Dear Great Hackers

  1. インタビュー
  1. タイアップ

日立のAWSエンジニアたちが語る、海外エンタープライズ向けクラウドサービスを扱うダイナミズム

一昔前まで業務用途でのクラウド活用はハードルが高いということで、特にミッションクリティカルな領域においては長らく敬遠されていましたが、ここ数年でその活用は爆発的に広がってきています。もはや私たちの日常生活において間接的にクラウドを活用しない日はないほど、生活に浸透している技術だと言えるでしょう。

今回は、そんなクラウドの中でも特にAmazon Web Services(以下、AWS)を軸に、グローバルでクラウドサービス・データマネジメント事業を展開する日立製作所のメンバーにお話を伺いました。同社ではグループ会社である米・日立ヴァンタラ社と連携して、北米はもとより世界中のエンタープライズに向けて、クラウドソリューション等を展開していると言います。

大規模かつミッションクリティカルな領域への展開だからこその仕事の魅力や難しさについて、ストレージソリューションの開発に強みをもつAWSエンジニア3名に聞きました。

プロフィール

早川 裕志(はやかわ ひろし)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット 
デジタルプラットフォーム事業部 ソフトウェア・サービス開発本部 
アーキテクチャセンタ シニアクラウドアーキテクト
2010年、日立製作所に新卒入社。入社から一貫して、ソフトウェアプロダクトの自社開発・企画に従事。先端情報システム研究開発部時代に海外向け各種システム管理ソフトウェアの開発に携わったのちに、現在はアーキテクチャセンタにてストレージ管理クラウドサービスの開発に従事。プロダクトの性質上、国内にとどまらず海外とのやり取りが多い。

 

白須 光(しらす あきら)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット 
デジタルプラットフォーム事業部 ソフトウェア・サービス開発本部 
クラウドサービス設計部 技師
2009年、日立製作所に新卒入社。ソフトウェア開発部署に配属され、インフラ管理のソフトウェア開発に従事。その後、クラウドサービスの開発部署へと異動し、テックリードなどを経験。現在はストレージ管理クラウドサービスを開発しており、仕様検討の他、PdM(プロダクトマネージャー)に準ずる業務も行っている。

 

須賀 功太(すが こうた)
株式会社日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット
デジタルプラットフォーム事業部 ソフトウェア・サービス開発本部 
クラウドサービス設計部 技師
2010年、日立製作所に新卒入社。海外の中規模企業向けIT資産管理ソフトウェアの開発に従事した後、ストレージ機器をより深く管理するソフトウェア開発部門へと異動。管理製品を使ったプロフェッショナルサービスの開発を担当した後、今度は米子会社へと3年ほど出向。現在は日本へと帰任し、クラウドを使ったサービス開発を行っている。

海外エンタープライズがメインの顧客層

――まずは皆さまの所属部署と、それぞれの業務内容の概要について教えてください。

早川 : 3人ともクラウドサービスプラットフォームビジネスユニットのソフトウェア・サービス開発本部に所属しています。

本部では、大きく2つの業務を行っています。1つは、ストレージの管理ソフトウェアやサービスの開発。そしてもう1つが、日立が扱う様々な案件へのソフトウェアに関する技術支援です。私が所属しているアーキテクチャセンタはこの2つの業務に対して、より高度な技術支援やコンサルテーションを行っており、私は現在、前者の管理ソフトウェアやサービスの開発に対して技術支援を行っています。

グループ会社である米・日立ヴァンタラ社と連携して、グローバルでデータマネジメントやストレージソリューションを展開しており、海外のお客さまに多くご利用いただいている点が我々の本部の特徴です。

白須 : 私は現在、ストレージ装置からデータ収集やリモートアクセスを行うためのストレージ管理サービスのテックリードを担当しています。

須賀 : 先ほど早川さんが、大きく「開発」と「技術支援」があると言っていましたが、開発の中でも大きく2つ、オンプレミス向けソフトウェアの開発チームとクラウドサービスの開発チームに分かれています。私は後者のクラウドサービス開発のテックリードを担当しており、白須さんが担当しているサービスに集まる「データ」を扱う別サービスの開発に携わっています。また、海外グループ会社等との折衝に関する業務も担当しています。

――ストレージの管理サービスということですが、これをクラウドでご提供されているということですか?

