スキルを見える化して適正に評価。AI/データ分析人材専門の転職スカウトサービス「SIGNATE Delta」が描く未来

AIの発展に伴い、大量のデータを適切に活用することが求められている昨今、その担い手であるAI/データ分析人材への注目度は日々高まり続けています。

そんな中、AI/データ分析領域で個をエンパワーするプラットフォーム「SIGNATE」を提供する株式会社SIGNATE(以下、SIGNATE社)から、AIエンジニアやデータサイエンティストの実力を適正に評価する転職スカウトサービス「SIGNATE Delta」が2020年11月4日にリリースされました。
本サービスは、AIエンジニアやデータサイエンティストには馴染みのある「SIGNATE」サービス群との連携や、AI/データ分析スキルを持つ人材のみをターゲットとしたサービスならではの機能を持っており、大きな注目を集めています。

具体的にどのような視点でサービス開発を行なったのか。SIGNATE Deltaの立ち上げを担った糸賀拓馬氏にお話を伺いました。

プロフィール

糸賀 拓馬(いとが たくま)
株式会社SIGNATE Business Group ビジネスプロデューサー
カリフォルニア大学サンディエゴ校視覚芸術学部卒業後、総合人材サービス会社にクリエイティブディレクターとして新卒入社。企業の新卒採用サイト等の制作や転職サービスとQ&Aサイトの立ち上げに携わる。2017年5月にSIGNATEの前身であるオプトワークスに参画し、スタートアップ立ち上げ期におけるあらゆる業務を担当。同時に、SIGNATE Deltaのプロダクトオーナーとして、事業のグロースも担っている。

AI/データ分析力で差をつけてキャリアアップを実現

――この度リリースされたSIGNATE Delta。実際にサービス画面を拝見しましたが、細かく求人要件を確認できるようになっていて、求職者側にとっては企業ニーズが分かりやすそうだな、という印象を最初に受けました。

糸賀:ありがとうございます。SIGNATE Deltaには、私がこれまで求人業界に感じていた課題を解決するための機能や思想を実装しています。
サービス名に冠している“Delta”は数学や物理で「差分」や「変化量」を意味しており、AI/データ分析力で差をつけてキャリアアップを実現してほしい、という思いが込められています。

――なるほど。機能の詳細を伺う前に、まずはSIGNATE Deltaの開発に至るまでの経緯について教えていただきたいです。

糸賀:SIGNATE Deltaは、これまで当社が提供してきたSIGNATEプラットフォーム、実社会のAI開発やデータ分析課題に挑戦する「SIGNATE Competition」とオンラインAI学習プログラム「SIGNATE Quest」を提供してきた流れの中で、個人をさらにエンパワーすることを目的に開発したものです。

ですので、まずはSIGNATEプラットフォームについてお話しさせてください。

――今でこそ、AI・データ分析人材のコミュニティと言えばSIGNATEになっていますが、もともとはどのような課題意識でサービス開発されたものなのでしょうか?

糸賀:当社代表の齊藤はもともと研究者として、日々の研究過程の中でデータ分析を行っていました。その中で、AI/データ分析技術が台頭し、その活用があたりまえの世界へと突入していく時代に、技術とビジネスにおける世界規模での変化を感じ取っていました。
そこで出会ったのが「Kaggle(カグル)」です。

――データサイエンティストの技術力指標のひとつとして有名ですよね。

糸賀:Kaggleは、オープンイノベーション型でオンライン上で課題を解決していくコンペティションサイトです。コンペティションは、アカデミックの世界では以前から使われていた手法のひとつだったようですが、それをビジネスの世界にも持ち込み、形にしたのがKaggleでした。

それを見た齊藤が、日本でも展開したいと考えてサービス開発を進めていったのが、SIGNATEの始まりです。

SIGNATE Competition、SIGNATE Quest、そしてSIGNATE Delta

――なるほど。SIGNATE Competitionはまさに、Kaggleがもつオープンイノベーション性を日本ライクに落とし込んだもの、ということですね。

糸賀:SIGNATE Competitionは、企業や行政機関が抱えるAI開発・データ分析課題に対して、参加者がコンペティション形式でアルゴリズム精度を競い合う競技会です。

糸賀:言い換えると、コンペティションを開催しようと思った場合、企業や行政機関から課題を拠出していただくことになるのですが、これが、とにかくハードルが高いんです。

――どういうことでしょうか?

