうなると必然的に、個々人にセルフマネジメントを行う重要性が常に付きまとうことになりました。

そして最後6つ目は、「必要な知識は自ら得よう」です。主体的に活動するために自らを高めるセルフデベロップメントを重視しようということで、必要なときに必要な知識を自ら得ることができるように、組織としては5%ルール(月の最低5%は自己開発に充てる)を敷きました
そのために弊社では、自己学習のために社員向けにUdemyが用意されていますし、また部門としてはflierという本の要約サービスも、専門知識だけでなくリベラルアーツを身につけるために部門施策として導入しました。

茂木:最後になりますが、NECソリューションイノベータでは、こんな取り組みもしているんだ・こんな働き方をしているんだという気づきを得ていただければ幸いです
もしよければ「エンジニア」としての強みを活かして一緒に働いてみませんか?ちょうど今日(セッション開催時)、キャリア採用プロモーションのページがスタートしましたので、ご興味があればぜひ見ていただければなと思います。本日はありがとうございました!

文:長岡武司

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