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優秀なエンジニアは10億円プレーヤーも夢じゃない。個人投資家向けREST API発注環境「kabuステーション®API」の魅力とは

1999年の創業以来、「すべてのひとに資産形成を。」というミッションのもとで、様々な先進的取り組みを進めてきたauカブコム証券株式会社(以下、auカブコム証券)。創業直後となる2000年から提供している、国内証券会社では初となったサーバートリガー型自動売買「逆指値注文」をはじめ、株券等貸借取引へのAI技術の採用やビッグデータによる投資情報サービスの提供など、最新技術を活用した投資環境の改善を進めており、老舗のネット証券会社でありながらFinTechの先駆けになっている企業とも言えるでしょう。

そんな同社が掲げる大きな目標が、「機関投資家と個人投資家のインフラ格差解消」。ここ10年を振り返ると、個人による株投資はあまり増えておらず、市場は機関投資家がメインと言っても過言ではない状況が続いています。英国金融当局のレポートによると、HFT業者(高頻度取引事業者)の先回り取引が個人投資家の取引コストを17%上げ、50億ドルの損失を世界全体に与えていると分析しました。
(参考:Financial Conduct Authority(C))

だからこそ個人投資家のパフォーマンス支援を強化すべく、同社は2020年8月に国内証券会社で唯一となる、個人投資家向けRESTful API形式(以下、REST API)での高速発注環境として「kabuステーション®API」をリリース。個人の多様な技術バックグラウンドやオープンソースコミュニティのナレッジ蓄積を活かした、オリジナルの投資アイデアによるシステムトレードが実現可能となりました。

auカブコム証券はどのような未来を描き、kabuステーション®APIを提供しているのか。代表取締役社長である齋藤 正勝氏に、サービスへの思いや想定されているユースケースなどについて、お話を伺いました。

プロフィール

齋藤 正勝(さいとう まさかつ)
auカブコム証券株式会社
代表取締役社長
大学卒業後、野村システムサービスに入社。システムエンジニアとして働き、情報処理のスペシャリストとして一目置かれる存在になる。その後、第一証券、伊藤忠商事を経て日本オンライン証券(現auカブコム証券)を設立。一般社団法人日本STO協会副会長も務めている。

より自由度の高い形の投資環境ニーズが、かつてない程に高まっている

――機関投資家と個人投資家のインフラ格差、肌感覚ですがとてもよくわかります。

齋藤:ネット証券20年の歴史の中で、この格差がどんどんと大きくなっている印象です。そのような状況ですので、個人投資家の皆様から「機関投資家の方がいい道具を使ってるんじゃないか」とか、「良い情報を持っているんじゃないか」と見えてしまってもおかしくないと思います。

――いつからこのような状況になったのでしょうか?

齋藤:ここ10年ほどで一気に加速したと思います。
株式市場と個人投資家と機関投資家、それぞれの距離感がかなり縮まってきたという自負があった時期もありました。具体的には2005年〜2006年頃、ちょうどライブドア・ショックの頃ですね。当時は東証のシステムが古く、注文を出しても返ってくるまで3分近くかかっていました。つまり、インフラ環境格差のパフォーマンスへの影響はさほどなく、機関投資家も個人投資家もスピード感的には変わりませんでした。

それが、2009年に東証が「arrowhead」という株式売買システムを稼働させてから、取引環境が一気に高速化し、インフラ環境の格差が投資パフォーマンスの格差に直結するようになっていきました。
ここ5年間で見ると、ほとんどの株取引は機関投資家によるプログラミング売買です。圧倒的に早いですし、そうじゃないと勝てないからです。

――なるほど。御社でもそれに合わせて、証券基幹システムを「kabu.com API」として2012年に公開されましたね。

齋藤:金融サービスのオープンイノベーションの推進基盤として、様々な業態のサードパーティー事業者が、B2B2Cで個人投資家向けに色々な取引ツールを提供する環境を整備しました。kabu.com APIもシステムトレードによる自動売買が中心となっており、kabu.com APIを経由したお取引が相対的に好成績である状況が続いています。

