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コネクテッドカー、幸福の可視化技術、リハビリテーションAI。 「脱製造業のその先へ」日立が描く社会イノベーションの未来とは

「脱製造業」に舵を切り、デジタルイノベーションを加速するプラットフォーム『Lumada(ルマーダ)』をコアとして、数多くの社会課題への取り組みと先進的なソリューションを提案している日立製作所。

そんな日立製作所のビジョンと取り組みを紹介する『Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE』が2020年11月4日から6日にオンラインで開催。社会の変化をリードし、幅広い領域で展開されるソリューション、サービス、テクノロジーが一堂に会し、多彩なプログラムが紹介されました。

今回は、プログラムの中からいくつかのセッションをピックアップしてご紹介します。
2021年3月18日までイベントのアーカイブが公開されています。

基調講演『なぜ、いま社会イノベーションなのか Society 5.0 for SDGs』

株式会社 日立製作所 執行役社長兼CEO 東原 敏昭 氏

基調講演では『Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO』のテーマである、社会イノベーションのビジョンが東原氏によって示されました。

COVID-19の流行や、2015年に採択された温室効果ガス削減の国際的な枠組み「パリ協定」が2020年に実施段階に入った影響などで、人々の生活様式や産業構造は大きく変貌をとげています。

制約ある世界環境と限りある資源の中で、豊かさを求める人間が持続可能な社会を作るための解決策のひとつが社会イノベーションだと東原氏は指摘します。社会イノベーションとは道具の発明・進化に留まらず、道具と道具、システムとシステムがつながって新たな価値を生み出すこと。そして、このつながりを無限に広げていくことこそが『Society 5.0 for SDGs』が目指す方向であると解説しました。

創業から110年を迎えた日立製作所は、AIやビッグデータ解析などの「IT(Information Technology)」、社会インフラを運用・制御する「OT(Operational Technology)」、幅広い「プロダクト」を一社で保有している特徴があります。これらと社会イノベーションの要となる「Lumada」を活用して社会課題を解決していくことが紹介され、『Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO』は幕を開けました。

QoLの最大化に欠かせないIoVプラットフォーム技術 ~人々の生活を支えるコネクテッドカーソリューション~

株式会社 日立製作所 デジタルフロント事業部コネクテッドカー本部 長船 辰昭 氏

本セッションでは、コネクテッドカー(インターネットへの常時接続機能を具備した自動車)が紹介されました。デジタルスマートシティは、「PLAY」「VISIT」「WORK」「LIVE」といった活動を活性化させたり、その質を向上させたりして生活者の『QoL(Quality of Life:生活の質)』を最大化することを目的としています。このために欠かせないのが「MOVE(MOBILITY:モビリティ)」です。

モビリティが解決するのは、「人々の移動」「モノの流通」に関連した社会課題。この問題を解決する仕組みとして、コネクテッドカーによるデジタルプラットフォームがとても有効であると長船氏は話します。

「人々の移動」に関係する社会課題のひとつが交通事故です。交通事故の主な3つの原因は、違反や技術不足、不注意等による「人(94.6%)」「道路環境(5.2%)」「クルマ(0.2%)」であり、人的エラーによるものがほとんどであると長船氏は指摘。さらに、人的エラーの60%近くが認知ミスであると言います。このような事故を防ぐには、近年普及が進んでいる先進運転支援システムや自動運転システムが有効であるということでした。

もうひとつ解決できることが「モノの流通」にまつわる課題です。現在、物流業界のドライバー不足が社会問題化しており、業界の過半数の企業がドライバー不足を認識している状況だと言います。そして、新型コロナウイルス感染症の影響で「ひきこもり消費」が増えて宅配便取扱数が増加していることから、さらに問題が深刻化していると長船氏は強調しました。

これらの社会課題に対して、日立製作所では3つのアプローチをとっています。

1つ目が、安全を支えるプロダクトである「先進運転支援システム」の開発です。この技術は、AIやセンサーフュージョンを活用した認識技術、車両から見えない領域を先読みする詳細地図データ技術から構成されます。認知ミスによる事故を防ぎ、誰もが安全に移動するためには特に地図データが重要であると長船氏は話します。この技術の進む先に安全運転支援・自動運転システムがあります。

2つ目にドライバー不足の解消のための安全かつ効率的な移動管理を実施。具体的に配送の熟練者が、利用した配送経路や駐車位置といったデータを抽出してLumadaによってデジタル化、そのデータを利用して現場に指示します。この技術を利用することで、特殊な運転スキルや配送スキルを持たないドライバーでも熟練者と同等の仕事ができるようになるため、ドライバー不足の解消が期待できるとのことです。

