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エンジニアがキャリアを一本化せずに違う職種を体験する意味~Qiita × GENIEE Tech Meetupレポート〜

2022年9月30日、「Qiita × GENIEE Tech Meetup」がオンラインで開催されました。本イベントでは「多様化するエンジニアのキャリアパス。理想のキャリアを作るには?」をテーマとして、ゲストに「エンジニアリング組織論への招待」の著者で、エンジニアのキャリアや組織論に知見のある広木 大地 氏をお招きしました。またエンジニアのキャリアパスや組織制度については、株式会社ジーニーとChatwork株式会社の取り組みを紹介。本記事では、イベントの模様をダイジェストでお伝えします。

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エンジニアが増え続ける企業とエンジニアが去る企業

採用部門は戦略部門へ進化していく

イベントの幕開けとなるゲストセッションでは、株式会社レクター代表取締役の広木大地氏が登壇。「開発者体験とエンジニアキャリア〜エンジニアに選ばれる企業・エンジニアが消える企業〜」と題して講演しました。

広木氏が最初に話したのは、エンジニアの採用における「二極化」の原因やメカニズムについてです。企業は「エンジニアが増え続ける企業」と、「エンジニアが定着しない企業」の大きく2つに分かれると言います。

IT人材へのニーズの高まりと労働人口の減少を受けて、今後さらにエンジニアの採用は難しくなっていくと予想されています。こうした潮流に伴い、エンジニアの採用に関わる部門も変化すると指摘します。

「エンジニアの採用に関わる部門は、戦略部門になっていくでしょう。戦略部門とは、オペレーションをこなすだけではなく、企業が戦略的に勝てるよう考えなければならない部門のことを指します。具体的には、中長期的な視点からコーポレートブランドを高めたり、そのために必要となる採用チームを作ったりします。」

エンジニアの採用に成功する企業は「釣った魚に餌をやる」

冒頭で触れた通り、近年ではエンジニアの採用に「成功している企業」と「失敗している企業」の二極化が進んでいます。それでは、エンジニア採用に成功している企業は、どのようなアプローチをしているのでしょうか。

「内定承諾をもらったら採用部門と関係が途切れるのではなく、入社後も社員のケアを続ける企業が多いです。釣った魚に餌をやらないのではなく、活躍できるようになるまで採用部門がサポートし続ける企業が、エンジニアの採用に成功しています」

「エンジニアがオープンなコミュニティを通じて発信することで、企業の存在や取り組みが周囲に認知され、興味関心を抱いたエンジニアが入社を志します。入社して活躍できるようになったら、会社での仕事ぶりを発信したくなる、といった具合で、このサイクルが回っていきます」

つまり、自社に関する発信や交流が可能なコミュニティを、企業の周囲に形成していくことが大切です。エンジニアブログ、Twitter、イベント登壇、OSS開発、ポッドキャスト、そしてQiitaなど、さまざまな媒体を通じて自社の活動を知ってもらいましょう。エンジニアを取り巻くコミュニティが転職潜在層となるのです。

エンジニアの採用担当者は、採用担当者や経営者の話よりも、現場の声のほうが信頼されることを理解しておくべきです。会社紹介で経営者が「フラットで働きやすい職場」「エンジニアは自由にいろんなことができる」と話すよりも、現場で働くエンジニアが勉強会や懇親会で同じ情報を発信するほうが信頼されます。

続いて広木氏は、エンジニア組織の「フライホイール戦略」について語ります。フライホイールとは「弾み車」のことで、エンジンの回転を助ける役割を担います。フライホイール戦略とは、1つの車輪が回転し始めると、他の車輪もぐるぐると回っていき、結果としてより良いサイクルが構築されるというものです。

このフライホイール戦略をエンジニア採用にあてはめてみましょう。エンジニアを取り巻く優れた文化はコミュニティにどんどん漏れ出ていき、その情報がコミュニティを活発化させて優秀なエンジニアの採用を実現し、優秀なエンジニアが優れた文化を醸成していく、というサイクルを形成するのです。

