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本当の意味でのハイブリッドクラウド環境を実現する鍵に。名前は同じでも中身はずいぶん違う新生「Azure Stack HCI」

これまで、Windows Server 2019をベースとしたハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)として提供されてきた「Azure Stack HCI」ですが、名前はそのままに、新しい存在へ生まれ変わることになりました。この新生「Azure Stack HCI」が目指すのは、Microsoft Azureとの親和性をいっそう高めたハイブリッドクラウドソリューションです。

Azure Stack HCI Bootcampでは、さまざまな角度からこの新生Azure Stack HCIの特徴や構成・管理のコツを紹介していきます。第1回の「”New” Azure Stack HCIが実現する新しい Hybrid Cloudの形とは」では、日本マイクロソフトの佐藤壮一氏(マーケティング&オペレーションズ部門 Azure ビジネス本部 プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャー)が、Azure Stack HCIが新たに生まれ変わった背景と主な機能について紹介しました。

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オンプレミスとクラウド、両方の全体最適を考えて生まれた新生Azure Stack HCI

長年にわたって企業システムは、いわゆるサーバー(=コンピュートノード)に専用のストレージ機器とネットワーク機器を組み合わせて構築されてきました。しかし、個別に機材を調達するには時間がかかりますし、組み合わせの検証にも多大なコストとノウハウが必要です。そうした問題を解消する存在として生まれてきたのがHCIです。

Windows Server 2019をベースに、仮想化基盤である「Hyper-V」に、ソフトウェアの力を活用したSoftware Defined StorageとSoftware Defined Networkを組み合わせ、汎用的なサーバーに集約して提供する従来のAzure Stack HCIは、長年にわたって運用されてきたオンプレミスのシステムと、柔軟性、拡張性といったメリットを持つパブリッククラウドを橋渡しする手段、いわゆるハイブリッドクラウドの基盤として提供されてきました。

ただ、テクノロジを取り巻く状況は日進月歩で変化しています。佐藤氏は、新生Azure Stack HCIをリリースするに至った理由を次のように説明しました。

「これまでハイブリッドクラウドという言葉は、どちらかというとオンプレミス側に主軸を置きつつクラウドもうまく使いましょうという文脈で使われがちでした。しかし、テクノロジやソリューションが進化し、5Gやエッジコンピューティングの実用性が増している現在では、オンプレミスとクラウド、どちらかに重心を置いてもう片方もうまく使うという二者択一の考え方ではなく、両方ありきの考え方が求められています。両方の全体最適を図りつつ、その上で、ワークロードや取り扱うデータに対して個別最適を図っていくというのがハイブリッドクラウドだと考えています」

この考え方を実現するには、これまでのオンプレミス環境における手順やルールと、パブリッククラウド上のルールがバラバラのままでは困難です。「オンプレミスとクラウドでやり方がバッサリ変わるといろいろなところで破綻が起きるでしょうし、ガバナンスを効かせることも困難です。オペレーションミスの発生も懸念されます。ですから、一貫した管理基盤、一貫したガバナンス、一貫したセキュリティが絶対に必要です」(佐藤氏)

新生Azure Stack HCIはこうした考え方から生まれました。

Azureとの統合を強く意識した新OSを搭載

では、新生Azure Stack HCIにはどんな特徴があるのでしょうか。

1つ目の大きな違いはOSです。旧Azure Stack HCIはWindows Serverをベースにしていましたが、新生Azure Stack HCIでは新たに作られた専用OS「Azure Stack HCI OS」を搭載します。もちろんベースとなる統一コードは共通ですが、新たにAzure Stack HCI 向けのOSとして切り出され、最適化された形です。ただし、ハイパーバイザーであるHyper-Vに変わりはありません。

佐藤氏は、Azure Stack HCI OSの大きなポイントは「OS ネイティブレベルでAzureとのインテグレーションを進めていくことです」と述べました。

今マイクロソフトが力を入れている「Azure Arc」関連のコンポーネントがビルトインされます。アップグレード関連のコンポーネントも配信されるため、新たに何らかのエージェントをインストールしたり、追加で設定を行うことなく、可能な限りAzureとのシームレスな統合を図っているのです。

この延長線上にあるのが、「AKS on Azure Stack HCI」です。今、Kubernetesを用いたコンテナオーケストレーションが注目を集めています。AKSはそのKubernetesのAzure版で、アプリケーション開発者から好評を博しています。AKS on Azure Stack HCIは、それをオンプレミス環境で使うためのもので、すでにプレビュー提供が開始されています。ある意味「Azure Stack HCIがAzureのハイブリッドサービスに変わったことを象徴する1つのポイントでしょう」(佐藤氏)

ちなみに、これでWindows Serverが消えるかというとそうではありません。引き続き仮想化されたゲストOS上のWindows Serverプラットフォームとして、あるいはオンプレミス環境でActive Directoryやファイルサーバー、DNS/DHCPといったさまざまな重要な役割を仮想マシン上で提供するために進化し続けていきます。

