Dear Great Hackers

  1. イベント
  1. タイアップ

『Armv9』が、新しい「驚愕の10年」を創造していくと示したイベント『Arm Vision Day』

スーパーコンピュータ『富岳』に採用されたり、スマートフォン、スマートデバイスなどの進化を創出したりするなど、最先端の話題に事欠かない「Arm」は、2021年3月30日に『Arm Vision Day』を開催。『v8』から10年ぶりとなる新アーキテクチャ『Armv9』を発表しました。

『Armv9』は、演算能力を高めてAIや機械学習にも最適化し、セキュリティ、堅牢性の向上が図られており、新しい10年を切り拓くのに最適なアーキテクチャです。ここでは、『Arm Vision Day』の概要をお伝えします。

なお、このイベントのセッションはサイトで公開されています。本記事を読んで、興味をもたれた方は以下のサイトで閲覧することができます。ぜひご覧ください。

次世代のArmアーキテクチャ

プロフィール

内海 弦(うつみ ゆずる)
アーム株式会社
代表取締役社長
1987年、インテルジャパン株式会社(現インテル株式会社)に入社してキャリアをスタート。2008年11月にアーム株式会社入社。OEMセールスを経て2010 年にセールス担当バイスプレジデントに就任。2013年7月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。

 

サイモン・シガース(Simon Segars)
英Arm
最高経営責任者(CEO)
創立時の社員の1人としてArmに入社して以来、テクノロジーとビジネス両面でイノベーションを推進し、Armを、世界で最も広く普及しているコンピューティング・テクノロジーを設計する会社へと成長させた。
世界で最初のデジタル式携帯電話に採用された、初期の先駆的なArmプロセッサであるArm7とArm9の開発を率いた。2001年にエンジニアリング担当バイスプレジデントに就任し、2013年7月にArmの最高経営責任者(CEO)。
サセックス大学で電子工学の工学学士号、マンチェスター大学でコンピュータサイエンスの理学修士号を取得。

 

リチャード・グリセンスウェイト(Richard Grisenthwaite)
英Arm
シニア・バイスプレジデント / チーフアーキテクト兼フェロー
2001年にArmv6が導入されて以来、Armアーキテクチャ担当の責任者として、将来を見据えた革新をリード。Arm入社時は、Arm720T、Arm940T、Arm1136EJF-S の開発に携わっており、Arm入社以前は、アナログ・デバイセズ社で固定機能のDSPを、Inmos/STMicroelectronics 社でトランスピュータの開発に従事した。ケンブリッジ大学で学士号を取得し、マイクロプロセッサの分野で105件の特許を取得している。

 

「『Armv9』は、社会にとって、大きな意味を持つものになると確信している」

アーム株式会社 代表取締役社長 内海 弦 氏

『Arm Vision Day』は、アーム株式会社、代表取締役社長の内海弦氏(以下、内海氏)の講演で幕を開けました。内海氏は、2020年はコロナ禍で世界中が混沌とした中にあって、半導体需要の高まりがあったと言います。

また、日本のスパコン(HPC : High Performance Computing)『富岳』が世界でNo.1になるという記念すべき出来事にも言及。『富岳』は、コロナ禍において、マスクからの飛沫の飛散シミュレーションで使われたことに触れられ、人々の役に立ち、クローズアップされたことがうれしいと語りました。

Armはエコシステムパートナーがいてはじめて成功すると、内海氏。特に日本のパートナーには感謝していると話します。10年前のArmのチップセット出荷数が240個で、そこから大きく成長してきたことに触れ、これから『Arm Vision Day』で、次の10年に向けたArmのビジョンを紹介すると宣言しました。

2011年に『Armv8』を発表した際には、様々な意見があったと内海氏は言います。しかし、この10年を振り返ると、64bitのアーキテクチャ『Armv8』は、スマートフォンで深く、幅広く浸透しただけでなく、家電やテレビ、ゲーム、PCといったラージスクリーンデバイスでもArmが採用され、サーバや、スーパーコンピュータにも使われたと話します。

『Arm Vision Day』で発表する『Armv9』は、10年に1度の転換期を象徴するもので、Armだけでなく、テクノロジー・半導体業界にとっても、社会全体にとっても、大きな意味を持つものになると確信していると内海氏は語りました。