糸賀:そもそもですが、全ての企業の担当者様が、最初からAIやデータ分析について高いリテラシーを持っているわけではありません。お話を伺ってみると、AI課題まで落とし込めていない段階のものもあるわけです。

だからこそ、企業のビジネス課題をAI活用課題へと落とし込むために、私たちが毎回コンサルティングを行って課題のブラッシュアップを行っていました。どういうAIが必要で、それに対してデータセットがあるのかないのか、といったことを確認して、足りない部分を補うわけです。

――毎回だと大変ですね。

糸賀:私たち以上に、企業の担当者様の側に「しっかりとAI化プロジェクトのノウハウが残らない」という問題意識を持っている方が多くいるとも感じていました。まさに、受託会社のジレンマですね。

一方で、最初は伴走していくのですが、コンペティション開催に向けてプロジェクトを進めていくと、だんだんとコツを掴み、自分たちでAI課題へと昇華させることができるような企業様も出てきました。
そんな流れから、次に作ったのが企業向けのオンラインAI学習プログラム「SIGNATE Quest」でした。これを学びさえすれば、社内でAI開発プロジェクトを遂行はできないまでも推進できる、というものです。

――すごく自然な流れですね。とはいえ、担当者のリテラシーを座学だけで高めるのはなかなか難しいと感じるのですが、その辺りはどのように工夫されているのでしょうか?

糸賀:おっしゃる通りです。一般的な「単元毎かつ積み上げ式」の学習では知識にこそなれど、血肉になって活用するところまでいかない。だからSIGNATE Questでは、私たち受託会社が実際に遂行するような具体的なテーマの「プロジェクト」を作業レベルまで細分化し、擬似経験できるような作りの教材になっています。
最初は法人向けに提供していたのですが、好評につき2020年4月からはtoC向けにもサービス提供をスタートしました。

法人向けはリリースから1年程度で50社1万人以上の方にご利用いただき、個人向けもリリースから約半年で6千人を超える方が受講しており、受講者がサイト上で分析を試した回数は75万回を超える規模に成長しています。

――これで、ユーザー向けとしてはSIGNATE CompetitionとSIGNATE Questが、それぞれプラットフォーム上に載ったということですね。

糸賀:そうです。実力を示す場であるCompetitionと、足りないスキルを補完するQuestがそれぞれ揃ったことで、スキルアップ後の「キャリアアップ」がピースとして残ったわけですね。このピースを埋めにいこうという企画が、SIGNATE Deltaでした。

求人を出す側も求職者側も、スキルを明確に表現できていない

――SIGNATE Deltaの開発はプラットフォームとして必然的な流れだったわけですが、具体的にどういうコンセプトで企画されたものだったのでしょうか?

糸賀:SIGNATEには2020年12月1日時点で約38,000名のAI・データ分析人材が登録しています。登録ユーザーの7割強が企業に所属している社会人の方で、残り3割弱が学生の方です。

ユーザーの大半は企業に勤めている方で、その中には既にAI/データ分析の専門家として厚遇を受けている方も多いです。
一方で、もっと給料を上げたかったり、評価されたいと思っている方、なにより、自らのスキルや才能をより活かせる事業にチャレンジしたい方もまた多くいるのです。サイト内求人情報としては、そういう方々にとって純粋にニーズがあるような優良な求人情報を、専門求人サイトとしてご用意しています。

――AI/データ分析人材の専門求人サイトって、ほとんど聞いたことがないですね。なぜなんでしょうか?

糸賀:そもそもの母数が少ないので、単純にビジネスにならないんだと思います。だから、一般的な転職サイトにおいて、一職種として求人が出されているわけです。でも、そもそも私はここに課題があると感じています。
つまり、求人を出す側も求職者側も、スキルを明確に表現できていないんです。

――どういうことでしょうか?

