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「大きな変革期を迎えるIT業界の未来を大予想!~ITエンジニアの生き残り戦略~」Qiita Conference 2023 Autumn イベントレポート

2023年10月25日〜27日の3日間に渡ってオンライン開催された、日本最大級*¹のエンジニアコミュニティ「Qiita」が開催するオンライン技術カンファレンス「Qiita Conference 2023 Autumn」。ゲストスピーカーによる基調講演や参加各社のスポンサーセッションを通じて技術的な挑戦や蓄積された知見等が共有され、登録参加者数も2,800名を超えるという盛況ぶりでした。
*¹「最大級」は、エンジニアが集うオンラインコミュニティを市場として、IT人材白書(2020年版)と当社登録会員数・UU数の比較をもとに表現しています。

今回は、株式会社キッカケクリエイション 取締役副社長である毛呂 淳一朗(IT菩薩モロー)氏によるセッション「大きな変革期を迎えるIT業界の未来を大予想!〜ITエンジニアの生き残り戦略~」の様子をお伝えします。

※本レポートでは、当日のセッショントーク内容の中からポイントとなる部分等を抽出して再編集しています

登壇者プロフィール

毛呂 淳一朗(IT菩薩モロー)
株式会社キッカケクリエイション​
取締役副社長
「IT菩薩モロー」として、YouTubeでITエンジニアの転職やキャリアに関する情報を発信する、キャリア系インフルエンサー。YouTube チャンネル登録者数は9,500人超。ITエンジニア特化のキャリア支援事業「キッカケエージェント」の事業責任者として事業グロースを手がける。またX(旧Twitter)のフォロワー数は16,500名超。(2023年9月時点)PMやテックリードの転職支援の実績も多数。

エンジニア特化のキャリア・転職支援サービス

毛呂:こんにちは、モローです。まずは簡単に自己紹介させてください。私は普段、主にYouTubeとかX(Twitter)などで、エンジニアのキャリアパスや転職などについての情報発信をするキャリア系インフルエンサーとして活動しています。

また、本業としましてはエンジニア特化の転職エージェント「キッカケエージェント」の事業責任者を担っております。これまでエンジニアの採用担当を4年弱やってきまして、面接する側の気持ちも分かるかなと思います。そして現在は様々な有名Web系企業やメガベンチャーなどに向けて、キャリア支援を行っています。基本的にはそのような企業のCTOや代表の方たちとやり取りをしていることもあり、今回は「来年(2024年)以降のエンジニアに求められるスキルや経験がどのようなものか」についてお話します

毛呂:簡単に、当社のサービス紹介をいたします。今までは年収が400〜600万円くらいの方のキャリア支援が多かったのですが、最近では30代後半~40代、年収でいうと900〜1,300万円ぐらいのテックリード/SRE/プロジェクトマネージャーといった方々のご支援もさせていただく機会が増えてきました。大手エージェントだと機械的に求人を何十社も提案されて「なんか違う」と思っていらっしゃる方に、当社のサービスは特にハマるのかなと思っています。

しかし、転職する/しないというのは私からすると問題ではないかなと思っており、それよりも本日は「何をやったら生涯年収がどれだけ上がるのか」というお話ができればと思っています。

毛呂:2022年から2023年にかけて、エンジニアに求められるスキル・経験や市場動向がガラッと変わったなという印象があり、2022年までの常識を引きずっていくと、上手くいかない可能性があるかなと思っています。ということで、今回はこの(上図の)3つのトピックについてお話しできればと思います。

2024年のIT業界を徹底予想

毛呂:まずは「来年以降のトレンドがどうなるのか」についてです。そのトレンドを一言でまとめると「コスパの良いIT人材」が挙げられます。コスパの良いIT人材について考える上で重要になる、現在のエンジニアの求人倍率データに、まずは触れていきたいと思います。

dodaがまとめたデータ(上図)によると、現在エンジニアの求人倍率は10倍を超えています。これを見て「まだまだ仕事はあるんだ、大丈夫そうだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その分析は危険な側面があると思っています。というのも、転職がしやすい方と、少し立ち位置を考えなければならない方の二極化が、今後進むのではないかと考えております。

