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「コラボレーションとカルチャーが紡ぐ、プラットフォームエンジニアリングとCCoEの未来」Qiita Conference 2023 Autumnイベントレポート

2023年10月25日〜27日の3日にわたってオンライン開催された、日本最大級のエンジニアコミュニティ「Qiita」が開催するオンライン技術カンファレンス「Qiita Conference 2023 Autumn」。ゲストスピーカーによる基調講演や参加各社のスポンサーセッションを通じて技術的な挑戦や蓄積された知見等が共有され、登録参加者数も2,800名を超えるという盛況ぶりでした。

*¹「最大級」は、エンジニアが集うオンラインコミュニティを市場として、IT人材白書(2020年版)と当社登録会員数・UU数の比較をもとに表現しています

本レポートでは、株式会社博報堂テクノロジーズでマネジメントセンター インフラ開発一部 チームリーダーを務める鈴木 幹昌氏によるセッション「コラボレーションとカルチャーが紡ぐ、プラットフォームエンジニアリングとCCoEの未来」の様子をお伝えします。

* 本レポートでは、当日のセッショントーク内容の中からポイントとなる部分等を抽出して再編集しています

プロフィール

鈴木 幹昌(すずき よしまさ)
株式会社博報堂テクノロジーズ
マネジメントセンター インフラ開発一部 チームリーダー
楽天グループ株式会社でネットワークエンジニア、大規模プライベートクラウドの立ち上げ及びサービスプロデューサーを経験。その後、3大Public Cloudの組織管理者としてCCoEやTAMの活動を行い、社内外の様々な部署とコラボレーションを推進。2023年、16年勤めた前職を退職し、株式会社博報堂テクノロジーズに入社。

マーケティングとテクノロジーの掛け合わせに強みをもつ博報堂テクノロジーズ

鈴木 : まずは自己紹介をさせてください。私は16年間ずっと楽天グループにインフラエンジニアとして勤め、特に直近10年はパブリッククラウド関連の仕事をひたすらやってきました。そのような中、今年に入って16年間勤めた会社を辞め、7月に博報堂テクノロジーズに転職しました。
好きなこととしてはひたすらWikipediaを読むことで、ひたすら情報を知るのが好きな、超インプット型の人間です。

博報堂テクノロジーズは、まだ設立されてから1年ちょっとしか経っていない(2022年4月1日設立)、博報堂DYグループのIT戦略会社です。グループ内外の会社から各種開発系の人材が集結しており、それに加えて私のように中途採用でジョインする人間もどんどん増えている、成長段階の組織です。

鈴木 : ミッションに「マーケティング×テクノロジーによって社会と生活者に新しい価値・体験を提供する」を、ビジョンに「世界一級のマーケティング×テクノロジー会社になる」を、それぞれ掲げていまして、マーケティングとテクノロジーの掛け合わせができる、非常に貴重で面白いポジションの会社かなと思っております。

そのような環境に身をおきながら私は、プラットフォームエンジニアリングとCCoE(Cloud Center of Excellence)の両輪を回すために、戦略として「カルチャー醸成」を、戦術として「コラボレーションハブ」を、それぞれ編み出しました。
今日は、カルチャーとコラボレーションという2つの言葉を用いて、すべてを解釈/解決してみよう!という思考実験を試みたいと思います

カルチャーとコラボレーションをRPGで考えてみる

鈴木 : まずはこのカルチャーとコラボレーションという言葉の定義ですが、カルチャーを辞書で引くと「文化、教養、精神風土」といった言葉が出てきます。しかし私は、「相互理解、共通認識」といった言葉の方がしっくりくるかなと思っています。またカルチャー醸成という言葉についても、「解像度を上げる」という言葉で言い表すことができると思っています

またコラボレーションについては、2つ以上の人や組織が交わって目的達成への共同作業をすることではありますが、ここで私が強調したいのは、足し算ではなく「掛け算」での価値向上というものをめざしたいと思っているということです

そして、この2つのキーワードの関係をうまく図にまとめようとしましたが、うまくまとまらなかったので、生成系AIの力を借りることにしました。それが以下になります。

鈴木 : ここに挙げられた3つのポイントが、より良いコラボレーションを実現するための必要要素であって、なおかつ相互に関係する形なのかなという風にまとまりました。

本セッションで私から伝えたい価値としては非常にシンプルです。
人生の大半を占めることになるであろう仕事は、個人以上にチームや組織で進めていくものなので、どうせやるならば楽しくやろう! 仲良くやろう! というのが根底のテーマになります

鈴木 : ここで1つ、転職における実例を考えてみましょう。「新しい環境で、新しいチャレンジをしたい」という転職理由を考えたときに、これをカルチャーとコラボレーションという言葉で表してみると、私の場合は「新しい環境」は「異なるカルチャー」に、「新しいチャレンジ」は「新たな仲間とコラボレーション」に、それぞれ解釈できるのではないかと考えました。