「開発者の思い描く未来を現実にし、新しい10年を切り拓く」

英Arm 最高経営責任者(CEO) サイモン・シガース(Simon Segars)氏

つづいて、Armの最高経営責任者(CEO)、サイモン・シガース氏(以下、シガース氏)がビデオで登壇。画面にはシリコンバレー・サンノゼにあるArmのUSオフィスが映し出されました。シガース氏はコロナ禍の影響でリモートワークが続いたため、社員がオフィスに戻るための計画を立てており、新しい入館手続きを検討していると話します。

世界中のオフィスがパンデミックの影響で変わりつつあり、その対応にはテクノロジーが極めて大きな役割があるとシガース氏は指摘。テクノロジーには常に解決すべき無数の課題があります。近い将来、コロナウィルスの予防接種証明が必要になった場合、信頼できるデジタル証明書をスマホに表示することが考えられます。

それ以上に意味があるのは、自身の医療データをデジタル形式で常に持ち歩けるようにすることだとシガース氏。こうした快適さを手に入れるためには、今まで以上に高度な暗号化技術をデバイスに導入する必要があり、それを実現するために重要になってくるのが『Armv9 アーキテクチャ』です。

『Armv9 アーキテクチャ』は、メモリタギングなどの機能を使いメモリの安全性の問題を解消。安全にデータを操作するための金庫室を提供する『Realms(レルム)』管理機能等で、複雑なサイバーセキュリティの課題に対処します。

また、『Armv9』ではスケーラブル・ベクタ拡張(Scalable Vector Extension;SVE)のアップグレード版である『SVE2』が提供されます。これは、専用のAI、DSP、xRのワークロードに対するサポートを拡張するもので、AIが強化され将来的にはマトリクス演算の処理能力が向上します。今後はAI機能の強化により、膨大な種類の専用アプリケーションのための道が切り拓かれます。

シガース氏はNVIDIAとArmの将来に期待しており、Armのコンピュートプラットフォームやエコシステムと、NVIDIAの人工知能に対する深い専門知識を組み合わせることで、AI時代をリードするコンピューティングカンパニーが誕生すると語りました。

これによりArmのR&D能力が押し上げられ、Armのビジョンであるユビキタスなコンピューティングプラットフォームによる経済的な専用プロセッシング、設計の自由度、アクセス性といった利点を活かした製品を生み出せるようになります。

次に、ArmのIPプロダクトグループ、プレジデントのレネ・ハース(Rene Haas)氏(以下、ハース氏)が登場。『Armv9』は、これまでArmでやってきたこととは異なるものだと言います。

Armが達成した成功事例として「Arm Cortex-M55 CPU」と「Arm Ethos-U55 NPU」の組み合わせをあげ、機械学習を用いた標準的なフレームワークと比較して500倍近く性能を向上することができたことを示しました。

今後は、自動車や自律運転などあらゆる多様な分野での製品化を予想し、『Armv9』によって開発者に何がもたらされるか楽しみであり、セキュリティ面についても素晴らしく将来の基盤となる『Armv9』ポテンシャルについて、わくわくしていると語りました。

ここでシガース氏があらためて登場し、Armのテクノロジーの使用例を紹介しました。南アフリカの輸血サービスが使用するドローンや、インドネシアのジャングルでの違法な伐採を監視する音声モニタリングシステムなどをあげ、シガース氏自身Armテクノロジーの幅広い領域での普及に驚きがあったそうです。

1年後には累計で2,000億個のチップを出荷することになり、さらに5年以内に次の1000億個を出荷すると予測。つまり今後5年間でArmベースチップ出荷数は累計で3,000億個になることを意味しています。

「私たちの目的は、幅広い開発者がArmで『write fast, run fast』の開発コンセプトを実現するようにすることです」とシガース氏。Armのコラボレーションの範囲は広大で、オープンソースだけでなく開発に対するサポートも加速していきます。

「Sparking the World’s Potential(可能性が開花する)というArmのビジョンは、何百万人もの開発者の思い描いている未来を現実にしていくこと。Armは、ミクロの視点での詳細と、Armベースのテクノロジーがもたらすマクロ的影響の両方に焦点を定め、新しい『Armv9』時代の10年を楽しみにしていると語りました。