そして3つ目に、IoV(Internet of Vehicles)プラットフォームの提供です。人やモノを安全で効率的に移動させるためにはデータが必要となります。データを蓄積し、新たなソリューションを提供するために必要となるのがIoVプラットフォームです。ここに車両情報、ドライバー情報、周辺環境情報を蓄積しています。

続いて、長船氏から、上記3つのアプローチを支えている日立の技術が紹介されました。

そのひとつが先程も触れられた「詳細地図ソリューション」です。これは先進運転支援システムや自動運転システムに必要なレーンレベルの地図データ(DGMデータ)を既存のナビゲーション用地図(SDマップデータ)から生成して、低コストかつ広範囲な地図を提供するというもの。今後、欠かせない技術です。

そして「自動運転の高度化」です。自動運転車両をコントロールする管制システムを使って業務を自動化することで、ドライバー不足や事故による稼働率低下を解決しようとしています。熟練配送者の車両の挙動等から経験値を抽出しデータベースに蓄積、自動運転車に配信することで経験に基づく走行を再現し、さきほどの「詳細地図」と組み合わせることで、高度な自動運転を実現しようとしています。

この際、必要になるのが道路の破損状況などの情報です。日立では、予測センサー等を活用することでこの問題を解決。管制システムからスムーズなルート切り替えなどを行い、効率化と事故防止に努めています。

本セッションの動画では、自動配送システムが稼働している様子を見ることができます。実験施設内で撮影されたものと思われますが、想像以上に速いスピードで動く自動運転車を見ると未来が近いことを実感させられます。

移動データをノウハウに置き換え、価値化するTEIM(Transportation Experience Information on Maps)や安全・安心なモビリティを支えるセキュリティ対策といった技術、ソリューションをコネクテッドカーで見ることができるセッションでした。

「幸せ」を可視化する技術とニューノーマルの関係とは? ~これからの経営とハピネス(幸せ)~

予防医学研究者、博士(医学) 石川 善樹 氏
株式会社 日立製作所 フェロー / 株式会社 ハピネスプラネット 代表取締役CEO 矢野 和男 氏

ビデオコメント:カリフォルニア大学リバーサイド校教授(心理学) ソニア・リュボミアスキー 氏
モデレータ:経済キャスター 小谷 真生子 氏

COVID-19の影響により、ニューノーマルといわれる新しい価値観、新しい社会像が世界中で模索されています。そんな今だからこそ、注目したい人類の本質であり普遍的な価値である「ハピネス(幸せ)」をテーマにスペシャルトークが繰り広げられました。

モデレータは、経済キャスターの小谷氏が務めます。そして、ハピネスについて研究している予防医学研究者 石川氏と、株式会社日立製作所/株式会社 ハピネスプラネット 矢野氏が紹介される形でトークがスタート。まずおふたり人がそれぞれの専門分野から、社会や生活様式の変化とCOVID-19の後にあるべきSDGsやSocity5.0で目指す社会像についてプレゼンテーションをしました。

石川氏は『いまなぜ、主観的Well-Beingなのか』と題して、22世紀に向けた経営指標や社会課題が「主観的な感覚にどう挑むか?」といった点にあると話しました。Well-Beingの意味が今回のテーマであるハピネスに該当しています。

Well-Beingには、GDPなどで表される客観指標と生活満足度などの主観指標があります。日本では、1958年~1987年の30年間、客観的な数値は右肩上がりで上昇していますが、主観指標は全く変化していないと石川氏は指摘。さらに今、戦後初めてダウントレンドにあると石川氏は語ります。この流れが社会/政治の混乱・崩壊に繋がる先行指標になっていることが多く、現在は危険な状況であるそうです。

危機を脱するには、株主資本主義から公益(幸福)資本主義へと変化し、「Generation Z」と呼ばれる次世代とともに学び、未来を作っていくことが大切であると石川氏は強調します。

続いて、矢野氏は、COVID-19によって変化に向き合うことが常態となった今、常態予測不能な変化に立ち向かうためにどうすべきかプレゼンテーションをしました。矢野氏は2006年3月16日から、リストバンド型センサーによって身体の動きを記録し、環境変化に応じた幸せ(ハピネス)の計測に取り組まれています。画面には2009年から10年間の動きが示されました。

こうした地道な1,000万日(のべ日数)の行動計測によって、生産的で幸せな集団には「信頼できる関係がある」ことがわかったそうです。そして、10組織、468人、5,000人日、50億点の計測データから幸せな集団には身体運動に特徴があることが明らかにされています。それによると、生産的で幸せな人々は周囲を活性化し、元気にする行動をとっており、そういった職場は結果的に効率性や生産性が向上していたとのことです。