そこで「エンジニアが今後、何を考慮すべきか」について、2つのポイントで話します。まず1つ目は、「市場で求められているエンジニア像を理解する」こと。そしてもう1つが「需要のある業界・企業を選択する」という、ポジショニングの話です。この2軸を上手に掛け合わせないと、自分が理想とする働き方や年収アップを実現させるのが難しくなっていくと考えています。

毛呂:それでは先ほどお伝えした「コスパの良いIT人材」とはどういう人なのかについて、いくつか例を挙げていきます。少々ショッキングな話をすると、コードを書けるだけの人は厳しくなるのではないかと考えております。根拠については後ほどご説明します。

一方で、リーダー・マネジメントの経験がある人については、非常に企業を選びやすいという特徴があります。基本的に技術に軸足を置いていきたい方であっても、なぜそんなにリーダーやマネジメントが重視されるのかを知っておいていただくだけで、何か戦略の手がかりになるかもしれませんので、押さえておいていただきたいトレンドです。そしてSREのような、開発とインフラのどちらも経験している人は、年収が上がりやすいと感じます。ということで、順番にこの3つを見ていきましょう。

コードを書けるだけの人はいらない

毛呂:こちらはLAPRASという、Web系エンジニアの方向けの転職活動を支援する媒体サービスを提供している会社のデータです。これを見ると、いわゆるミドルクラス、それからミドル〜ハイにかけての方に対する1社あたりのエンジニア採用人数枠が減っていることが最大のポイントです。一方、技術選定からできるような方や、それ以外でも突出した技術とか強みがあるようなハイレイヤーの方に関しては、実は2022年と2023年で採用人数枠がほとんど変わっていません。

これが何を意味するかというと、最大手SIerでもChatGPTの活用を本格的に進めていくことをアナウンスしており、そのような動きを考えても、もはやコードを上手に早く書けることは価値が低くなってきたと言えると思います。

毛呂:実際に転職の事例では、例えばこちらの(上図の)AさんはPHPで5年間の開発経験があるということで中堅と言えるくらいのエンジニアなのですが、この方は残念ながら自社でサービス開発している企業からはなかなか内定が出ず、結局受託開発企業に年収50万円アップという条件で転職をされました。設計から開発まで一通りやってはいたものの、どちらかというと言われた通りにタスクをこなしてきたため、年数が長い割にはあまり年収が上がらなかったというパターンになります。

一方Bさんは2022年卒業で、インターンでの経験を含めて2年半ほど開発経験がある方でした。非常に若い年齢であるにも関わらず、インフラでの設計構築やインターン生をまとめて4名ぐらいのリーダーもされていたこともあり、結果として610万円というそこそこ高めの年収で内定をいただいたというパターンです。

これらの事例を見てみると、年数や技術力だけで単純に評価されるという話ではなく、いかに掛け合わせて差別化するかというところが、すごく大事な時代になっているのかなと思います。

リーダー・マネジメント経験がある人は 企業を選びやすい

毛呂:掛け合わせの武器として昔から言われていることかもしれませんが、先ほどもお伝えしたとおり、リーダーやマネジメントの経験がある人は、今まで以上に企業を選びやすくなっています。

例えば開発経験が2〜3年目の方が転職したとき、メンバークラスだけでずっとやっている方と半年〜1年間リーダーをやっている方では90万円ほど差ができます。年数が開くと、もっと大きな年収の差に繋がってきます。

さらに具体的にお伝えすると、リーダー経験があるかないかを2〜3年目のエンジニアで想定したら、リーダー経験がないエンジニア400〜500万円なのに対して、リーダー経験があるエンジニアは450〜650万円というデータがあります。さらに、20代では少し難しいかもしれませんが、7〜10名のマネジメント経験があると年収800〜1,200万円になることもあります。マネジメント経験を絡めると年収1,000万円は比較的到達しやすいのですが、エンジニアとしてずっとやっていくとなると、1000万円もらうのは結構ハードルが高いということです。