早川 : そうですね。従来はオンプレミスのデータセンターにストレージ装置を設置し、そこに管理ソフトも入れてお客さまに運用いただくというのが一般的でした。一方で最近は、ストレージ装置はデータセンターにあるものの、管理ソフトはクラウドでSaaSとしてご提供することでお客さまの負担を減らしていくというニーズが増えています。そのような背景から、クラウドでご提供するストレージ管理サービスの開発を進めています。主な対象が海外のエンタープライズということで、ミッションクリティカルな領域で事業展開されているお客さまが多いですね。

――海外のお客さまが大半ということで、先ほど日立ヴァンタラ社と連携しているとおっしゃっていましたが、具体的にどんな役割分担をされているのでしょうか?

早川 : 基本的に海外では日立ヴァンタラ社が窓口となって、日立のストレージ装置やサービスを販売しています。そこで様々な要望が吸い上げられてくる中で、日立ヴァンタラ社のPM(プロジェクトマネージャー)と我々エンジニアが一緒になって、次なる製品の企画・設計を進めていくという形で協働しています。

AWS GameDay出場など、積極的に技術をキャッチアップ

――クラウドを扱うことの難しさや、皆さまが感じるやりがいについて教えてください。

須賀 : デリバリの速さですね。我々はもともとインストール型のソフトウェアを開発していましたが、インストール先の環境はお客さまごとに様々ですので、その環境を考慮して設計開発を行う必要がありますし、開発した機能をお使いいただくまでのタイムラグも小さくありませんでした。これがSaaSになると、デプロイ先が1つになり、開発チームはより顧客価値に直結する開発に集中できるようになりますし、クラウドの便利な機能も活用できるので、新機能を素早くお届けすることができます。一方で選択肢がどんどん増えていくので、全体の整合性や保守性を保つのが難しくなります。

白須 : 苦労しているポイントとしては、オンプレミス開発時よりも知らないといけないことが増えたというところですね。あと、常に最新の情報をキャッチアップしていかないと、取り残されたり無駄なものを作ってしまうことになるので、そういったところが楽しさでもあり苦労でもあると感じています。

――特に技術のキャッチアップって大変だなと思うのですが、何か工夫されていることはありますか?

白須 : 個人での工夫ではないのですが、例えばこのメンバーで「AWS GameDay」*¹に出場するなどして、技術+戦略策定などの領域でトレーニングを積むような工夫をしています。

早川 : ちょうど先日、このメンバー+1名でリージョナルリーグのひとつであるJapan Cupに参加してきまして、結果としては3位に入賞することができました。

*¹AWS GameDay:ゲーム化されたリスクのない環境で AWS ソリューションを実装して、現実世界の問題解決スキルを競う競技型ワークショップ
https://twitter.com/AWS_Partners/status/1707708094866751963

――これは業務として参加されているのでしょうか?

早川 : プライベートに近いのですが、業務としてもある程度の時間を割いて活動する許可をいただいています。このような点は、日立のよいところの1つだと思います。

須賀 : もともとストレージ管理はニッチな領域なので、エンジニアの横のつながりがなかなかできないところがあったのですが、クラウドはコミュニティが非常に厚く、AWS GameDayのように外の方々との交流も盛んにできるので、そこがクラウドの楽しさの1つだと感じます。

2023年も、AWSが展開するパートナープログラム「AWSパートナーネットワーク(APN)」において、高度な技術力を発揮して活躍したAWSに精通したエンジニアを表彰する「2023 Japan AWS Ambassadors」「2023 Japan AWS Top Engineers」「2023 Japan AWS All Certifications Engineers」「2023 Japan AWS Jr. Champions」に日立製作所の社員が数多く選出された。早川氏(写真中央)も「2023 Japan AWS Top Engineers【Services】」で選出されている

――なるほど。早川さんが感じる、クラウドを扱うことの難しさややりがいとしてはいかがでしょうか?

早川 : 私は、もともとクラウドをどうしても使いたかった人間で、大学でも分散コンピューティングやネットワークに関する研究をしていました。当時は性能やコストなど含めて本当に使い物になるのか/事業として成立するのかという疑問が世界的にあったと思いますが、米国でどんどん新しいものができているということで、触ってみたいという気持ちが高まっていったのです。
AWSに初めて触れたのが2011年で、自身の携わる業務で使える機会がありそうだとなったのが2016年。実際に業務でGoogle Cloudを使って開発をはじめたのが2018年で、AWSを使いはじめたのが2019年、という流れです。

ですから自分にとってクラウドは楽しくて仕方がなくて、2011年から一貫して趣味のような感覚があります。クラウドは価値を早くデリバリーするためのインフラなので、余計なことに気を遣わなくて済むんです。特に我々はサーバーレス主体で開発をしているので、インフラの管理はクラウドベンダにお任せして、我々のコアバリューの開発に集中することができますし、作ったものをすぐに試すことができるのも、ソフトウェアエンジニアとしては理想的だと思います。

――ちなみに、先ほど少し登場したGoogle Cloudなど、AWS以外を扱うこともあるのでしょうか?

