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フリーランスのお金の悩みをなくしたい。「フリーナンス」に込める想いと挑戦

自身のスキルや経験知が強みとなるエンジニア。「より多様なプロジェクトに関わってみたい」、「収入を増やしたい」、「働き方を自分で管理したい」といった、さまざまな理由でフリーランスを選択するエンジニアも増えています。

一方で、フリーランスに転身した場合、これまで自分でやる必要のなかった業務が増えるのも事実。すでにフリーランスのエンジニアとして活動している方にとっては、「こんなに雑務があるとは…」といった思いもあるのではないでしょうか。またクライアントからの入金を管理したり、瑕疵責任や情報漏えいが発生したりした際のリスクヘッジといった「やっかいごと」が壁となって、フリーランスの選択に二の足を踏んでいる方もいるのはないでしょうか。

こうしたフリーランスの悩みを解決するためのサービスが、GMOクリエイターズネットワーク株式会社より2018年10月16日に発表されました。

サービス名は『フリーナンス』。

もともと編集プロダクションやライター・カメラマン、Webクリエイターの登録サイトとして事業を展開していたGMOクリエイターズネットワークがなぜ、『フリーナンス』をスタートさせたのか。そして、『フリーナンス』は今後、どのようなサービスへと発展していくのでしょうか?

『フリーナンス』について、GMOクリエイターズネットワーク株式会社の次松武大さん(取締役副社長)にお話を伺いました。次松さんの対談相手を務めるのは、『Qiita』ランキング5位で、フリーランスのiOSエンジニアとして活躍している堤修一さん。

NTTデータからキヤノン、カヤック、サンフランシスコのFyusion社を経て、フリーランスエンジニアとしてのキャリアを歩んでいる堤さんの目に『フリーナンス』はどう映るのでしょうか。

まずは、『フリーナンス』という名前の由来から対談は始まりました。

会社員のときより収入も高くて、日本でも海外でも仕事に困らないのに、社会的信用力がない(堤さん)
身近な体験から生まれた転ばぬ先の杖
「フリーランスを、もっと自由に。」するために
フリーランスをやってみて人生が生きやすくなった(堤さん)

プロフィール

次松武大(つぎまつたけひろ)
20代は映像作家としてベルリン国際映画祭をはじめ、海外の国際映画祭やアートフェスティバルなどに多数参加。2006年、フランスより帰国後に伍福星ネットワーク(現・GMOクリエイターズネットワーク)に入社し、2014年から取締役副社長。過去には田中圭一さんの『ペンと箸~漫画家の好物~』(小学館)や沼津マリーさんのエンジニアインタビュー漫画の担当編集をしていたことも。

 

堤修一(つつみしゅういち)
Qiitaアカウント @shu223
iOSエンジニア。NTTデータからキヤノン、カヤック、Fyusionを経て、フリーランスとして独立。現在は、国内外のiOS案件を手かげている。著書に『iOS×BLE Core Bluetoothプログラミング』、『iOS アプリ開発 達人のレシピ100』等。OSS活動も積極にしており、累計GitHubスター数は20,000以上。

会社員のときより収入も高くて、日本でも海外でも仕事に困らないのに、社会的信用力がない(堤さん)

『フリーナンス』でフリーランスの収入の安定化を手始めに、社会的な信用を得られるようにしていきたいと語る次松さん。

堤:『フリーナンス』、ユニークな名前ですね。

次松:『フリーランス』と『ファイナンス』を合わせました。別の意味としては、自己紹介で「自分、『フリー』なんス」って言ったりしますよね? フリーランスになった誇らしさとか、枠から飛び出たばかりの気恥ずかしさなんかも表現しているんです。

堤:柔らかい響きが面白いなと思いました。『ファイナンス』というワードが出てきましたけど、フリーランス向けファイナンスというのはどういったものなのでしょうか?

