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  1. Qiita
  1. インタビュー

ARアドバンストテクノロジ株式会社が語る、「情報発信なんて無理」という企業こそQiita Organizationを使うべき理由。


最先端のクラウド技術を活用したコンサルティングやソリューションサービスで高い評価を得ているARアドバンストテクノロジ株式会社(AR advanced technology, Inc. 以下、ARI)は、自社の情報発信とブランディングの礎となる「書く文化」を社内に醸成するため「Qiita Organization(キータ オーガナイゼーション)」を導入しています。

ARIは、Qiita Organizationを使い、アウトプットする環境を作り情報発信力を高めたことが良い循環を生み出しているそうです。そこで今回は、ARIの取締役専務執行役員の中野 ヤスオ氏、ビジネスイノベーションサービス部長の原田 真裕氏、クラウドサービス第2課長の本宮 曜氏に、同社のQiita Organization導入時のエピソードや、効果、今後についてお伺いしました。

中野 ヤスオ (なかの やすお)
ARアドバンストテクノロジ株式会社
取締役専務執行役員
1999年、フューチャーアーキテクト株式会社に入社し、約10年間にわたり業務改革やシステム企画開発案件に従事。 2009年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。ECマーケットプレイス事業のサービス企画/開発の責任者として、プロダクトマネジメント及びサービス開発を指揮。その後独立起業を経て2012年より現職。

 

原田 真裕 (はらだ まさひろ)
ARアドバンストテクノロジ株式会社
DXソリューションユニット
ビジネスイノベーションサービス部 部長
2012年ARアドバンストテクノロジ株式会社に入社。TypeScript, React, Next.js, Node.js, Laravel など、フロントエンドからサーバサイドまでカバーする Web アプリケーションエンジニア。様々なプロジェクトでコードを書きながら、フロントエンドエンジニア部門のマネジメントにも従事する。

 

本宮 曜 (もとみや ひかる)
ARアドバンストテクノロジ株式会社
クラウドソリューションユニット
クラウドビジネス第1部 クラウドサービス第2課 課長
2020年ARアドバンストテクノロジ株式会社に入社。入社後、Azure基盤に関する設計・構築・運用全般を担当するクラウドエンジニアとして活動。現在も社内のAzure案件をリードしながら、メンバーの教育活動をしつつ生産性向上や人材育成に関する施策を実行している。

皆が知っている「Qiita Organization」なら書きやすくて長続きする

――はじめに自己紹介をお願いします。

中野ヤスオ氏(以下、中野):事業全般に広く関わりながら、特に全社横断で情報共有や教育、品質向上を促進するTech CoE事業室の責任者として、社内外への技術広報を推進しています。その情報発信ツールとしてQiita Organizationを活用して、情報発信の活性化に取り組んでいます。

原田 真裕氏(以下、原田):様々なプロジェクトでフロントエンドエンジニアとして開発に携わりながら、部門全体のマネジメントをしています。以前、Qiitaには個人で投稿していました。

本宮 曜氏(以下、本宮):Microsoft Azureなどクラウドを利用したシステム開発、サービス提供をしているセクションのリーダーです。2年半ほど前、私が入社したタイミングでQiita Organizationへの取り組みがはじまりました。それから月1本ぐらいのベースで記事を書くようにしています。現在はチームメンバーに記事を書いてもらうように利用推進もしています。

――御社が「Qiita Organization」を導入しようと考えた“きっかけ”は何だったのでしょうか?

中野:IT業界では企業のテックブログ、技術広報の重要性が指摘されて久しいですが、2020年の年明けごろ、当社も遅ればせながらブランディングや営業・採用といった観点から何らかの情報発信に取り組むことを考えました。当初は自社ドメインでメディアを作ることを考えましたが、正直、記事を書けるメンバーは数えるほどで、その状態でスタートしても「形だけの寂しいメディアになってしまうのではないか?」という不安がありました。

それなら、ネットショッピングの出店に例えると、いきなり自社店舗を持つよりもまずは大手のECモールに出店して実力を付けるイメージで、何らかのプラットフォームでメンバーに記事を書いてもらい、情報発信することを習慣づけたいと思いました。そうでないと長続きしないと考えたのです。

Qiita Organizationに注目したのは、Qiitaはエンジニアなら必ず触れたことがあるメディアなので、当社のメンバーが記事を書くハードルが低くなると思ったからでした。

個人的な話ですが、その少し前に私が書いたQiitaの記事が少しバズり、「こんなに人が見てくれるんだ」と広報効果を実感していたこともあります。また、書いた記事が読まれるとうれしいですし、「いいね」が付くなど反応があると面白くなります。裾野を広げて書き手を増やしたいという想いが大きかったこともあり、気軽にはじめられるQiita Organizationに取り組むことにしました。

――企業の情報発信の場として、オウンドメディアやテックブログが選択されるケースもあります。多くの選択肢の中からQiita Organizationを選んだ理由が他にありましたら教えてください。