糸賀:例えば、ある求人サイトで求人を掲載しようとすると、当然ですが企業はそのサイトのフォーマットに合わせて情報を入力していく必要があります。

中身をテキストで書いていくことになるわけですが、特にAIエンジニアやデータサイエンティストの領域は、求人を書く人事担当者からしたら実際のプロジェクトのことが分かりにくいわけです。
もちろん現場にヒアリングに行くでしょうが、結局消化不良のまま求人に反映されることが多いので、詳細がぼやけた内容になってしまいがちです。そうすると、求職者としては入社後の業務イメージがわからない。

――なるほど。

糸賀:今は企業側の問題をお伝えしましたが、逆もまた然りで、求職者側も自分の職務経歴書に書くべき内容が何なのか、よくわかっていないんです。すると個人ごとに表現が違ってしまい、企業にとっては、どの人にどれくらいのスキルがあるのかが判断できないということになります。
これは、実は全職種に言えることではありますが、特にAI/データ分析系職種の領域で顕著だと感じます。

本来的には、このような「ジョブ型」の求人よりも、さらに深掘って一つひとつの業務にフィットした「チェア型」、つまりは「この席に座って、この役割を担って、具体的にはこの業務を行ってもらいたい」という明確なイス単位での求人が出せれば良いのですが、そうもいかない。
だからこそ、SIGNATE Deltaではそのような思想をできる限り機能として反映するように心がけています。

SIGNATE社の業務を可視化して、求人フォーマットUIに反映

――具体的な機能内容を教えてください。求職者のスキルを正確に測れない問題に対しては、どうされているのですか?

糸賀:まず、SIGNATEプラットフォーム上にはこれまで参加したコンペの戦績や、SIGNATE Questの講座受講歴といった情報が、すでに蓄積されています。企業にとっては、一般的な職歴や学歴情報よりも、これらの情報が圧倒的にスキルとして信頼できるわけです。

例えば画像認識系のコンペでメダルを多く獲得している人は、少なくともディープラーニングが得意だということが分かります。

――なるほど。ここでSIGNATE CompetitionとSIGNATE Questが、それぞれ連携されてくるわけですね。

糸賀:そうですね。先ほど申し上げたフォーマット問題については、AI/データ分析のベンダーである私たち自身の業務を可視化して、それをSIGNATE Deltaの求人フォーマットUIに反映するようにしています。

つまり、他職種との共通フォーマットを使う一般的な求人サイトと違って、AI/データ分析系職種専用のフォーマットを用意して、求職者が実際に入社した時の業務イメージをつけてもらいやすくなるよう工夫しています。

――具体的には、どのような内容があるのでしょうか?

糸賀:例えば、求人の募集部署に同じような職種の人が何人いるか、業務の対象が自社サービス中心か受託案件中心か、求められるアウトプットが分析・開発基盤の構築なのかサービスの運用・保守なのか、担当プロジェクトは少数で深くか多数で幅広くか、といった個別の具体的な「働き方情報」を選択式で入力できるようにしています。

「求められるアウトプット」や「向き合う課題分野」がわかる求人情報

――このあたりが標準的に用意されていると、求人作成担当としては非常に楽ですね。

糸賀:今はこれくらいなのですが、将来的には「現場のことを知り尽くした方しか入力できないような情報」を入れる枠も設けたいと思っています。
具体的にどんな情報かはまだ詳細を詰めている段階ですが、AIエンジニアやデータサイエンティストがより採用にコミットできるような仕組みを整えていきたいですね。

SIGNATEのプロフィールはKaggleとも連携

糸賀:他にも、これから更に改良する予定の機能として、求人の必須スキルと歓迎スキルをタグで選択していって、より具体的に表現できるようにしたいと考えています。もちろん、その際にはユーザー側でもタグで自身のスキルセットを選択したり、そのマッチ度から求人検索ができるようになるイメージです。

現状でも、自分のスキルが応募要件をどれだけ満たしているのか、その被り具合から「スキルマッチ度」と「希望マッチ度」として見える化させているのですが、この精度を極限まで高めていって、これまでにはなかった「求人との出会い」体験を作っていきたいですね。

――なるほど。そして、応募要件に対して不足したスキルがあるのだとしたら、そこをSIGNATE Questの講座で補完するということですね?

糸賀:そういうことです。SIGNATE Questにはアセスメントというテスト機能もあり、そこでの合否情報をもとに実力をアピールすることもできるので、スキルアップとキャリアアップを同時に目指すことができます。

――今までSIGNATEを使ったことがない人は、蓄積された情報がないと思うのですが、その場合はどうなるのでしょうか?