『Armv9』の次世代アーキテクチャのあらまし

今後10年間で世界が直面する課題を解決するためのテクノロジー

英Arm シニア・バイスプレジデント、チーフアーキテクト兼フェロー リチャード・グリセンスウェイト(Richard Grisenthwaite)氏

『Arm Vision Day』は、『Armの次世代アーキテクチャ概要』解説へと移り、リチャード・グリセンスウェイト氏(以下、グリセンスウェイト氏)がビデオ登壇しました。

グリセンスウェイト氏は、まず、Armのパートナー精神がテクノロジーカンパニーのグローバルなエコシステムに対して成功を収めてきたと話します。そのエコシステムの技術的な基盤となるのが『Arm アーキテクチャ』です。

Armは刻々と変化する世界のニーズに応えるため進化をつづけています。『Armv8』アーキテクチャで64bitのプロセッシングを導入した後の10年間で、仮想化のサポート強化、float16とbfloatを追加して機械学習の性能を大幅に強化、さらにリターン指向プログラミングとセキュアハイパーバイザーを支援するためのレジリエンスの向上、セキュリティに関する強化などが加わっています。グリセンスウェイト氏は、Armアーキテクチャの技術革新は止まることはないと説明をつづけます。

次の10年間に向けたArmアーキテクチャの柱となる『Armv9』は、最も小さなマイクロコントローラーから大規模なサーバ用途まで、あらゆるデータライフサイクル上で使われるArm CPUに適用します。世界最速のスーパーコンピュータ『富岳』も富士通のArmベースのSoCで動作しているとグリセンスウェイト氏は実例を示しました。

事実、ネットワーク上のあらゆるデータに何らかの形でArmの技術が活用されていることを考えると、Armとそのエコシステムは、世界中のデータを処理するため最善のエクスペリエンスを提供しなければいけない大きな責務があるとグリセンスウェイト氏。これが『Armv9』に取り組んでいる理由だと言います。

『Armv9』では、デジタル信号処理と機械学習の幅広い適用可能範囲における演算能力の増強と、安全性、堅牢性の向上が図られています。『Armv9』のテクノロジーはArmアーキテクチャの3つのプロファイルである、一般的な演算を行う『Aプロファイル』、リアルタイムプロセッサの『Rプロファイル』、そしてマイクロコントローラーに特化した『Mプロファイル』のすべてに適用されます。

機械学習やAIがコンピューティングの大きなトレンドの1つになっており、今後エンドポイントデバイスのあらゆるプリケーションに適用され、2025年までには新しい業務アプリケーションの90%以上に組み込まれることになるだろうと、グリセンスウェイト氏は予想します。

また、『Armv9』アーキテクチャで定義されたCPUは、機械学習とデジタル信号処理の両方を向上させる新たなベクタ処理能力があります。これは富士通を中心に開発されたスーパーコンピュータ『富岳』に採用されたベクタ拡張をベースに構築しており、スーパーコンピュータに使われているコンセプトを幅広い製品に応用できることを意味します。

さらに『Armv9』には、機能強化されたスケーラブル・ベクタ拡張である『SVE2』が追加され、5GシステムやVR、AR、機械学習処理など多くのユースケースで最適に動作するようになっています。今後数年間でこの機能はさらに拡張され、CPU上でのマトリクス演算機能も強化されるでしょう。

セキュリティ面を見ると、Armはパートナーと協力してエンドポイントの設計者が利用できる標準的な脅威モデル『Platform Security Architecture』を提唱しています。この原則がクラウドの一部となるエッジデバイスに拡大され、さらに『ServerReadyプログラム』の一部にも含まれています。

今、世界中で使用されているデータの保護を意味する『コンフィデンシャル・コンピューティング』への関心が高まっており、近日中にこれに対応する『Arm Confidential Compute Architecture(CCA)』の詳細を公開するとグリセンスウェイト氏は話しました。

これには『Realms(レルム)』という、OSやハイパーバイザーとは本質的に分離された、信頼できる証明可能な少数の管理ソフトウェアを使用する概念が取り入れられています。例えばスマートフォンのOSが破壊されたとしてもデータを保護することができるようになります。