より自由度の高い形の投資環境ニーズがかつてない程に高まっていると判断し、個人投資家の皆さまにも開放すべく、今回のkabuステーション®APIをリリースしました。

裁量取引を中心とする既存チャネル(青線)と、kabu.com API経由の取引(赤線)の投資パフォーマンスの比較(各取引チャネルの年間実現損益(千円単位)÷稼動口座数にて集計 (2020年は7月20日まで))

REST形式だからこそ実現すること

――改めて、kabuステーション®APIについて教えてください。

齋藤:kabuステーション®APIは、当社のインストール型のトレーディングツール「kabuステーション」を介して、自由に資産運用・資産管理を実施いただけるソリューションです。kabuステーションがインターフェースを公開することで、個人投資家は独自のアルゴリズム取引を実施したり、ポートフォリオ管理を行うことができます。

特徴としては大きく3つございまして、1つ目がREST API(Pythonをはじめとする開発言語に柔軟に応答するアーキテクチャに特徴をもつ、RESTの設計原則に従って策定されたAI)で柔軟な実装方式を提供していること。2つ目が専用のExcelアドインを提供していること。そして3つ目が、アイデアを共有できる開発者コミュニティドリブンであるということです。

――まず1つ目について、なぜRESTが大事なのでしょうか?

齋藤:こちらも主に2つの要因があるのですが、まず1つ目は、ユーザーの技術背景が多様化していることにあります。Web系や機械学習、データ解析など、技術バックグラウンドおよび学習言語が多様化していることから、REST形式による汎用性の高い実装が望まれました。

決算開示をはじめとするオルタナティブ・データや、非構造データなどの解析と組み合わせたトレーディング構築が、クライアントで単一言語で実装可能になるので、HFT業者が実装しているようなPythonを使った財務分析などが個人投資家でもできるというわけです。

――REST以外のAPIではダメなのでしょうか?

齋藤:例えば、FIX(Financial Information eXchange) APIのような従来型ですと、厳格なルールのもとで送受信両側のデータ解釈を合理化できるのですが、一方で「短時間で大量の金融データを送信する」という限定的な用途であることから、トレーディングで重要となる過去データの解析に利用できず、非金融のエンジニアには馴染みが薄いものとなってしまいます。

REST APIであれば、他のSaaS型Webサービスとの連携が容易ですし、GitHubなどのオープンソースコミュニティでのアイデアやコードの共有も可能になので、エンジニアにとってより汎用性の高い開発環境の構築が可能になります。C#、Python、Java、PHPなど、実装しやすいプログラミング言語を選択できます。

――なるほど。RESTが大切な理由、2つ目はいかがでしょう?

齋藤:今のお話と関連するのですが、昨今の金融データ解析現場においては、Pythonが主流になっています。多様なマーケットデータを取り扱うトレーディング用の分析は、深層学習などで用いられているPythonコミュニティとのネットワーク効果、そして親和性が高いと言えます。

一方で、分析レイヤーで達成された高度なロジックを実際のトレーディングに活かすには、RESTが必要になります。パターン解析などでTensorFlowなどのPython向け解析環境の充実が望まれるのですが、これらの開発スキルを受け止める発注環境を、既存の証券会社は用意できていませんでした。
だからこそ当社は先んじて、Pythonライクな環境構築も可能な環境を設計しました。

スキルレベルに応じた柔軟な組み方が可能

――REST APIの重要性についてよく分かりました。一方でお話を伺っていると、非常に高度なスキルをもった上級者だけが使いこなせるような印象なのですが、トレード初心者でも使いこなせるものでしょうか?