毛呂:私が最初にエンジニア採用に携わる仕事をしたのは、今から4年ほど前の2019年です。当時はまだ7〜10名ほどのマネジメント経験がある方を、頑張れば年収600万円ほどで採用できていた印象がありますが、今の時代に同じようなスキルの方を採用しようとすると、年収で200万円ほど上がっていると思います。

これにはいくつか背景があると思っています。まず一つはリモートワークと出社のハイブリッド型で運用している企業が非常に多い中で、マネジメントの難易度がかなり上がっていることです。企業としては、このマネジメントする側の人をとにかく採用しないとプロジェクトの推進がどうにもならないので、そこで年収レンジをつり上げているという背景があります。

そしてもう一つは、日本の人口減少に伴う若手の人材不足です。加えてZ世代と言われるような年齢層だとタイパ/コスパをすごく気にする方が多い傾向があるので、リーダーの仕事をやりたがらない人も多いです。一方で企業からの需要はどんどん上がり続けるので、希少性が非常に高くなっているのかなと感じています。

開発 × インフラどちらも経験している人は 年収100~150万円アップを狙いやすい

毛呂:あともう一つ、開発とインフラを両方経験している人は、仮に経験年数が短い方でも非常に年収を上げやすいです。去年の終わりくらいから、特にベンチャーキャピタル(以下、VC)に話を聞いてみたところ、そもそもVCが投資できる企業がかなり少なくなってきていると言います。投資基準が厳しくなってきているそうです。

その観点で見たときに、DevOpsとかインフラ開発の部分を、新規の機能開発みたいなところよりも優先している企業が多い印象です。特に運用保守の部分などはプロダクトを運営する限りは必ず必要で、最近ではバックエンドエンジニアやフロントエンドエンジニアが、ある程度基本的なインフラの設計構築やパフォーマンスの設計構築を担当するケースが増えていることもあり、開発とインフラどちらも経験している人は非常に年収交渉がしやすくなっているという感じです。

毛呂:代表的な職種の一つがSREだと思うのですが、このSREの現在の年収レンジの相場はこんな感じ(上図)かなと思っています。ざっくりとしていますがジュニアクラスのSREは、皆さんが思っている以上に結構ジュニアの方でも大丈夫で、具体的には言語を問わず開発経験が2〜3年くらいで、その間にインフラ部分での設計構築の経験が1〜1.5年くらいあれば、図にあるような年収550〜650万円に到達します。そう考えると、一般的なバックエンドやフロントエンドのエンジニアの方と比べると高いですね。

加えてSREの経験者については650〜850万円、さらに100万人とか数百万人規模のユーザーがいるようなサービスのインフラ設計や技術選定をしてきた経験者になると、900〜1,200万円くらいになると感じます。なかなか夢のある年収レンジですよね。

求められる/ 淘汰されるエンジニア像

毛呂:次に「求められる/ 淘汰されるエンジニア像」について、より突っ込んだ話をします。先ほどもお伝えしたとおり、1人である程度様々なことができるような「コスパの良いIT人材」と、プログラミングしかできない人材の二極化がさらに進むことになると考えています。

具体的には、こちら(上図)にあるように各能力/スキルの重なりが大きければ大きいほど、年収レンジも高くなるのかなと。この丸が重なっている部分をいかに増やしていけるかが、自分らしい働き方とか年収を上げていく上ではすごく重要なポイントなのかなと思います。

毛呂:じゃあ具体的に何をやっていけばいいのかというところですが、「市場が小さい業界の知識 × 開発」の掛け合わせだと、そもそものマーケットがないため、年収をアップさせるところには繋がりづらいなと思います。具体的にはxR領域などが挙げられます。

一方で「組織マネジメント × 開発 × インフラ」でいうと、どの会社でもエンジニア採用と離職の防止/定着に向けた課題があるものですから、こういう掛け合わせで勝負していくと非常に簡単に働く職場が見つかりますし、年収も上げやすいと思います。