幸せな社会を作る鍵になるのが幸せ(ハピネス)の計測と可視化であり、科学的にエビデンスベースで進めていくことが必要であると矢野氏は話します。

ここで、カリフォルニア大学リバーサイド校教授 リュボミアスキー 氏から、Q&Aの形でビデオコメントが寄せられました。興味深かったのは、仕事に意義を見出し、打ち込むこともハピネスであると回答した点です。リュボミアスキー 氏は、生活様式が大きく変わる現在のような状況下において、デジタルインタラクションと対面インタラクションの違いに注目して研究を進めており、幸福度は、携帯電話の使用を避けると増す傾向があると語りました。

また、小谷氏から「経営者は何から取り組んでいけばいいのか?」という問いが出されましたが、これに矢野氏はいよいよ人的資本を中心に据えていく時代になってきたと話し、ハピネスを定量的に測ることが進歩を促すことを強調されました。

石川氏は変化に慣れることと、これまでと違う若い人や女性を受け入れられるかがポイントになると指摘。Generation Z世代は、デジタルネイティブであると同時にSDGsネイティブでもあり、経営側は新しい発想を取り込んでいかなければ生き残っていけないとのことです。

矢野氏はCOVID-19パンデミック下で、フィジカルに人に会うことの大切さ、ありがたさを再認識した人が多いのではないかと話し、石川氏も、人と会って交流したり、移動したりすることが変革をしていくために重要であると語りました。

最後に矢野氏は、人を中心にすることは今までできていなかったが、これからは人間中心の時代となり、人間の中心にはハピネスがあるという共通認識を皆が持てるようにしていきたいと言います。これに小谷氏は、Society 5.0やSDGsが実現することで、ハピネスが概念ではなく見える形になり、日本人が幸せを感じられる時代が到来してほしいと語り、余韻が残るスペシャルトークになりました。

若手でもAIを活用してベテランレベルの治療計画が立案可能に ~10年分の電子カルテで医師を支援するリハビリテーションAI~

株式会社 日立ハイテクソリューションズ ICT事業統括本部ITプラットフォーム本部ネットワークソリューション部 小瀧 美穂 氏

本セッションでは、医療現場の回復期リハビリテーション病棟で活用されているリハビリテーションAI『awina(アウィーナ)』が紹介されました。

なぜ、医療現場の回復期リハビリテーションの社会課題に日立ハイテクソリューションズが取り組んだのか? その経緯を小瀧氏が説明されました。

回復期リハビリテーション病棟(病院)とは、脳梗塞、心筋梗塞、脊髄損傷などで身体機能が低下した患者が主疾患の治療を終えた後に、以前と同じか、少しでも質の高い生活・活動を行えるよう訓練を行う場です。厚生労働省は、回復期リハビリテーション病棟の届出病床数の増やすことに取り組んでおり、2000(平成12)年から2016(平成28)年ベッド数は右肩上がりで増加しています。

そのため、理学療法士の数が最近15年間で急増しましたが、35歳以下が全体の60%で、適正な診療を行えるベテランが少ないといわれています。小瀧氏によると、この傾向は回復期リハビリテーション病棟に勤務する医師、看護師、各種セラピストについても同じだそうです。

さらに、厚生労働省はリハビリテーションの効率度合いを計る「実績指数」から診療報酬を決める制度をスタートさせました。病院が報酬を増やすためには短期間で質の高いリハビリテーションを効率よく行い、患者を回復させる必要があります。

つまり、回復期リハビリテーション病棟では、経験年数の浅い医師、セラピストの割合が増加し、ベテランレベルの診療が難しくなっているという課題と、診療報酬の改定によって、健全な病院経営のためにリハビリの効率化を求められる課題の2つの課題が発生していたことになります。日立ハイテクソリューションズはこの2つの社会課題を解くため、リハビリテーションAI『awina』の開発に着手。2018年10月から提供を開始しました。

『awina』は医師、セラピストが治療方針を決める医療カンファレンスの場で利用されるAIです。小瀧氏は、機能のポイントを3つ示しました。

①回復に向けたリハビリテーションプランの提示機能
②予測退院日、入院日数の提示機能
③退院時のFIM(日常生活動作の自立度を示す数値)予測機能

これらの機能を使って、経験が少ない医療スタッフであっても、ベテランのようにリハビリテーション計画が立案できるようサポートするのが『awina』です。

『awina』のAIエンジンは日立ハイテクソリューションズのデータセンターにあります。利用する病院は連携する電子カルテから、疾患、障害名等を『awina』に送信すると、10数秒で計算が完了し、推奨プラン等のアウトプットを受けとることができます。『awina』と病院は閉域網で繋がれていていると小瀧氏は説明します。