「こうしたサイクルを意識している企業は、効率的にエンジニアを採用できるようになっていくでしょう。仮に、どこかのフェーズがうまく機能しなくなっていくと、悪循環に陥ってしまいます」

「採用を目的として情報を発信しない」ことが重要

現場の情報をできるだけ透明性高く届けるために、エンジニアブログやQiitaなどで発信する場合は、「採用するために発信するぞ」と意識しすぎないことが重要です。

「採用を意識して書ける人は採用のために発信すれば良いのですが、そうでない人は筆が進まなくなってしまう。だから、あくまでも周囲のコミュニティに役立つちょっとした情報を発信する、というスタンスを取りましょう。最近読んだ本や工夫したことについて、メモ書き程度で書くだけでも十分です。ある程度情報が蓄積されてきてから、それをブログにしたり、ストーリー仕立てにしたりすると良いでしょう」

また、「優れたエンジニア組織が積極的に取り入れる多様な習慣は、資本のように蓄積していきます」と語り、これを「エンジニアの文化資本(以下、文化資本と表記)」と呼びます。

そして、良い組織には良い文化資本が集まり、組織の持つ文化資本に対してエンジニアは惹かれるのだと広木氏は説明します。

「自分も新たに挑戦するメンバーの1人になれるかもしれないと思うのです。組織の文化に合わない人は入社しようと思わないので、良い文化資本を持たない人を惹きつけない対策にもなる。人材の数を確保することだけを考えるのではなく、社内の環境を整えて良い文化資本を蓄積することが非常に重要です」

文化資本にはさまざまな種類が存在し、流行り廃りもあるものの、自社内に馴染ませていく過程においては「形から入るだけでも実は価値がある」のだと、次のように明かします。

「良い習慣かどうかはエンジニアにとっても不明だけど、試してみて良かったな、と感じたことの積み重ねが、企業の文化資本の形成に役立ちます」

エンジニアの開発体験に関わる文化資本は、蓄積しやすい企業とそうでない企業があります。当たり前に挑戦できる会社と、いちいち説明しなければならない会社で二極化されるのです。挑戦する理由を合理的に説明するハードルが上がれば上がるほど、気力が削がれていって最終的には挑戦もしなくなります。

もちろん、説明を求めるのはマネージャーの義務であり、何でも承認するわけにはいきません。そこで「何について説明を求めるか」が、組織の文化を創るのだと言います。

開発者体験の発信や採用活動の“羅針盤”

ここまで紹介したことがうまく機能している企業はエンジニアを採用できていて、そうではないところは採用に苦しんでいるというのは事実でしょうか。それを裏付けるのが、広木氏が日本CTO協会のワーキンググループで行った「開発者体験ブランド力調査」です。

「開発者による発信や採用広報活動の“羅針盤”を作りたかったのです。ランキングやスコアを見えるようにすることで、CTOの説明コストを下げたいと考えました。」

質問項目には、職場について重視することや、開発者体験が良さそうだと感じた企業名などを設定。下図で示す「上位社名をあげた回答者が社に対してもっている印象」という問いに対しては、「エンジニアとして成長できそう」「著名なエンジニアが数多くいそう」といった回答が上位を占めています。

回答者が就職先に対して重視していることは、「リモートワーク等の働き方の柔軟性があること」に続いて、利用している技術スタック、同僚の技術レベル、年収の高さ、自社開発のプロダクトの有無、ワークライフバランスの取りやすさ、技術的な挑戦のやりがい、などがあります。

「認知している発信チャンネルに対する問いには、経営者の情報や公式サイトではなく、テックブログやQiitaのような所属エンジニアの登壇イベント、Twitter、エンジニアの採用インタビュー記事、OSS活動などの回答が上位を占めました」と広木氏は補足する。