齋藤:もちろん、これまでお伝えしましたスクリプトベースでの提供方式に加えて、kabuステーション®API専用のExcelアドインも提供しています。ですので、普段の業務で使い慣れたマクロや関数など、Excelの諸機能を活かしてトレーディング環境を構築することも可能です。

また、kabu.com APIで協業いただいているサードパーティー事業者とも連携しており、汎用性の高いアルゴリズムトレードについては、サンプルとなるExcelシートの配信なども随時行っています。

――それは便利ですね。私のようなエントリーレベルでも十分に使えそうです。

齋藤:リテラシーの高い上級者からエントリーレベルの個人投資家まで、個人の開発スキルに応じた発注・コミュニケーション方式を提供しています。
また、それを支援するべくコミュニティ運営にも力を入れています。開発者ポータルでは、JavaScriptやPythonなどの主たる開発言語のサンプルコードを取得できますし、GitHub上のコミュニティで質問や要望のほか、投資ストラテジーやソースコードの共有もできます。

――GitHubでコードを公開・共有すると、ユーザーにとってはどんなメリットがあるのでしょうか?

齋藤:基本的には第三者が作成したプログラムの実行は禁止しておりますが、プログラムを公開、他者がそれを参考に自身のプログラムを作成できるということで、APIがシンプルに利用できるような簡易APIを公開、利用することを想定しています。それによって、「アルゴリズム取引環境の構築」の敷居を下げる効果があるとも考えています。

――慣れていない方は、まずはサンプルコードをベースに組み立てて、お金をかけずにシミュレーションをしてみるのもありですね。実際にどんなユースケースがあるのでしょうか?

齋藤:お客様のお取引スタイルによって異なってきますね。
例えば、「監視銘柄がゴールデンクロス(これから相場が上昇傾向になるかもしれないという買いサインのひとつ)した場合に発注」というような独自テクニカル取引であったり、他の外部APIと連携して「要人の発言内容に応じて銘柄Aを購入する」といったAIを組み合わせたアルゴリズム取引の実施が考えられます。また、お客様独自の資産管理を実施するなど、幅広い利用用途が想定されます。

デジタルネイティブ世代の投資参入など、大きな変化があった10年

――今回リリースされたkabuステーション®APIについて、よくわかりました。プロダクト自体の構想は、いつ頃から持たれていたのでしょうか?

齋藤:構想自体は、実は1999年の創業当初から描いていまして、本来ならば2012年にkabu.com APIをリリースしたタイミングに合わせて、翌年あたりを目処に個人投資家向けのAPIも出そうと思っていました。
ですが、売買審査や本人確認など、どうしても様々な段階を踏まなければならず、今のタイミングでのリリースになりました。
私としては「やっと出せた」という印象です。

――2012年というと、まだFinTechなんて言葉が日本にはなくて、金融領域でAPIを活用するなんて発想も、一種マニアックなアプローチだったと思います。何がきっかけでAPIベースのサービス開発を目指すことになったのでしょうか?

齋藤:直接のきっかけではないのですが、創業時からプラットフォーマー思考だったことが大きいと思います。AWSのようなサービスのあり方をみて、今後は自分たちが資産としてシステムを持たずとも、クラウドのSaaS型が前提になる。そんな考えから、当社の場合はネット証券をスーパーアプリ(LINEなどの様々なサービスを統合したアプリ)などに開放していこうとなったわけです。

そうしたら数年後あたりからFinTechという言葉が言われるようになって、それにはAPIがドライバーになるとのことでした。シェアリングやアジャイルの思想で設計をしていったら、結果としてAPIが最適解だったということです。

――kabu.com APIをリリースされた2012年と比較して、現在の投資環境をどのように捉えていらっしゃいますか?

齋藤:個人投資家にまつわる環境という観点ですと、色々な変化がありましたね。何よりも、デジタルネイティブ世代が投資に参入してきたことが大きいと思います。特にコロナショック以降の相場で口座開設数が大幅に増加したのですが、その過半数が、20代〜30代のデジタルネイティブ層でした。

アメリカですと、株投資アプリの「Robinhood」にミレニアル世代が集中していることも大きなニュースになりました。取引の標準化がしやすいFXや暗号資産を中心に、API専業証券やAPIのラッピング事業者なども発展しています。

齋藤:あと、プログラミング人口の増加も大きいですね。
国内IT人材の育成ニーズの高まりを踏まえてプログラミング教育の市場規模は急拡大が続いていますし、国策としても、学校の新学習指導要領でプログラミング教育の導入が決まり、ITスキルの底上げが加速しています。
このように見ていくと、テクノロジーの重心がよりユーザーサイドへとシフトしていってると言えます。

HFT業者との格差解消への取り組み

――様々な背景を経て構築されたkabuステーション®APIですが、公開されるにあたって気を遣われたポイントはどこでしょうか?