そして、カルチャーとコラボレーションをより分かりやすくするためにゲームのRPGの要素を足してみました。

鈴木 : タイトルに「転職者が『強くてニューゲーム』状態になるためには」とありますが、前職のスキルやコネクションなどが活かせることから、「転職すれば何もしなくても強くてニューゲームなのではないか」と思われがちです。
しかし実際にはそうではないので、その違いは何なのだろうということを、ゲームRPGの要素を入れて解釈したものになります。

上図左側の「異なるカルチャー」とは、新しい組織での文化や精神風土をどれだけ理解できるかということです。RPGで例えると、様々な攻略法が最初はわからないために難しいのと同様に、最初から強くてニューゲームになれないのかなと思っています。
ただし、それを克服するアクションは情報収集です。ゲームでは攻略本や攻略サイトを見るかと思いますが、転職の場合は、採用HP等に掲載されているカルチャー系のコンテンツをチェックすることで、会社の文化や精神風土というものをある程度事前に理解できるのではないかと思っています。

右側の「新たな仲間とコラボレーション」については、RPGでいうところのパーティー結成なのかなと思いました。自分はどのようなロールで、スキルは何を持っているのかと自分の役割を定義し、ゲームを進めていく上で足りない部分はパーティーを組んで補うということです。
そこで必要なアクションとしては、とにかく声かけをして仲間集めをするということです。ここはゲームでも一緒ですよね。

そう考えていくと、異なるカルチャーを知ることは「戦術」を立てることにつながり、新たな仲間とのコラボレーションは「リーダーシップ」を発揮することなのではないかと考えました。

鈴木 : その上で、RPG的リーダーシップについて考えてみました。ここに挙げた5つのポイントは、リーダーやマネージャーといった「The 中間管理職!」が果たすべきと感じたリーダーシップ要素です。

この例でお伝えすると、依頼された内容を分析して戦術を決め(①)、その戦術に合わせてパーティーを結成し(②)、各メンバーの体力/精神力等を管理するために適切に休暇を取らせるなどして(③)、なおかつ報酬計画やキャリアデザインを一緒に考えたり、時にはロールチェンジを促したりするなどして(④)、最終的に新たな冒険のために技術的フロンティアを開拓し、組織をどんどんと大きくしていってそれぞれの役割を変えていく(⑤)ことが、リーダーとして必要だと考えることができそうです。

チーム内とチーム外、それぞれのコラボレーションを活性化するための戦術

鈴木 : ここから私の担当している仕事の話に少しずつ入っていきます。最初にお伝えしたとおり、私は現在、プラットフォームエンジニアリングとSREを兼ね備えたような組織とCCoEという2つの異なるチームをリードしています。

前者は向かい合う相手がAaaSといわれるサービスの開発者で、その方々に対してインフラの対応や技術的支援を行うチームです。ですから目標は、AaaS開発者の方々からの信頼をどれだけ獲得できるかというところにあり、そのための重点ポイントとして「チーム内でのコラボレーション」を据えています。

後者は全社的なパブリッククラウド利活用をめざしているので、目標はコラボレーションハブになることで、社内の各管理者やグループ会社、ボードメンバーなどといった「チーム外とのコラボレーション」を重要ポイントと据えています。

鈴木 : チーム内でのコラボレーション活性化の戦術例として、チーム内の各メンバー同士で信頼関係を高めるためのカルチャーを作り上げていくということを現在行っているところです

具体的には、まず「コミュニケーションの再設計」として、例えばSlackを使ってチャンネルを整理し、仕事の話以外に雑談とかもできるようにしたり、明文化されていない内容をしっかりとドキュメント化したりして取り組んでいます。
また「KPIマネジメント」については、チームのリソース状況やパフォーマンスを把握することによって、結果的にお互いの成長/助け合いにつながるのではないかなと思っています。
さらに「チームビルディング」も、例えばクラウドサービスプロバイダーに協力してもらってオフィスを訪問して勉強会を開催するなどして、チームがオフラインで接点を持てるような場として活用させていただいています。

鈴木 : 我々インフラチームとしては、一番上にある「インフラ運用」が一番の基礎にあると思っていまして、それは守りにあたります。一方で、SRE/プラットフォームエンジニアリングを進めていったり、TAM(Technical Account Manager)と呼ばれるような付加価値向上をめざしたプロアクティブな提案を開発者の方々に届けられるようになったりすると、より攻めのインフラとしてコラボレーションの領域が拡大するのかなと考えています。