次松:『フリーナンス』が提供するサービスは現時点で3つあります。「振込専用口座」、「あんしん補償」、「即日払い」です。シンプルに言うと、日本で初めてのフリーランス向け収納代行サービスと即日払いサービスとなります。

それぞれ具体的に説明しますね。

振込専用口座は、GMOあおぞらネット銀行と連携した収納代行サービスです。口座名義を自由に設定できて、利用料・振込手数料は無料、即日払いに対応しています。口座名義を自由に設定できるというのは、ペンネームやクリエイター名義で仕事をされている方を想定しています。

FREENANC収納代行のフロー

あんしん補償は、業務遂行中の事故、納品物の瑕疵や情報漏えいなどに補償がつくというものです。会社員であれば、トラブルが起こった場合、通常は企業が対応しますので、個人が負担するケースは稀ですが、フリーランスになるとトラブルは本人が対応する必要があり、それを軽減するのがあんしん補償です。あんしん補償は、無料で利用でき、発注主も保証対象となるサービスです。

▼主な補償内容
主な補償内容

即日払いは、クライアントに代わって『フリーナンス』が即日お支払いするサービスです。案件によっては急に資金が必要になるケースがあると思うんですが、この即日払いを使うことで対応できます。もちろん、クライアントに知られることはありません。

堤:フリーランス界隈でよく耳にするニーズに応えているなと思います。実際、どの層をターゲットにしているんですか?

次松:お金まわりやトラブルなどの心配ごとに時間を取られず、本業に集中したいフリーランスに利用してもらいたいと思っています。経験豊富な方はもちろん、フリーランスになりたての方、これからフリーランスになる方向けでもあります。

堤:なるほど。お話を聞いて「僕にはちょっと当てはまらないかな?」と思いました。すみません(笑)。振込専用口座は口座名義を自由に設定できるといっても僕は本名で活動していますし、即日払いに関しても、僕は貯蓄しているので、今すぐお金に困るということもありませんから。

次松:確かに堤さんのように管理を自分でできる、自身でリスク対策されている方には活用の機会があまりないかもしれませんね。ただフリーランスって、フリーランスというだけで社会的な信用が低かったりしませんか?

堤:「社会的信用力のなさ」はフリーランスの辛いところですね。大企業で働いていたときよりも収入はずっと高いですし、今の方が手に職があって日本でも海外でも仕事に困ることはないにも関わらず、フリーランスというだけで信用度は下がっています。先日引っ越しをしたのですが審査が厳しくて、「俺が家賃払わないと思うの?」って(笑)。

次松:ですよね。なので『フリーナンス』を利用いただくことで、入金回数や入金額をもとに与信スコアがアップする仕組みも用意しています。ゆくゆくは与信スコアを使って銀行で融資を受けたり、住宅ローンを組むことができたりするような取り組みをしていきたいと思っています。フリーランスへ転身する方にとっては、収入の安定化はもちろんですが、社会的な信用も重要ですから。

堤:信用度が担保されるようなサービスなら、使ってみたいと思うフリーランスはたくさんいそうですね。

フリーナンスについてより詳しく知りたい方はこちら

身近な体験から生まれた転ばぬ先の杖

次松さんいわく「フリーランスとの付き合いがあるからこそ生まれたサービス」なのだそう。

堤:ちなみにGMOクリエイターズネットワークは制作が事業の柱ですよね。どうして『フリーナンス』を始めようとお考えに?

次松:当社はエンジニアはもちろん、ライターやカメラマン、デザイナーなどフリーランスの方々と組んで制作を行う事業がメインなんですが、彼らと付き合っていると「支払いを早めることはできますか?」と相談を受けるケースが度々あったんですね。

また、フリーランスエンジニアにお仕事を発注した場合、エンジニアさんからデザイナーの方にお仕事を依頼している場合がありますよね?

堤:はい。よく耳にするケースですね。

次松:例えば、エンジニアがデザイナーに仕事を依頼した際、まだクライアントから入金がされていないにも関わらず、エンジニアの持ち出しでデザイナーにデザイン費を振り込むケースもあるでしょう。そういった状況を目の当たりしていたところから即日払いのアイデアが生まれました

『フリーナンス』を提供するにあたっては、そんな僕たちが見聞きした課題を解決できることがきっかけになっています。また自分たちの体験もちょっと関係していまして…。

堤:そうなんですか?