齋藤:多数のユーザーが自由にAPIにアクセスできるソリューションであり、意図しないシステム負荷やリクエストを受けることが想定されたため、その対策に時間を注ぎました。また、ユーザーがAPI利用によって意図とは反した注文を行うリスクを最大限削減することにも注力しました。

――自動売買できるが故に、意図しない注文が大量になさたら大問題ですからね。

齋藤:あともう1つ、このkabuステーション®APIリリースに照準を合わせて、当社の高速発注基盤である「RAIDEN」をJPXコロケーションエリアに移転して、取引所システムへの近接化による超高速化を実現しました。

――どういうことでしょうか?

齋藤:投資家の株の注文は東証ビルの外で処理されているのですが、個人投資家に対してHFT業者はコロケーションを利用するので、取引の執行環境に格差がある状況でした。
今回の移転によって、主要な取引所やSOR業者とデータセンター内での構内接続が可能になるので、より高い信頼性と高速化が実現し、個人投資家でもHFT業者と同等の環境で取引ができるようになるということです。

老若男女問わず、個人でも10億円プレーヤーを目指せる世界

――今後のkabuステーション®APIの展望を教えてください。

齋藤:今はシステムがクライアントインストール型なのですが、今後はWebブラウザベースのクラウド型にしていきたいと思っています。
これによって、特定の場所にとらわれずに、より自由に取引を行えることになるでしょう。

私自身、かつては証券システムのいちプログラマーだったからわかるのですが、日本は潜在的にプログラマーが多いものの、「誰かのための開発」がほとんどで、「自分のための開発」に時間を割いていません。非常にもったいないです。
先ほどもお伝えした通り、官民総出でプログラミング人材の育成を進めているので、データ解析スキルなども含めて、どんどんと活かせる環境が整っていくでしょう。

だからこそ、今のうちに「自分のための開発」に時間を使い、お金を増やすことに充当してみてはいかがでしょうか。20代の若い方から60代の定年退職者まで、老若男女問わず、個人でも10億円を目指せる世界です。
せっかくですので、ぜひQiita Zine読者から、10億円プレーヤーが出てきてほしいと思います!

kabuステーション®APIの概要

公式ページ : https://kabu.com/company/lp/lp90.html

項目 概要
対象商品 国内株式(現物・信用)、先物・オプション取引(2020年10月予定)
利用料金 無料※
提供API 情報系:時価情報、銘柄情報、4本値、板情報
発注系:成行・指値(IOC・SOR)等
参照系:注文照会、約定照会、残高照会
API形式 REST(発注系・参照系)、PUSH(情報系)

※kabuステーション® Fintechプラン以上の適用となること(信用口座開設かつ前月1回以上の取引にて無料)
※kabuステーション®APIのご利用には口座開設が必要です

スマートフォンから口座を開設する(最短翌営業日)

PCから口座を開設する(最短4営業日)

kabuステーション®APIを利用するための初期設定方法をみる

編集後記

10億円プレーヤーも、全くもって夢ではない。まさにジャパニーズドリームですね。一方で、投資はリターンがある分、当然ながらリスクもあるので危ないのでは?と感じる方もいるでしょう。
これに対し、齋藤さんは「日本人はリスクを“悪いこと”として考えてしまいがちなのが、もったいないところです」とおっしゃいました。つまり、管理の仕方がわからなかったり、感情起因で非合理な選択をしてしまうからこそリスクなのであって、感情を排除してロジックを組むことで、リスクおよびそれに対する不安を解消できるということです。

これまではそれを頭でわかっていたとしても、個人投資家では自動化などが難しかったわけですが、今回のkabuステーション®APIによって、誰でもその気になれば自動売買ロジックを組めるということです。
机の前にべったりと一日中張り付いてるデイトレーダーというイメージは、ニューノーマルにおいては過去のものとなるでしょう。

取材/文:長岡 武司
撮影:太田 善章


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