早川 : 自社開発では、目的やチームメンバーの習熟度等を考慮して選定を行います。受託案件では、当然お客さまの意向を加味してご提案することになりますが、AzureやGoogle Cloudについても支援しますし、もちろん必要なキャッチアップもしています。
AWSは現在クラウドのマーケットリーダーであり、JAWS(AWS Users Group – Japan)*²などのコミュニティ支援に力を入れておられるので、情報量も多く、必然的にAWSのご提案が多くなっているところはあると思います。

*2 JAWS-UGは、AWSが提供するクラウドコンピューティングを利用する人々のコミュニティ
https://jaws-ug.jp/

特に私たちの本部は、ソフトウェアの開発環境含め非常にオープン

――皆さま基本的には、お客さま案件というよりも自社開発プロジェクトに携わっているということで、自社開発がゆえの楽しさについても教えてください。

須賀 : ユーザー体験を主体的に考え、デザインできるのは楽しいですよ。お客さまから受け取った要望をそのまま実現するだけでなく、その要望の背景を深堀りして、よりよい解決手段や改善に向けたアプローチを取れるところが、面白いです。

白須 : 私自身は自社開発以外のシステム開発をしたことがないので比較で語ることはできないのですが、 どういった価値をどの順番で届けるかについて、自分たちの戦略次第で入れ替えていけるのが自社開発のよさだと感じています。

早川 : 一般的な話になりますが、自社開発は複数のお客さまにフィットするものになるので、相反する要件がある中でいかに両立させるかという難しさがあると思います。特にミッションクリティカルだと要件も厳しくなるので、アーキテクトの立場からだと、難度の高さこそが楽しさだったりします。難しい課題に対して、技術面だけでなく、様々な視点で考える機会そのものが楽しいですね。

――技術という観点で他社と比較した際の強みについても、お考えを教えてください。

早川 : 我々が扱ってきた管理ソフトはストレージ等の対象物ありきの世界なので、その仕組みをよく理解した上で開発に取り組む必要があります。その姿勢はクラウドを使う際にも活きていて、単に「こうやれば使える」ではなく、クラウドの「振る舞い」を検証したり、中身を推察したりしながら、仕組みを理解して使いこなしていく。それが、開発するサービスの品質を高めることにつながっていると思いますし、AWS GameDayのような場でも助けになっていると思います。

白須 : 技術ではなくビジネスの観点で考えると、もともとオンプレミスで展開していたこともあって、世界中で24時間365日でのサポート体制の仕組みが整っているのは、大きなアドバンテージだと思います。

須賀 : そうですね。世界中のメンバーと協働しながら、オンプレミス向け製品もクラウドサービスもエンタープライズレベルのクオリティでサポートできるようになっているのは強みですね。

――日立で働くことのメリットや良さなど、皆さまが感じられていることも教えてください。

白須 : まずは人財が揃っているところだと思います。日立は、これまでクラウドの技術をあまり積極的に展開できていなかったのですが、それでも早川さんのように詳しい方が何人もいらっしゃいます。
新しいことに挑戦しようとすると、大抵はその分野に詳しい人が数人は社内にいるという状態なので、そのような人たちと気軽に接することができる点は、この会社の魅力なんだと思います。現にものづくりをするときなどは、私の方から積極的にご相談させてもらっています。

須賀 : 私は日立に入社する際に、社会に役立つインフラやソフトウェアの開発をやりたいなと考えていたのですが、入ってみると本当にグローバルで大きな企業に自分たちのサービスや製品を使っていただけているので、大きな仕事に携われる点が嬉しいポイントです。

あと地味なところではありますが、何時に出社してもいいなど、エンジニアらしく働ける点も魅力ですね。特に私たちの部署は大半がエンジニアなので、他の部署に比べて時に環境面でいいのかもしれませんが。