この傾向は、「好感を持っている発信チャネル」になると、より顕著になります。

「やはりエンジニアからの発信の方が注目されており、メッセージ性も強いことが分かりました。エンジニアにとって良い組織があることが、漏れ出て伝わって、その結果採用がうまくいく。このサイクルを回そうと多くの会社が意識することで、エンジニアにとって良い環境が増えていくだろうと感じています。それと同時に、他の職種と同じ手法で採用して失敗しないよう注意していただけたらと思います」と語り、講演を締めくくりました。

「開発者体験ブランド力調査レポート2022」の一部は、こちらで公開されています。
https://drive.google.com/file/d/1i0lpIC5WSRk4ghKSIhRFbuQR3S7uvyjH/view

全社にOKRを取り入れたジーニーの挑戦

大規模な組織変革で「全社Purpose」実現を目指す

続いては、株式会社ジーニーでCTOを務める孟祥梁氏とテクノロジー戦略室のマネージャーを務める東哲志氏が登壇。同社は広告プラットフォーム「GENIEE Ads Platform」やマーケティング・営業DXツール「GENIEE Marketing Cloud」を始めとする、マーケティングテクノロジーに特化したサービスを複数運営しています。

CTOの孟氏は、他社でエンジニアからキャリアをスタートし、現在はサイエンスチームを率いる他、テクノロジー戦略室の本部長を務めています。

「ジーニーでは今年2月にOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)を全社で導入しました。全社Purpose(ジーニーの存在意義)と全社のプロダクト方針、目標は1つに定められていて、それをブレイクダウンして各プロダクト、各チームに展開しています」

全社Purposeは、Business PurposeとCorporate Purposeの2つに分けられます。ジーニーのプロダクトやサービスが関わる「Business Purpose」では、「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」ことを目指しています。また組織の存在意義を示す「Corporate Purpose」では、「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」ことを目指します。

同社はOKRを導入すると同時に縦割り組織を取りやめて、事業部で組織を分けました。しかし、テクノロジー戦略室は例外だと孟氏は補足します。

「テクノロジー戦略室は、機能型組織となっており、、横断的な開発タスクを全て担当しています。サイエンスやインフラなどに関しては、1つの組織にすることで車輪の再発明を防ぐのです」

Key Resultsを個人の目標に設定

この取り組みについて、マネージャーを務める東氏は「現場の視点」から説明します。

「ジーニーのOKRでは、降りてきた成果指標のKey Results(以下、KR)をブレイクダウンして、チームメンバー各人の目標に設定しました。目標を達成できるよう、現実的なプランを立ててブレイクダウンすることが大切です。また、トップダウン形式で一方的に取り組むよう通達するのではなく、不明確な部分があれば認識をすり合わせながら、双方向のコミュニケーションで整合性を保てるように工夫しています。開発速度を高めるための施策や目標は上層部からあまり出てこないので、ある程度は現場からも提案しながらKRを決めていきました」

これまでの半年を振り返ると、上層部の目標と現場が取り組んでいることのつながりを明確に感じられるようになり、仕事の価値を理解して進められるようになったと東氏は話します。また、完全に達成しなくてもいい「ムーンショット目標」を設定することで、より高い目標を見据えられるようになったと言います。

一方で、定常業務との相性が悪いため評価が難しい、といった課題もありました。

「10月からは個人の能力をしっかり評価する人事制度に変わるので、OKRで出た課題も改善できていくでしょう」(東氏)

グローバル人材も「同じ言語とOKR」で働いてもらう

ここからは孟氏が、ジーニーのグローバル展開に関する施策を紹介します。同社は、グローバルチームについてもマネジメントラインを一本化し、コミュニケーションコストを減らす取り組みを行っています。

海外での採用計画に関しては、現地で採用するか、国内で採用するか判断するためのフローを定めていると孟氏は明かします。

「主にコミュニケーション距離を測り、遠いところに関しては現地採用でも良いと判断しています。海外はどうしても言語の壁があるので、総合的に判断して採用を進めなければなりません」