セキュリティの問題は、バッファオーバーフローやユーズアフターフリーといった旧式メモリの安全性の障害によって引き起こされていることがあります。この問題はソフトウェア内部に存在しているケースが多いとグリセンスウェイト氏は指摘。こういった問題を解決するため、ArmはGoogleと共同で『メモリタギング拡張』を開発しているのだそうです。

『メモリタギング拡張』とは2022年に提供開始される第1世代の『Armv9』CPUに不可欠の要素です。使用するためのソフトウェアサポートはAndroid11の一部、またはOpenSUSEに導入されています。

また、Armはケンブリッジ大学と共同で、ハードウェアがデータとアクセシビリティの情報を1つにカプセル化し、セキュアな構成要素を提供する『CHERIアーキテクチャ』を開発しています。これは『Digital Security by Design』というUKRIの大規模プログラムとなり、実証機である『Morello』はすべてのパートナーに提供されていきます。そして、このプログラムが成功すれば5年後には『Armv9』の主要コンポーネントに組み込まれます。

グリセンスウェイト氏は、現在の1800億個を超えるArmチップベースのデバイスから、次の3000億個のチップの未来を考えると、すべての共有データがArmを搭載したデバイスによって処理される世界になっていくと予想。そして、『Armv9』テクノロジーは今後10年間で世界が直面する課題に対応していくと明言しました。

Realms(レルム)がアーキテクチャを強化していく

英Arm オープンソースソフトウェア担当バイスプレジデント マーク・ハンブルトン(Mark Hambleton)氏

つづいて、オープンソースソフトウェアチームのリーダーを務めるマーク・ハンブルトン氏(以下、ハンブルトン氏)が登壇しました。はじめに、ハンブルトン氏は、『ServerReady』の成功につづいて、ArmではすべてのOSがArmベースのハードウェアで動作可能になるという最終目標を、まずCortex-Aクラスのハードウェアでどう達成するかを検討しはじめたと言います。『ServerReady』は、最小のデバイスから最大のデバイスまでArmエコシステムのあらゆるニーズをサポートするように設計されています。

コネクテッドデバイスが15~20年にわたって動作することを考えると、その期間はセキュリティアップデートができるようにしておく必要があり、これらのデバイスで標準OSを実行できるようにすることでOSベンダーはサポート期間を過ぎてもアップデートに対応できます。

Armが標準化に関して行った最も重要なものはファームウェアレイヤーです。ファームウェアが攻撃の対象となり、アクセスされたり、破壊されたりすると、システム全体への特権的なアクセスを盗られてしまう恐れがあります。

『Armv8』では、エコシステム全体がArmベースのSoCの安全な基盤として使用できるようオープンな開発を行って、Armが標準のセキュアファームウェアをリードしてきました。『Armv8-M』で行っている作業は、Platform Security Architecture(PSA)となり、現在ではCortex-Aクラスまで拡張。これにより、エンドポイントからクラウドまでがカバーされています。すでにPSAのAPIとサービスは公開されており、『OPTEE』『Hafnium』『mbedTLS』などとの連携も行われています。

『Armv9』時代になると、『Arm Confidential Compute Architecture(CCA)』が導入され、『Realms(レルム)』の実装が可能に。コンフィデンシャル・コンピュートはシステム信頼性強化のための根幹であり、データのホストになります。

『Armv9』アーキテクチャはレルムによって徐々に強化されていき、アプリがシステムの他の部分から保護された独自のレルムで実行できる環境を構築することで、到達不可能な重要なプライバシー保護が可能になります。これはロボット工学や自動車など、混在型クリティカルシステムに適用されることでメリットが明らかになっていくと考えられています。

Armはあらゆるコンピュートの未来であり、『Armv9』アーキテクチャは、私たちのデジタルライフのあらゆる側面において頼るべきプラットフォームとして信頼できる未来を用意しているとハンブルトン氏は話しました。

Armとパートナーは世界を変革している

英Arm 機械学習担当バイスプレジデント、ゼネラルマネージャー兼フェロー ジェム・デイヴィス(Jem Davies)氏

次に、ジェム・デイヴィス氏(以下、デイヴィス氏)が登壇しました。デイヴィス氏は、人工知能が提示する機会はかつてないものだと言います。そして、小型センサーから世界最大のスーパーコンピュータまでArmの需要が高まり、エンドポイントデバイスの成長は驚異的だと指摘しました。