鈴木 : 次にチーム外とのコラボレーション活性化の戦術例はこちらになります。「ゲートキーパーにならない」ということがCCoEの鉄則になるのですが、我々は自走を促すための伴走者であってルールや制限を誰かに強いる立場ではありません。ここが、自分たちが何者かを考える際の1つの判断軸になっています。

また「常に仲間集め」ということで、CCoEとしてはコラボレーション領域を広げて多くの人とコラボレーションするために、常にいい人を探しています。例えば「あそこにいい人いるよね」という形で口コミで仲間の輪を広げることも大事だと捉えています。

さらに仲間になってくれた人たちに対しては「大義名分を作る」ことも大事で、正しいことを堂々とやって、なおかつ「この人はこういうふうに貢献してくれている仲間ですよ」と公表することによって、相手方の上司や組織に対しても理解を促していくような働きかけが、結果としてコラボレーションサイクルを引き上げていくと考えています。

鈴木 : なお、CCoEについては「クラウドジャーニー」という戦略の道標を立てていまして、今自分たちが何ができている/いないのかということを見つけやすくし、これに基づいて実行計画を立てていくことに重点を置いています。
ここで1つ私が大事だなと思っていることは、クラウドサービスプロバイダーと我々との「カルチャーの調和」です。Google Cloud、AWS、AzureといったCSPは、各社のカルチャーを基にクラウドを作り上げています。
そこと自社のカルチャーをすり合わせる必要があると思っていまして、そのためにも、設計思想を読み取ってそれに合うようなスキルセットを用意したり組織の形を変えてみたりといった発想が必要だと考えています。

身の周りの「余白作り」を大切にしよう

鈴木 : ここからは「皆さんもコラボレーションを始めてみませんか」という、お誘いの内容になります。私が思うに、コラボレーターになるには年齢は関係ありません。誰でも始めることができると思っています

若い人は積極性でカバーできますし、私のような年齢なら現場と上位マネジメント層との中間ということで、ちょうどよい位置なのかなと思います。また、よりシニアな方にとっては、経験値からくる安定性をもって自然とコラボレーションをしているようなケースも多く、そういった意味でも年齢に関係なくコラボレーションというのを始められるのかなと思っています。

始め方としては、やはりファーストペンギンが大事かなと思います。まずは自分が飛び込んでみることで、その波紋を身の周りへと広げていって、そうやって徐々にコラボレーションの場が広がっていくのかなと思います。
その際のポイントとしては、私は機会損失を未然に防止する意味合いで、「余白作り」が大事かなと思っています

鈴木 : 例えば定例ミーティングが沢山入って1日中ミーティングでスケジュールが埋まっているような状態ですと、コラボレーション設定の機会を失っているのではないかと思います。
ですから、定例ミーティングをなるべく削減し、コラボレーションできるスペースを用意することが大事だと思います。

また、ミーティング内での目的を明確にすることで、雑談ができるスペースを作ることができるかなと考えています。博報堂グループとしても、この雑談は大事にしていますね。

あと、自分自身に余裕がないと他の人を助けられないと思っていますし、技術ブログというものも、非常に重要なコラボレーションツールだと私個人としては思っています。「会社としてこういった技術力を外に出すというカルチャーを作りたいんだな」という意図が分かりますし、私の場合は社内外への挨拶状としても活用しました。
社外に対しては、自分が新しい会社で何をしているのかというのをお伝えするために書きましたし、社内に対しては、どんな考え/どんな思いで何をやりたいのかというのを伝えたいと考えました。

鈴木 : 最初の方に「カルチャー醸成は解像度を上げること」とお伝えしましたが、結局解像度を上げるメリットは何なのかと言いますと、現状把握と将来の方向性の両方が分かるので、結果的に自分たちがどうすればいいのかという道筋もより明らかになっていくことだと思います

インフラチームでは、現在から未来を考えるフォアキャスティングの「As-Is」と、未来から現在を考えるバックキャスティングの「To-Be」の両方を行き来しながら行動するようにしています。そうすることで、毎回どうなりたいのか/どうすればいいのかというのがより鮮明に見えてくるので、その道筋に沿って自分たちで戦略を考えて進めていくというようにしています。

何か行動を起こすとそれがコラボレーションの芽になりますし、やがて身近なところで波紋が広がったと思えばそれは組織内外に広がったりと大きくなっていき、やがてカルチャーになります。そしてカルチャーの理解の解像度を高めることによって、道筋がより鮮明に見えてきて、未来につながるのではないかなと思っております。

鈴木 : 最後に我々博報堂テクノロジーズの技術ブログでは、機械学習や各種クラウドのトピックなど、新しい技術記事をどんどん公開しています。皆さまとのコラボレーションハブになっていければなと思っておりますので、ぜひフォローしてください。ご視聴いただきありがとうございました。

文:長岡武司

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