孟氏は、エンジニア向けのインセンティブ制度についても紹介します。

「広告のプラットフォームに関しては、少しチューニングすればサーバーのコストを数千万円単位で削減できることもあり、積極的に業務へ取り組んでもらえるようインセンティブ制度を設けました。インパクトが大きければ、1回で3万円支給しています。深夜の障害対応にもインセンティブを支給するなど、新たな試みを探っているところです」

国内では優秀な人材を採用しやすい傾向にありますが、グローバル人材も獲得すべきだと孟氏は語ります。グローバルチームの運営に当たっては、国内と同じOKRを定めて日本語で会話してもらい、ジーニーのカルチャーを根付かせなければなりません。しかし、言語の壁があるので初めの内はPDCAを回すところにフォーカスし、海外組織が自走できるように工夫することが大切だと締めくくりました。

エンジニアの知見と人事部門の知見を融合させたChatwork

「エンジニアマネジャーは簡単に採用できない」からスタート

Chatwork株式会社が展開するビジネスチャットツールの導入社数は2022年6月末時点で36.5万社と、国内利用者数はNo.1を誇ります。

同社は2022年10月時点で、従業員数が間もなく300人を突破する見込みですが、サービスグロース期において、開発組織はCTOが1人で率いていました。CTO兼プロダクト本部長を務める春日重俊氏が入社した2016年、サービス利用規模は大規模なものへと発展。当時在籍していたエンジニア数は30名から40名程度でしたが、サービス拡充をきっかけとして開発本部機能を追加しました。

2020年には、コロナ禍に突入したことでサービスの利用規模がさらに拡大しており、同社はこのタイミングで組織規模を拡大しています。

組織改編において、2つの課題がありました。エンジニアリングマネージャー(EM)の希少性そのものと、希少性が高いゆえに生じる課題です。

「職務にテクニカルマネジメントが含まれ、一定レベル以上の能力が求められるEMを目指す人は少なく、採用も非常に難しいのが実情です。その他にも、マネージャーが在籍していないために部署を増やしたり、組織をスケールアウトしたりすることも困難という問題があります。」

そこで同社は、「EMは簡単に採用できない」ことを前提として、打ち手を考えるようになりました。

利用者からのリクエスト増加に合わせて、より効率的な開発組織を編成。提供する機能単位でチームを作り、その中に必要な職種を内包する体制に移行しました。Chatworkでは、このチームを「フィーチャーチーム」と呼んでいます。

続いて同社が取り組んだのはEMの職務の分解と、開発チームとマネジメントの分離です。開発チームとマネジメントの分離においては、開発チームにテクニカルマネジメントやタスクマネジメントを実施させることで、自己管理可能なチームの編成を目指しました。

こうした取り組みと並行して、同社はピープルマネージャーと開発チームの関わりも見直したと春日氏は語ります。

「組織を管理したりモチベーションを維持したりするピープルマネージャーのリソース効率を最大化するために、1人で複数のチームを担当させる、複数人で1つのチームを管理する、といった取り組みを始めました」

こうした組織作りの変化は、リーダーが1人で組織を引っ張るような組織体制を取りやめて、スクラムを組む体制へ移行するイメージです。とはいえ、開発組織の全てがフィーチャーチームに移行しているわけではなく、現在はフューチャーチームと職種別部署が混在している状態だと言います。

「新しい組織体制へ移行するステップとして、従業員の不安解消、ピープルマネジメントの冗長化、モノリシックなアーキテクチャの分割などに取り組んでいます」(春日氏)

人事とのスクラムチーム 「DevHR」

こうした課題を乗り越えるために考えられたのが、人事とのスクラムチームです。

春日氏は「人事とエンジニアの距離が遠いと、それぞれの認識にズレが生じます」と語り、下図のような例を挙げます。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。その理由として、春日氏は「ミッションが異なる」「情報や認識の共有にラグがある」の2つを挙げます。当然ながら人事部門と開発部門では担う役割が違いますし、短時間の定例会議では情報が不足してしまいます。認識のズレを修正することは難しいでしょう。