中野:当時、「オウンドメディアの成功の鍵は継続にある」と書かれた記事を読みました。短期的に盛り上がりを見せても、その後にシュリンクしてしまえば資産的価値は落ちていく一方になります。そうしないためには継続しかないという話です。まずは「長続きしやすい」ことが一番のポイントになると思いました。くわえて、Qiita Organizationですと、Googleなどの検索結果で上位に来やすく、読者の目に留まりやすいことも考慮しています。

最初の1年は、書く人も限られていて記事も増えず低空飛行が続いた

――現在は多くのメンバーが記事を書かれていて、内容もかなり充実しています。当初、どのようにして利用を促進しましたか?

中野:はじめた当初は、Qiita Organizationを書くメンバーは10人もいませんでした。強制してしまうと、社内文化的に見ても今ひとつに感じられますし、コンテンツとしても弱くなると思うので強制はしませんでした。初年度から、私が月1回の朝会で利用促進のために告知は続けており、そのうちに、部門としてコンテンツをしっかり書いていこうというチームが出てきました。

本宮:はじめは私も知らないところで進んでいたようです。

中野:本宮が所属するAWSやMicrosoft Azureなどのクラウドインフラ構築部門で、みんなで目標を作って「何か書こうよ」みたいな動きが見られたのが2020年の春ごろです。2020年4月にコロナ禍で緊急事態宣言があり、リモート勤務になったことが影響しているかもしれません。

本宮:私個人としては、もともと意欲的に情報発信と情報共有をしたいという想いがありましたので、ちょうどいいタイミングでQiita Organizationが導入されたことになります。

原田:私は個人でブログをやっていたこともあり、何かを発信する、ということについてはある程度経験がありました。Qiita Organizationについては、何よりも会社として「まず初めてみる」ことが大事だと思っていましたので良い動きだったかと。

中野:最初の1年は、本当に書く人も限られていて低空飛行でした。それを象徴するのが、2020年のAdvent Calendarに参加しようと思ったときのこと。投稿者に「やろう」と声をかけたのですが、「OK」と答えてくれた人が7人ほどしかいなかったんです。

それにもめげず「やろう!」と言ってくれた若手がいたのですが、その人が書いた記事が軽くバズって500から600の「いいね」をもらうことができました。コンテンツを書く意欲を持った社員が少しずつ出てきたのが最初の1年です。ただその時点ではまだ、山は動いていない状況でした。

2021年になり、当社では「全員経営プロジェクト」が動きはじめました。その一環として、“全員広報”を意識した活動を行い、Qiita Organizationの記事投稿にも取り組んだのです。投稿に対するインセンティブ制度も作りました。はじめは記事をチェックしようと思いましたが、あえてチェックはせず書いてくれたらOKというルールにすると投稿が増えはじめました。

そして昨年の夏、この取り組みの中でキーマンとなる人が現れました。研究開発部門にいるエンジニアですが、毎日のように記事を投稿してくれたのです。すると、投稿本数が増えたこともあってQiitaのランキングに出るようになりました。それを毎月の朝会などでアピールすると、メンバーが反応して「Qiita Organizationに参加します」と宣言する人が一気に増えて110人ほどになったのです。

情報発信が成長につながると言わなくても伝わるフェーズへと到達

――現在は投稿の本数も増え、活発に皆さんが投稿するようなっていますね。

中野:マラソンのペースメーカーのような存在が現れると、「自分も書けるんだ」といった気運が生まれて全体が上がっていくようですね。

それもあり、2021年のQiita Advent Calendarは20人以上が集まって、あっという間に全枠を埋めることができました。さらに投稿にタグを付けるキャンペーンなどに自発的に応募する社員も現れて表彰されるなどしています。

今になって思うと、はじめはQiita Organizationに記事を書くことが「特別なこと」だったわけです。それが今は、ごく自然に普段の業務の一部のように溶け込んだ感じになっています。当社の人事面談の場でも、多くの若いメンバーが目標の中にQiita Organizationの記事を書くことを掲げてくれるようになりました。

情報発信することが自分の成長のためになるとか、そういったことを言わなくても伝わるフェーズにようやく到達したと感じることができて感慨深いものがありました。

――御社に情報発信をする文化が定着して、効果を感じたことを教えてください。

中野:お客様から「最近、Qiitaで頑張っていますね」と言われる機会が増えました。また、採用面談でも弊社メンバーがQiitaで積極的に情報発信をしていることに好印象を持たれている候補者の方も多く、Qiita Organizationでの活動を評価いただいていると感じています。

イベントに参加してメンバーの情報発信の「きっかけ」を作りたい

――Advent CalendarやEngineer Festaにはどのような目的や狙いを持って参加していますか?