現在、家電製品にArmプロセッサで動くニューラルネットワークを組み込むことで冷蔵庫に自律的に学習させ、操作条件に合わせて最適な電力消費となる調整ができるようになったとデイヴィス氏は言います。この機械学習によって、10%を上回る消費エネルギーの削減が確認されているそうです。そしてヘルスケア領域でも同様の効果が確認されています。

『Armv9』時代の10年でオンデバイスでの機械学習はさらに普及し、ArmのSoC上にあるAIによって様々なことが実現できるようになりました。そしてAIは農業革命も可能にし、作物を遠隔で監視するために先進的な土壌分析装置などを搭載したドローンを活用して、世界の食糧問題の解決にも貢献することができます。

ローカルのAI管理システムを利用すれば10%~20%のエネルギー削減が可能で、これを実現すると世界のエネルギー消費を2%削減可能です。これは本当にクールなことであり、Armとパートナーは世界を変革しているとデイヴィス氏は力をこめました。

マーケットが必要とする性能と品質を実現するテクノロジーを提供する

英Arm テクノロジー担当バイスプレジデント兼フェロー ピーター・グリーンハルチ(Peter Greenhalgh)氏

解説パートの最後に、Armの製品技術を統括しているピーター・グリーンハルチ氏(以下、グリーンハルチ氏)が登壇しました。はじめに、モバイル、自動車、インフラ等の試乗はワークロードが複雑化し、テクノロジーの進化は驚くべきペースで進行しているとグリーンハルチ氏は話します。

『Armv9』時代の10年間では、Armはマーケットが必要とする性能と品質を実現するテクノロジーを提供し、個々のIP(Intellectual Property)の改良だけでなく、提供するIPソリューション全体に及ぶテクノロジーを創出していきます。

一例として、CPUやシステム全体での一貫したセキュリティの提供や、ゲーミング性能の向上を目的としたCPUとGPUを通じた全体の性能最適化などがあり、その一部は2020年の『Cortex-X1』のリリースで体感することができます。

最近5~6年のArmのCPUロードマップを見ると、性能が大きく進化していることが分かります。これは業界平均を上回っており、モバイル市場では2016年の『Cortex-A73』以降で、現在出荷されている『Cortex-X1』に対して提供される性能は2.5倍です。

『Armv9』アーキテクチャに世代を移しても、このペースから減速しないとグリーンハルチ氏は話します。モバイルとインフラ分野の次の2世代でも30%以上の性能向上が予測されており、今後はモバイルだけでなく、ノートブックPCも同様の進化を見せていくことになります。ノートブックPCはモバイルよりも熱に対して許容範囲が広いため、CPU+GPU性能をさらに押し上げることができるためです。

Armはあらゆるマーケットにおいて、CPU性能を大きく持続的に向上させており、GPU性能とアーキテクチャをより向上させるテクノロジーを有しています。ArmはCPUだけに焦点を当てているのではなく、コンピュートのすべてを見ているため、『Armv9』時代ですべてのワークロード、市場、人々のためにアーキテクチャを拡大していくとグリーンハルチ氏は語りました。

この後も、活発な講演と対話が進み、『Arm Vision Day』は幕を閉じました。

次世代のArmアーキテクチャ

編集後記

2020年内には、具体的な姿を現してくるという『Armv9』。『Arm Vision Day』で示されるビジョンは、レネ・ハース氏が「わくわくしている」と語られたように、Armのテクノロジーを使って、どんな『未来』が見えるのだろう、と期待を感じさせるものだったと思います。

講演の後に質疑応答があり、イベント視聴者からは命令セットに関するものなど、踏み込んだ質問が寄せられました。熱気があり、『Armv9』への関心の高さを伺い知ることができました。

今、一定の年齢以上の方々は、ここ数年のデバイスの進化のスピードの速さに驚かされているばかりだと思います。Armとパートナーの作り出す、「さらなる素晴らしい未来」である『Armv9』の次の10年間をしっかり見ていきたいと感じられるイベントでした。

文:神田 富士晴

関連記事