そこでChatworkは、人事的な組織課題へのアクションに対して、一貫したオーナーシップを持つチーム「DevHR」を編成。DevHRは、組織開発や採用広報、採用、ピープルマネジメントなどを内包したバーチャル組織で、スクラムチームとしてタスクに取り組んでいます。

DevHRでは、以下のような活動にも注力しています。

  • 中期プロダクト開発組織の組織設計案の作成
  • 新規募集ポジションのペルソナ策定、募集ページの作成
  • 新卒採用戦略の立案、説明用資料の作成
  • インターンシップの企画案出し

こうした活動を行った結果、2020年時点と比べて約40%増の人材を確保できました。気合に頼らず、研究しながら取り組んだ成果だと春日氏は振り返ります。

「ダイレクトスカウト活動では、タレントリストを作り、アウトプットを確認したりカジュアル面談をしたりするなど、次のアクションを考えるところまで一気通貫で行うことがすごく重要です」(春日氏)

同社では、テックイベントでも成果を挙げており、2021年にはIT勉強会を支援するプラットフォーム「connpass」の累計メンバー数を、78人から1086人まで伸ばすことができました。イベント開催にあたって、DevHRチームは下図のような取り組みを行ったと言います。

こうした活動を通して、エンジニアに代表される専門職の知見と人事部門の知見を組み合わせた組織改革や、採用活動の全体最適化、組織状態の変化の共有を実現できたと春日氏は強調します。

最後に春日氏は「30人、50人、100人と、組織拡大には壁があると言われていますが、これからはさらに大規模な組織の拡大を目指すことになります。これから立ちはだかる壁を、スクラムチームで乗り越えたいと考えています」と語りました。

パネルディスカッション

■成功体験に固執せずにエンジニアのキャリアを積む

最後のセッションでは、Qiitaの清野 隼史をモデレーターに、ジーニーの孟氏とChatworkの春日氏がパネルディスカッションを行いました。テーマは「多様化するエンジニアのキャリアへの向き合い方」「マネジメントキャリア・スペシャリストキャリアについて」の2つです。

――1つ目のテーマは「多様化するエンジニアのキャリアへの向き合い方」です。広木さんのお話にもありましたが、エンジニアの働き方は年々多様化しています。業務委託やフリーランスではなく、正社員として人材を雇用する意味とは何でしょうか。

孟:エンジニアのキャリアが多様化していることを実感しています。10年前ぐらい前の採用市場においては、業務委託の採用は今ほど簡単ではなくて、正社員としての採用がメジャーでした。最近は業務委託として働く方を採用しやすくなり、優秀な方を短いリードタイムで採用できることに魅力を感じています。その中でも正社員の採用を重要視するのは、良い組織文化やカルチャーを次の世代につなげていくためです。

――逆にエンジニアの立場ではどうでしょうか。

春日:エンジニアとして特定の企業に所属すると、どうしても事業戦略に引きずられるところがあります。例えばChatworkの中期経営計画では、「2024年までに中小企業No.1ビジネスチャットを、2025年以降ではビジネス版スーパーアプリを目指す」と掲げていますが、そちらへ引きずられてしまうのです。一方、企業に所属することによって、1人ではなかなか達成できない目標をチームで達成する体験を味わえるメリットもあります。

もう1つメリットを挙げるとすれば、企業に所属した方が「スキルを盗める」ことです。

――このタイミングであえてお伺いしたいのが、そもそも論として「キャリア」とは何だとお考えでしょうか。

孟:私の個人的な意見としては、目指すキャリアは年齢とともに変わっていくものだと考えています。私自身、20代の内はスペシャリストを目指していたので、年齢が上がるにつれて管理職のポジションに就くことを求められるようになり、最初はすごく抵抗を感じていました。しかし、実際に管理職になると、これまで培ってきた経験やノウハウを広くシェアできるようになり、結果的に私も会社とともに成長できたと感じています。