次松:会社を始めて間もない頃は、あまり資金繰りについて深く考えていなかったんですよ。仕事はあったし、売り上げも順調に増えていたし。ところがある年の月末になって「あれ!? 意外と手元にお金ないじゃん!!」って(笑)

堤:どうされたんですか? 

次松:繰り返しになりますが、当社は外部のクリエイターさんたちとお仕事をする制作会社なので、彼らへの支払いを延ばすわけにはいかない。もちろん、当時まだ数名だったとはいえ、社員の給与を止めるわけにもいかない。結果、社長と役員全員の給与をしばらく止めて、なんとか乗り切りました

堤さんはきちんと貯蓄しているとのことでしたので、少し恥ずかしいのですが(笑)。あんな思いは二度としたくないと胸に秘めていたので、『フリーナンス』を通じて、辛い経験をする方が一人でも減ったらいいなと思っています

堤:実体験から来ているサービスだったんですね。僕は次松さんの今のお話を聞いて『フリーナンス』に親近感がわきました。

次松:ありがとうございます(笑)!

堤:こういった金融サービスって、大企業の横綱相撲がほとんどだと思うんです。でもお話を伺っていくうちに、同じクリエイター発の現場の課題から始まったサービスだと分かって、作り手の温かみが伝わるような手作り感を『フリーナンス』に感じるようになってきました

そういえば先ほどの即日払いも、資料を拝見すると手数料が3%からとなってましたよね。GMOクリエイターズネットワークさんにもリスクがありそうなのに「ずいぶん手数料が低いな」と思ったのですが、こういう数字も他の保険屋業者さんのようにガチガチにリスクと利益を計算したものと違って、フリーランスの人たちに寄り添った数字なんだなと分かってきました。

次松:もちろん、リスク計算はめちゃくちゃしているんですが、リスクを高く見積もりすぎてしまうと、手数料が高くなり、皆さんに使ってもらえないかもしれない。
だから、この事業をきちんと継続できるギリギリのラインで設計しました。

堤:フリーランス界隈に身を置いていると『フリーナンス』を欲している人の顔は浮かびますし、フリーランス向けのこういったサービスって他に思い当たらないですし。次松さんたちの思いが世に伝われば、このサービスを利用して活動しやすくなるフリーランスの方もいるでしょうね。

「フリーランスを、もっと自由に。」するために

FREENANCEbyGMO青

『フリーナンス』のロゴ。サービス名とともに親しみの持てるデザインにしたのだそう。手がけたのは広告・ファッションなど国内外で活躍しているイラストレーターのNoritake氏。

堤:ちなみに、『フリーナンス』の拡大を考えるとフリーランス市場が重要になってくるじゃないですか。今後、フリーランスという働き方はどうなっていくとお考えですか?

次松:メディアの記事などを見ると、フリーランスを生業にしている方って1200万人程度いるらしいんですね。

堤:思っていたよりも多いですね。

次松:兼業の方も含めてという数字ですが、かなり増えている印象があります。アメリカでは、2020年には労働人口の半数がフリーランスになるのではないか?という予測のデータもあるみたいです。

堤:実際、フリーランスになっているエンジニアが増えた肌感はあります。あくまで僕の場合ですが、会社勤めするメリットがあまりないと考えています。カヤック退職後、一度フリーランスになって、その後アメリカの会社(Fyusion, Inc)に就職したのですが、これも就職したかったわけではなく、アメリカで現地に行って一緒に働くにはビザが必要で、ビザを取得するには正社員として雇用されなくてはいけなかったためです。

会社員として働く方が働きやすい職種も多いと思うのですが、エンジニアに関してだけ言えば、フリーランスであることにメリットを見出しやすい職業ではあると思います

次松:堤さんはフリーランスとして独立するときからお仕事があったのですか?