ここで気になるのは、『awina』がどう開発され、高度な医療情報を学習したのか? ということです。小瀧氏によると、研究開発機関は約1年5ヶ月だったそうです。学習データは、高度なリハビリを提供し、高い在宅復帰率で「奇跡の病院」といわれている「初台リハビリテーション病院」の協力を得て、2006年から2017年の10年分、約18,000件の患者のデータを使用したと言います。

こうして開発された『awina』ですが、開発初期は実際のデータと『awina』の判断の相関係数が0.3程度と、いわば“使えない”状態だったと小瀧氏は語ります。ここに医療の現場で長年にわたって蓄積されてきた医師たちの知識、さまざまなノウハウをAIに反映させ、改良と試行錯誤を繰り返すことで相関係数も0.8となり、実用レベルに達したのだそうです。小瀧氏は、AIの精度向上には医師やスタッフの蓄積してきたノウハウが不可欠と再認識したと述懐されていました。

今後は、『awina』より、使用している電子カルテに関係なくどの病院でも利用でき、治療経験に関係なく、より回復が見込める治療計画が立てられるようになる使いやすいシステムへと進化させたいと小瀧氏は抱負を述べました。

『awina』は医療スタッフの診断サポートだけでなく、患者の治療に対する意欲の維持や家族へ安心感を与える効果が期待されています。これから高齢者が社会に占める割合が増えることから、より注目を集める存在になっていきそうです。

新型コロナ対策を視野に入れ安全・安心を守る技術 ~AIを活用した監視業務の効率化~

株式会社 日立製作所 公共システム事業部 パブリックセーフティ推進本部 第2部 主任技師 三浦 太 氏
株式会社 日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センター リーダ主任研究員 沖田 英樹 氏

本セッションでは、AI画像解析技術を活用したさまざまな監視業務を効率化する技術などが紹介されました。

今、私たちは将来予測が困難な「VUCA(ブーカ)」時代を生きていると三浦氏は話します。VUCAとは「V(Volatility:変動性)」「U(Uncertainty:不確実性)」「C(Complexity:複雑性)」「A(Ambiguity:曖昧性)」の頭文字をつなげた現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現する造語です。

VUCA時代では、リスクが多様化しており、パブリックスペースにおけるリスク(不審人物、不審物、不審行動)にもCOVID-19の感染リスクが加わるなど複雑性が増加しています。そのためパブリックセーフティを確保するためには、AI画像解析技術を用いたセキュリティ対策の重要性が増していくと三浦氏は言います。

これまでは監視カメラを設置しても監視員の「目」で確認していたため、物理的で限定的だったからです。これからは大量の監視カメラ情報をAI画像解析技術で効率管理して運用することが必要な時代になると三浦氏は強調します。

これに対応する取り組みが日立製作所のAI画像解析技術を用いた『高速人物発見・追跡ソリューション』です。特徴は、数万人規模の映像データから約1秒でターゲットを見つけられる高速検索機能を有しており、1,000台以上の監視カメラでターゲットをリアルタイムで追跡可能であることです。これにより、リスクが発生した場合、影響を最小限に押さえることができます。

また、人間が素早く対応できるようにユーザーフレンドリーな操作性を兼ね備えています。そのため、観察から状況認識、意思決定から行動までの流れを効率化、省人化することができ、パブリックスペースの安全監視業務の生産性を向上させると三浦氏は話しました。

続いて、沖田氏が空港の監視業務におけるソリューションの活用事例を紹介しました。空港では、放置荷物やセキュリティエリアへの侵入が発生すると、空港ターミナルを封鎖したり、フライト運行を中断したりする必要があります。さらに、セキュリティインシデントへの対応として荷物検査や旅客の避難といった対応も発生します。

AI画像解析システムは、不審な荷物が置き去られるのを発見するとセキュリティ担当者にアラームを通知、すぐに担当者は画面上で荷物を置き去った人物を確認できます。担当者が追跡を指示するとシステムは該当人物を自動的に追跡し、居場所などの情報を付近にいる警備員に提供して、不審人物を迅速に確保できます。

不審人物を発見した際も同様です。AI画像解析システムを活用することで、速やかにインシデントに対応してターミナル封鎖を解消することができると沖田氏は説明します。

AI画像解析技術はCOVID-19リスクを可視化することにも活用できます。COVID-19対策に監視カメラ画像を活用する観点は大きく2つあり、まず感染の拡大を止めること、そして経済活動の維持にあると沖田氏は言います。監視カメラによるマスク着用検知、ソーシャルディスタンスの分析をはじめ、サーマルカメラと人物追跡技術を組み合わせて二次感染の防止にも役立てることができると沖田氏は紹介しました。