毛呂:ここでポイントになるのが、「市場での需要と自分の興味が重なるところを狙うこと」です。好きなことでも需要がないと年収は上がりませんし、市場で求められていても興味が持てないと情熱が湧かないこともあるので、中長期的には年収が伸び悩むケースがよくあります。そう考えると「自分のことをよく知る」ことがすごく大事なのかなと思います。

話は少々変わりますが、1848年ごろにアメリカで起きたゴールドラッシュで一番儲かったのは、実はリーバイスという、砂金を取るときのジーンズを売っている会社だったという話があります。現代で例えると、AWSの設計構築ができる人は年収レンジが上がりやすいなどいくつかトレンドがあると思いますが、このようなトレンドに飛びつく人は、ゴールドラッシュの話で考えると金を掘りに来た人になりやすいと思います。そうではなくマルチにできるエンジニアの方や先の市場を読める方というのは、ジーンズを売ったリーバイスのように、一番儲かる立ち位置を目指せるのではないかと考えております。

毛呂:なぜ自己分析が大切なのかという話をすると、こういう(上図の)方は「自分自身は器用貧乏だ」と思い込み、勝負できる要素がご自身には無いと思い込んでいるケースがかなり見受けられます。先ほどのゴールドラッシュの例ですと、ジーンズの生地が自分の部屋の中にたくさん置いてあるにもかかわらず、本人はその生地を持っていること自体に気づいていないような状態と言えます。

このような方は、自分の部屋をキレイにしてジーンズの生地を引っ張り出してクリーニングして売り出せば、すぐにでも高い値段になるような感じです。こういう方が非常に多いからこそ、自分のキャリアをちゃんと見つめることが大事だと思っています。

具体的に何をすれば 市場価値が上がる?

毛呂:需要がありそうなスキルを先読みできると、他の方と比べてより差別化ができるのではないかと考えています。その上で意識すべきことがこちら(上図)の3点だと考えています。

まずは自分が身を置くべき業界や企業を具体的にイメージすること。例えばメディカルやヘルスケアといった健康に関わるような業界は、不況の影響などを受けにくいです。また、やりたい人が少ないけど需要があるスキルを考えることも重要だと思います。例えば、テストの自動化については非常に多くの企業で需要があるものの、ちょっと地味な分野でもあるため興味がある人は相対的に少ないです。中長期で需要がありそうなスキル経験は何かというところを徹底的に考え抜くことが大事だと思います。

あとはIT市場のトレンドを把握した上で、エンジニアの採用を積極的にやりたい業界や企業はどこなのかという、自分なりの仮説を立てて理解することも重要です。将来自分の市場価値を上げやすい環境はどのようなところかを意識していただけると、生涯年収もしっかり上げられるのではないかと思っています。なお、実際に身を置くべき業界や企業の例としては、以下に挙げるようなところだと考えています。

あなたにはどの企業が向いているのか?

毛呂:ということで最後に、あなたにはどの企業が向いているのか、何をすべきかについてお話しします。

毛呂:コードを書くときにコードレビューを必ずやっていると思いますが、自己分析も一緒で、皆さん必ず自分自身がやってきたことや今のスキル/経験について、少なくとも半年に1回くらいは振り返って経歴書をアップデートしていただき、転職を考えていなくても良いので、エンジニアのキャリアパスや転職に詳しい人に適切なレビューを受けていただきたいと思っています。

一点、適切なレビューアーかどうかは重要だと考えております。例えば2022年と2023年だとIT転職市場が全く異なります。そう考えると、2〜3年前の情報しか知らない方や、今のエンジニア採用の現場を知らない人からはそもそも適切なアドバイスをもらえない可能性が高いので、気をつけていただきたいです。

最後になりますが、冒頭でもお伝えした通り、すぐに転職するかしないかは正直問題ではないと思っています。いずれにしても自分自身にとって一番働きやすく、かつ自分らしくいられる職場がどこなのか、また、年収アップをどういう風に実現するかについて、あなたの状況に合わせて個別にアドバイスができればと思っていますので、ぜひお気軽にご連絡いただければと思っています。本日はありがとうございました。

取材/文:長岡武司

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