堤:はい。仕事がないと思ったことはないですね。有り難いことに面白い仕事が次々に来ていつも忙しくさせていただいています。エンジニアはブログや勉強会で技術的なことを発信する文化があるのでプレゼンスを向上させやすいし、専門職なので営業しなくても仕事を依頼されやすい印象がありますね。

次松:副業・複業OKの会社も増えていますし、エンジニアはどこでも不足していて、企業がエンジニア採用に力を入れていますよね。専門職であるエンジニアがフリーランスを選択する機会も増えていくはずです。

ですから、これからフリーランスを選択するエンジニアに対して、『フリーナンス』がどう伝わるのかは、すごく大切だと思っています。でも金融系のサービスって理解いただくのが難しいという側面もありますから、分かりやすいメッセージで訴求したいと考えています。

堤:「フリーランスを、もっと自由に。」この理念は素晴らしいです。

次松:自分のスキル・能力で食べていくのがフリーランスという生き方だと私は思っていて。でも、そういった希望を抱いて独立してみたら、資金繰りやトラブル対応などの仕事も増えてきしまう。

堤:『フリーナンス』のサービスを通じて、本来のフリーランス業に集中できるようになれば、安心以上の価値を得られる人もいるでしょうね

フリーランスをやってみて人生が生きやすくなった(堤さん)

「技術力だけでなく、クライアントと良い関係性をつくるための交渉事も重要なスキル」だと語る堤さん。

堤:『フリーナンス』が受け持ってくれるようなお金まわりのトラブルを回避するために、自分で上手くやり方や関わり方を工夫したり、そのための交渉をしたりというのは、実はフリーランスエンジニアとして本質的に重要なスキルと関連しているんじゃないかと思っています。

というのも、僕は今も技術力にはそんなに自信がないんですけど、なぜかフリーランスエンジニアとしては非常に上手くいっていて。単価は平均より高いのに面白い仕事の打診が次々来るし、既存のお客さんからももっと入って欲しいと言われるんですね。

それでよく「自分がフリーランスとして上手くいっているのは何でだろう?」と考えるんですけど、例えばお客さんに対して依頼された通りに仕事をただこなすだけでなくて、「それはこういう理由でやる必要はないと思います」、「それよりこうした方が良くないですか」、「会社の優先度的にはまずはこっちじゃないですか」と、ちゃんと自分の考えを提示したり、交渉したりすることで、結果的に相手にとって実のある良い仕事ができて、信頼につながっている気がしています。

ちゃんとお客さんとコミュニケーションを取って、そういうリスクヘッジを自分の工夫と行動でどうにかするようなスキルとか姿勢ってフリーランスのあらゆる局面で効いてくるんじゃないかとも思います。

でもそれって人によってはハードルが高いのかもしれませんね。何事もやったことがないうちは不安だし、『フリーナンス』を活用して、フリーランスという働き方を試すチャンスが広がるのはいいと思います。

次松:そうですね。仕事の能力には秀でているけど、お金まわりがあまり得意じゃないという理由で、フリーランスへの転身に二の足を踏んでいる方もいらっしゃると思います。『フリーナンス』があることで、より自分の本業に専念できるようになると考えているんです。

堤:僕自身、学生さんや社会人になりたての方から「学生のうちに/20代のうちに身につけておいた方がいいスキルはありますか?」といった質問を受けることがあります。多分「プログラミングはやっておいたほうがいい」とか、「英語は勉強しておいたほうがいい」といった答えを期待した質問だと思うのですが、僕は「自分の技術を元手に仕事を取ってきて稼ぐ感覚」と答えています

自分が身につけた技術で稼げる感覚があれば、会社員だろうがフリーランスだろうが、新しいことに挑戦する恐怖心がなくなります。それって「人生が生きやすくなる」ということなんです。フリーランスをやってみて良かったのは、その感覚を得られたことなんですね。

だからフリーランスになるか迷っているエンジニアは試しにやってみることをお勧めしますが、不安も分かりますし、その不安が解消できるなら、一歩踏み出すきっかけに『フリーナンス』を利用してみてるのは手だと思います

「フリーランスを、もっと自由に。」というのは、僕自身も共感する理念ですし、今後フリーランスがもっと自由になるようなサービスが出てくると面白くなりそうですね。『フリーナンス』のこれからに期待しています!

次松:ありがとうございます。まだこれからのサービスですので、たくさんのフリーランスエンジニアの方に利用いただけるよう育てていきます。またご意見など聞かせてください!

『フリーナンス』について詳しく知りたい方は公式サイトへ

〈ライター:川野優希 撮影:松木雄一 協力:FARO神楽坂

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