糸賀:現在、SIGNATEのプロフィールはKaggleとも連携していて、Kaggleの成績をプロフィールに反映できるようになっています。ですので、例えばSIGNATE上でのアクティビティは少ないがKaggleではグランドマスターだという方でも、実績としてアピールすることが可能です。
また、執筆した論文などもプロフィール情報として掲載できます。

企業から見たユーザー情報画面。SIGNATEやKaggleのアクティビティが可視化されている

――アピールする材料が多く、プロフィールが充実した方が、企業も評価しやすいですからね。

糸賀:今後の予定として、更に外部サービスなどとの連携も積極的に実装していきたいと思っています。
あくまでも、SIGNATE内でのアクティビティをメインに据え置きつつ、様々な媒体での技術者としてのアウトプットも合わせて発信できる場所にすることで、AI/データ分析アクティビティのポートフォリオとしても活用してもらいたいと考えています。

これからは「個のエンパワーメント」の時代

――お話を伺うほどに、SIGNATEプラットフォーム上のプロダクトが、非常に有機的に連携しているなと感じます。

糸賀:ありがとうございます。まだまだやりたいことはたくさんあって、例えばオファー競争のような機能や、求人情報に対して公開の質問掲示板機能を付けたりといった構想もあります。

――オファー競争って、どういうことでしょうか?

糸賀:例えば、ある求職者が5社からのオファーを受けていて最高年収が1,000万円で提示されているのだとしたら、その情報が企業担当者に表示される。そうすると「じゃあうちは1,100万円でオファーを出そう」といった検討がなされることになります。
このような、優秀な人材に対して適正な評価が行われ、市場価値を上げていく仕組みを作れればと思っています。

――これからの進化が楽しみですね。SIGNATEというプラットフォームとしては、今後どのように成長させていきたいと考えていますか?

糸賀:プラットフォームとしてキーワードに掲げているのは、「個のエンパワーメント」です。競争や共創、学びや仕事における様々な機会を提供することで「個」をエンパワーし、彼ら彼女らの活躍が、回り回って社会をより良くしていく。それこそが、SIGNATEであるし、そうありたいと思っています。

私自身、もともと「評価されるべき人が評価される仕組みを作りたい」という想いがあり、今回のSIGNATE Deltaはその想いを叶える第一歩です。技術者ではない私が言うのもおこがましいですが、技術者は社会の宝です。そしてこれからの時代は、特にAI/データ分析の技術者が世の中を引っ張っていく存在になると確信しています。

だからこそ、AIエンジニアやデータサイエンティストは、もっと認められて良い、評価されて良い。全てのビジネスにDXの波が来ていて、蓄積されていくデータを活用するトレンドがますます加速している今、まさにスター職種だと思うわけです。

データサイエンティストは、2012年のHarvard Business Reviewでも「21世紀で最もセクシーな職種」と表現されて話題になっていましたよね。この「セクシー」な人たちと、そこを目指す予備軍の方々に、より良い未来を切り拓く機会を提供したい。それが、SIGNATEとSIGNATE Deltaの目指すところです。

――ありがとうございます。最後に、SIGNATE Deltaに興味がある方々へのメッセージをお願いします!

糸賀:今時点で転職の意思が無くても、登録しておくだけで良いスカウトが来るかもしれないので、ぜひSIGNATE Deltaに登録してください!

SINGATE Deltaに登録する

編集後記

AI/データ分析人材の需要が高まり続ける今、AIエンジニアやデータサイエンティストを欲している企業は数多くいます。「SIGNATE Delta」を利用し、自身のスキルについて適正に評価を受け、足りないポイントを効率的に補完することができれば、希望のキャリアを築く大きなチャンスになると言えるでしょう。
「適正にスキルが評価される転職をしたい」と感じるAIエンジニアやデータサイエンティストの方、AI/データ分析人材としてのキャリアを広げたい方は、ぜひ「SIGNATE Delta」を利用してこの大きなチャンスを掴んでください。

取材/文:長岡 武司
撮影:太田 善章


個をエンパワーするプラットフォーム「SIGNATE」

AI / データサイエンスを武器に、企業や社会のリアルな課題にチャレンジし、
最高のソリューションを目指そう!
SINGATE Competition

未経験者から高みを目指すエキスパートまで、
実データ・実課題への取り組みを通じてスキルアップを実現しよう!
SINGATE Quest

AI/データ分析を学びたいITエンジニアもAIエキスパートのデータサイエンティストも、
理想のキャリアを実現しよう!
SINGATE Delta

  1. 「一気通貫」でクライアントの課題に挑む。エンジニアからITコンサルタントに転身してフューチャーアーキテクトで得られた視点とは
  2. ディープラーニングのゴッドファーザーのもとで、世界最先端のAI研究に没頭する日立の研究者に迫る