また、警察の犯罪捜査業務を効率化することにもAI画像解析技術は利活用できます。現在、COVID-19の影響で人が出歩かないため、犯罪等の目撃情報が減ることが懸念されていたり、非接触捜査のニーズが高まっていたりするため、監視カメラ画像を用いて、感染リスクを抑えながら犯罪捜査を効率よく支援することも考えられます。

このようにAI画像解析技術を活用することで、多様化するセキュリティリスク、インシデントへより高度な対応が可能になることが示されたセッションとなりました。この技術は人の往来解析など、マーケティング分野への活用も可能であり、今後が期待されています。

2017年、AIシミュレーションが「密」の脆弱性を指摘していた ~政策提言AIで予測するポストコロナの未来~

京都大学 こころの未来研究センター 教授 広井 良典 氏
株式会社 日立コンサルティング スマート社会基盤コンサルティング第2本部 シニアマネージャー 大谷 和也 氏
株式会社 日立コンサルティング スマート社会基盤コンサルティング第2本部 コンサルタント 青木 健悟 氏

本セッションでは、政策提言AIを活用したEBPM(Evidence-based Policy Making:エビデンスに基づく政策立案)とポストコロナ社会の未来シミュレーションが紹介されました。

はじめに、今回実施された「ポストコロナ共同研究」の背景を青木氏が紹介しました。2017年9月、京都大学と日立製作所は持続可能な未来に向けた政策を提言しています。そこから3年が経ち、COVID-19による社会への影響・変化をAIでシミュレーションしたポストコロナ社会の将来予測、複数の未来シナリオを分析し、望ましい未来の実現に向けた提言の作成が試みられています。

この検討に用いられた『政策提言AI』とは、日立製作所と京都大学が設立した日立京大ラボで開発した、シミュレーションならびに要因を解析するツールです。未来をシミュレーションすることで目標達成に向けてとるべき政策・戦略の検討を支援するAIであると青木氏は説明します。

「ポストコロナ共同研究」で重要になるのがポストコロナモデルです。青木氏によると、まずコロナ禍がなかった場合のモデルを構築して、そこにコロナ禍がもたらした社会変化をコロナ禍指標として加えてポストコロナモデルを構築したと言います。

続いて、京都大学教授 広井氏が『政策提言AI』でポストコロナの未来像を導出した過程を示しました。さきほどお伝えした2017年のシミュレーションは「2050年の日本」を視野に入れ、①人口、②財政・社会保障、③地域、④環境・資源という4つの持続可能性に注目して、日本でとられるべき政策を提言する内容で「地方分散が望ましい」という結論でした。

コロナ禍によって、過度な都市集中社会や「密」の持つ脆弱性や課題が明らかになり、2017年の提言はこれを予言していたともいえる内容だったのでとても驚いたと広井氏は語ります。

そこで今回の「ポストコロナ共同研究」では、COVID-19の影響を踏まえた上で 現在と未来の日本にとって重要と思われる350の社会的要因を抽出した因果連関モデルを作成しています。そして、2万通りのシミュレーションを行い、分岐をグループ化したと広井氏は説明します。『政策提言AI』のシミュレーションでは2024年に最初の分岐があり、2050年には大きく5つのグループがあることが示されたといいます。広井氏は、この結果を読み解いて評価し、さらなるAIの分析をして提言にまとめていくと話しました。

このポストコロナ社会をテーマとするシミュレーションについて、大谷氏は、今後分岐点で取り組むべき課題、分岐要因を明らかにして、具体的な政策や最終的な成果を2020年度内に発表予定であると言います。このようなデータを活用したEBPMに『政策提言AI』活用する動きはすでにあり、地方自治体での導入事例もあるそうです。地方を活性化する、地域のEBPMを実現する基盤となる地域データバンクを構築し、望ましいポストコロナ社会の実現を支援したいと大谷氏は抱負を述べました。

編集後記

日立製作所が取り組む社会課題の幅広さと、データ活用プラットフォーム『Lumada(ルマーダ)』の多彩さに圧倒されるイベントでした。ポストコロナ時代を生きていく私たちにとって、AIやデータの活用はもはや規定事項といえますが、日立はその何歩も先を進んでいることがわかりました。

ほぼすべての内容が2021年3月18日までアーカイブ公開されますので、興味を持たれた方は今から追体験してみてはいかがでしょうか?

取材/文:神田 富士晴


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