中野:イベントには大きくふたつの狙いを持って参加しています。一つは、業界内で当社のことを知っている方がまだ多くないため、少しでも知名度を上げてブランディングの基盤をつくることです。

また、情報発信をする最初の一歩のきっかけをメンバーに作ってあげるのも大きな狙いの一つです。書き手を増やす上で、最初の投稿はとても重要だと思っています。イベントなどがそのきっかけになったらいいですね。中学高校で習う物理の法則に静止摩擦力と動摩擦力の考え方があります。止まったものを動かす静止摩擦力の方が大きいので、まず、動きはじめられるように、イベントなどで最初の一押しをして、その後継続的に動きやすくしてあげたいなと思っています。

――御社のような大きい組織の場合、「社会への影響力」は意識しますか?

中野:まだまだ大きな組織ではないのですが、少しは意識しています。とんでもないことを書いてしまって「炎上」が起きるリスクはゼロではないでしょう。だからこそ、私は一定のポジションがあって責任を取れる人、ちゃんと判断できる人こそが率先して情報発信を行うべきだと思っています。ただ、だからといって全て責任者がレビューした記事でなければ公開させないとか、そんなことをしていたら情報発信は円滑に行かないですね。

――そういったリスクとブランディングできるメリットを比較して、メリットのある方を選んでいるのですね。

中野:リスクはどうしても存在してしまいますが、それでも情報発信をすることの方が何倍も価値があると信じています。

情報発信が苦手だと思っている企業にこそQiita Organizationを勧めたい

――今後、Qiita Organization等を使って、どのように情報発信を推進していくイメージを持っていますか?

中野:まず、書くことを習慣化する取り組みは、これまで以上にやっていく必要があると考えています。行動量にはこだわっていきたいですね。次に質の部分で、本当に多くのエンジニアの方々の役に立つ記事を書けるメンバーが増えてくれたらと良いなと思っています。

例えば、最近は、エントリー向けの記事が増えていると指摘されていますが、もっとコアでニッチな記事も増やしたいです。他者が書いた記事1本で、解決方法がわからずハマってしまった状況から抜けられたことは、エンジニアなら何回か経験があると思っています。そのように本当に役に立つコンテンツが発信できることを示したいですね。我々の社名には「アドバンストテクノロジ」とあり、技術に誇りを持っていることを自他ともに認められる会社になりたいという想いを持っています。

その意味で、技術に向き合っているエンジニアの方々に価値を届けられる記事を書ける会社になっていきたいと考えています。「ARIはそこまで発信して公開するんだ」と言われるようになりたいですね。

本宮:エンジニア個人としても情報発信は今後、絶対必要なスキルだと思っています。成長するためにはアウトプットした方が良いという前提があるので、情報発信が苦手なエンジニアにもまず1本記事を書いてみようと話し、様々な方法でサポートしています。

原田:私もアウトプットが大事だと思っています。会社でも個人でもブランディングができますから、外部へのアピールは重要ですね。技術領域を問わず、自分がやっていること、考えていることを発信することがセールスポイントを作ることにもつながります。その意味でも長く続けるべきだと考えています。私自身もこれから何か貢献していきたいと考えています。

――どのような企業にQiita Organizationは向いていますか?

中野:「情報発信なんてうちの会社じゃ無理だよ、書くのが苦手な社員が多いから」という企業にこそ向いていると思いますね。Qiita Organizationは、ある意味、組織としても個人としても「ハードルが低い」です。例えば、自社ブログを立てて、記事を書こうとなるとちょっと構えてしまうと思います。つまりハードルが上がってしまうことが容易に想像できるわけです。アジャイル思考ではありませんが、まず、何か情報発信をしたいなら、いきなり高い山、いきなりエベレストではなく、低い山から行った方が良いと思います。あ、Qiita Organizationを低い山に例えてしまいました。

一同:(笑)

中野:インターフェースがわかりやすいですし、使いやすい意味で“低い山”に例えましたが、まず、最初の一歩を楽に踏み出せる、応援してくれるメディアだと思います。ですから、情報発信が苦手だと思っている企業こそ、まず、Qiita Organizationをやってみたらどうですか、とご提案したいですね。

編集後記

ARアドバンストテクノロジ株式会社は情報発信やブランディングへの取り組みの一環として、自社メディアを構築する技術力がありながら、あえてQiita Organizationを選択されています。これは、社内に「書く文化」を定着させ、さらに発展させていくために使いやすさや持続性を考慮した結果だったようです。多くのエンジニアがQiitaを利用していることや、検索結果にも表示されやすいこともプラスに評価されています。
初年度こそ苦戦されたようですが、あっという間に投稿者も記事数も増え、着実に高い技術力を持つ企業として対外発信力を強めているARI。今後はさらに「量」だけでなく「質」にもこだわったアウトプット文化を醸成していこうとしています。今後の記事展開にも注目だと思いました。

取材/文:神田 富士晴
撮影:豊崎

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