早川 : 現在子育てをしている関係で、保育園の送迎など、リモートワーク含めてかなり自由に働き方を決めることができるのは、この会社の良いところだと思います。特に日立はコロナになる前から裁量労働制をやっていたこともあって、制度としてしっかりと整備されていると感じます。正直、かなり自由な働き方ができるから入社したというのもあります。

また白須さんもおっしゃっていた通り、特化したスペシャリストが多く、大きな会社なので探せばやたらと詳しい人がいます。本当に特化しすぎていて、メモリダンプをそのまま読む人とかもいたりします(笑)見つけるのが大変なところもありますが、探せば誰かしらいるというのも、面白さのポイントの1つですね。

我々の本部の多くは自社開発に携わっているので、開発言語やツールなどを受託案件より自由に選定できる点も、エンジニアとして嬉しい部分だと思います。

スタートアップで活躍していたような方にも積極的に来ていただきたい

――皆さまの今後のキャリア感についてはいかがでしょうか?

早川 : ずっとソフトウェアのアーキテクトとして仕事をしてきたので、クラウドかオンプレミスかは手段でしかないと思いますが、クラウドはとにかく楽しいので、クラウドのスペシャリストとして社内のクラウド事業を伸ばしていきたいと思っています。そのためにも、日立内のクラウド技術のボトムアップに貢献していきたいと考えています。

白須 : 私の部署は開発がメインなので、オープンな技術と日立の強みを組み合わせて、他社に真似できないような価値ある製品を仕上げていくことを続けていきたいです。

須賀 : 私も基本的にはエンジニアとしてずっとやっていきたいと考えています。最近ではジョブ型雇用として、エンジニアとしてのキャリアパスも日立内で増えてきているので、エンジニアのスペシャリストとして、クラウドや各ドメイン知識を活かして技術力を高めていきたいと思います。

――今後、どんなメンバーにジョインしてもらいたいですか?

須賀 : エンジニアとして新しい技術を一緒に勉強して、一緒に高め合っていける人がいいなと思います。現に今も、このメンバーを含めてみんなで毎週集まって、積極的に情報交換して情報をキャッチアップしています。キーワードは「貪欲」ですね。

白須 : 技術を楽しめる方ですね。そしてそれに乗ってくれる、ノリがいい方がいいなと思います。

早川 : エンジニアリングで切磋琢磨できる人ですかね。技術の世界なので、日々変わってきます。キャッチアップを無意識にやっていて、「この技術が面白い」「今日こんなのが出たぞ」とか言って、人とシェアするのが楽しいと感じる人がいいなと思います。

――ありがとうございます。それでは最後に、読者の皆さまに一言ずつメッセージをお願いします。

須賀 : 日立は固いイメージがあると思いますが、エンジニアとして自由に働ける環境が整っていますし、希望を出せばしっかりと聞いてもらえます。現に私も、漠然と海外に出向したいと希望を出していたら、米子会社のメンバーの入れ替えのタイミングで白羽の矢が立ち、出向が叶いました。グローバルで活躍したいと考えているエンジニアにもおすすめできると思います。

白須 : 「日立独自の」というイメージが結構強いとは思いますが、AWSを使った事例を共有し合うイベントがあったり、様々な部署でクラウドのプロジェクトが動いていたりして、思っている以上にオープンな環境で開発ができるようになっていると思います。ですから、クラウド領域に興味がある人にとっては、楽しめる環境なのではないでしょうか。

早川 : 我々が作っているものは、普段意識することはありませんが、恩恵を受けていない人はほとんどいないと思います。世の中で広く使っていただけるサービスを作れるというのが、日立の事業規模の恩恵だと感じます。
一方でうちの本部のように、大企業らしくないところもあり、バランスが取れている点が我々の職場のいいところだと思います。

会社として新しい風がほしいと思っているので、大企業やSIer経験者はもちろん、スタートアップで活躍していた方にもぜひ来ていただきたいなと思います。

編集後記

インタビュイーの早川さんが最後におっしゃっているように、日立製作所ではスタートアップで活躍したメンバーにも積極的にジョインしてもらいたいと考えており、実際に皆さま「ぜひ一緒に働きたい」とおっしゃっていました。一方で、日立にある「固い」イメージがどうしても先行しており、なかなかスタートアップから門戸を叩く人は多くないのも実情だと言います。少なくとも今回取材した本部は非常にエンジニアフレンドリーで、案件のお話を伺っていても非常に面白そうな環境と感じますので、興味のあるスタートアップ関係者は、ぜひジョインを検討してみても良いのではないでしょうか。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平


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