春日:個人的にスキルアップにおいて重要だと思うのは、自分自身の成功体験に固執しないで、アンラーニングしながらアップデートすることです。1つのスキルを磨きぬくことも良いのですが、発展のスピードが速いIT業界では、身につけたスキルが陳腐化することがあります。例えば、私はインフラエンジニアでしたので、データーセンターで作業することもありました。IaaSが登場してから、ボタンを押すだけでサーバーが立ち上がるのを見た時の衝撃は、今でもよく覚えています。そこからは、市場の流れを読んでAWSなどの勉強を始めました。これからの世の中を見据えた上で、柔軟に変化し続けることが重要でしょう。

■「最初からキャリアを突き詰めすぎない」ことが重要

――ここからは2つ目のテーマ「マネジメントキャリア・スペシャリストキャリアについて」です。お2人の体験談もお伺いしたいと思っています。お2人は今でも開発に携わっているのでしょうか。

春日:Chatworkにはエンジニアが約100人いるので、現在は開発はしていません。30分単位に入れられたミーティングをさばいているのが現状です。とはいえ技術は好きなので、中長期的に見て必要なものは、空いた時間を見つけた時にちょっと触っておいて、みんなとの議論に生かしています。

孟:私も似ていて、30分単位でミーティングが組まれています。とはいえ、現場から完全に離れているわけではありません。コーディングはしませんが、ロジック開発では現場で働くこともあります。ただ、割合は本当に減っていますね。

――その上でお伺いしたいのですが、今のお仕事は楽しいですか。

春日:ちょっとしんどいなと思うのは、コンテキストが違うことを瞬時に切り替えるところです。例えば、アーキテクチャの変更についての話をした後に、新卒採用で学生との1on1をしてコメントを求められるような場合ですね。

孟:私も似たような体験があります。切り替えが非常に難しいですよね。

今のポジションに就いた後と現場でエンジニアとして働いていた頃では、楽しいなと感じる部分は変わりました。エンジニアの時は良いアプリケーションを作れたとか、イケてるアーキテクチャで事業に効いてくれたとか、そういったところが楽しかった。それが今では、数字を追うことが楽しいと感じるようになった。楽しさが減ったわけではありませんが、中身はだいぶ変わったと思います。

――エンジニアがマネジメントに挑戦してみることの意味についてどう考えますか。

春日:マネジメント一本にキャリアを絞り込む必要はないかなと思います。やってみた結果、自分がもっともっとのめり込めるものがあるのなら、そちらに注力した方が良いでしょう。当社では現場に戻りたいと言っていたマネージャーを、新しいEMを採用したタイミングで現場に戻したケースもあります。

ただ、マネジメントを一度でも経験すれば、現場に戻った時に、求められている役割やアウトプットがよく分かるようになります。とはいえ、ずっと現場で働きたい人が、無理やりマネジメント職に就くのも違うかなと思います。「自分がどうありたいか」をよく考えてキャリアを決めれば良いのではないでしょうか。

――マネジメントキャリアかスペシャリストキャリアかは、最初に選んで突き進んでいくわけではない。経験としてマネジメント職に就いた後にスペシャリストに戻ってもいいし、スペシャリスト職を経験したからこそ、マネジメントキャリアの中で価値を提供できるケースもある。フラットに挑戦することがキャリアを広げていくことにもなるのですね。

春日:今の時点ではそう思います。

――最後にお2人からひと言いただければと思います。

孟:私自身も大変勉強になりましたし、改めてキャリアを見直そうと思いました。新たな考え方に触れることの重要性を感じられたので、今後も他社様とどんどんコミュニケーションを取っていこうと思います。

春日:CTOの立場になると自社の事業を成長させることに注目しがちですが、方向性は正しいのか定期的に振り返ることが大切です。世の中の動きや他社様の事例を聞き、課題や進化について考えるきっかけを得られました。熱心に聞いていただいたみなさんにも、何か1つでも良い気づきがあれば幸いです。

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