一方Azure Stack HCIは、Azureと統合したオンプレミス側のプラットフォームとして進化していきます。Azureとのハイブリッドサービスという意味でオンプレミス側に導入されるソリューションという点に変わりはなく、OEMパートナーから提供されるハードウェア上にインストールされる点も変わりません。

新生Azure Stack HCIにはほかにも、

  • ライセンス購入から、サブスクリプションによる課金管理に
  • 従来のEULAから、Azureのオンラインサービスタームに
  • 従来の製品単位のサポートから、Azureサポートの対象内に
  • バージョンによるアップグレードから、クラウドサービスとして継続的な機能更新に

といった変化が生じます。これに伴って、アップデートやライセンス管理の扱い、サポート体制が統一化され、非常に便利になると期待されます。

Azure Stack HCIがAzureのサービスとして提供されることにともなう象徴的な変更の1つが、「Extended Security Update」(ESU)、いわゆる延長セキュリティ更新プログラムの提供です。基本的に有償サポートという位置づけのESUですが、新生Azure Stack HCIは「Azureのハイブリッドサービス」という立て付けに変更されたため、晴れて無償で使えるようになります。

Azure Arcによる一元管理と多彩な新機能の活用を可能に

前述の通り新生Azure Stack HCIは、「オンプレミスありきでクラウド」や「クラウドありきでオンプレミス」ではなく、両方の全体最適を取るというAzureのハイブリッドクラウド戦略に沿って生まれたものです。

この戦略のポイントは2つあります。1つは、パブリッククラウドであるAzureから「Azure Arc」による一貫した管理基盤の元で多様なサービスを提供していくこと。もう1つは、Azure Stack HCIだけでなく、Azure Stack HubをはじめとするAzure Stack Familyのポートフォリオを活用して、オンプレミス側の環境を最新化していくことです。さらに、IoTやエッジコンピューティングも視野に入れています。

戦略の中で重要な鍵を握るのがAzure Arcです。Azure Arcは、Azure上の管理基盤を利用することで、場所を問わずにすべてのインフラを一元的に管理する機能を提供します。そして、Azureが提供する様々なマネージドサービスをAzure外でも使えるようにする「Azure Arc Enabled Service」を実現します。

「クラウドとオンプレミス両方ありきで考え、クラウドのパワーをエッジコンピューティングも含めさまざまなところで使えるようにして、よりいろんなことができる世界にしていく、その世界観を体現したのがAzure Arcです」(佐藤氏)

新生Azure Stack HCIは、このAzure Arcとの連動性を強く意識したハイブリッドクラウドソリューションになっています。今後予定されているAzure Arc Enabled Serviceを動作させるプラットフォームとしても、大きな位置を占めることになるでしょう。

そのことは、Azure Hybrid Stackの全体像を見ればよくおわかりいただけるでしょう。一番基盤となるハードウェア部分には、これまでも協力してきたパートナーとのエコシステムがあります。こうしたさまざまなサーバー上でWindows ServerやHyper-Vが、そして新たにAzure Stack HCI OSが動作するようになり、その上で仮想マシンとしてWindowsやLinuxが動きます。あるいは、AKS上でコンテナプラットフォームを動かし、さまざまなコンテナを動かすこともできるでしょう。

なお、これまでも提供されてきたAzure Stackファミリーとの違いですが、「Azure Stack Edge」は、エッジコンピューティングに特化したクラウドマネージド型のアプライアンスになります。一方、「Azure Stack Hub」は、Azureと互換性を持った環境を、自身が主権を持った形で運用できるプラットフォームで、完全にオフラインな環境もサポートしています。

新生Azure Stack HCIはこの2つのソリューションの間に位置し、Azureと定期的に接続しながら、Azureのいろいろな可能性をオンプレミス側にも広げるための汎用的なプラットフォームです。従って、前述の通りAzureやAzure Arcとの強い統合が意識されています。従来通りにWindows Admin Center、System Centerやこれまでお使いの管理ツールで管理することもできますし、Azure Arcを用いて、クラウドの良さをオンプレミス環境やエッジコンピューティングで発揮させることもできます。

つまり「新生Azure Stack HCIは、単純にWindows Serverから専用OSになっただけの新しいHCIではありませんし、単純なAzure Serviceでもありません。新しいプラットフォームなのです」(佐藤氏)

AKS対応をはじめ、継続的に追加されていく新機能

新生Azure Stack HCIの大きなポイントは、Azureとネイティブに統合していくことです。ですから、追加設定などを行うことなくAzure Arcで提供されている様々な機能を利用できますし、Azure Portalからの一元管理もできるようになります。


実際にデモ画面を見るとおわかりいただけるとおり、オンプレミスで作ったAzure Stack HCIをサブスクリプションに紐付けると、Azure Portalからその情報を、パブリッククラウド上のインスタンスと同じように把握し、管理していくことができます。今後、更新管理などさまざまな機能を追加し、Azureとの統合をさらに強めていく予定です。

たとえば、パブリッククラウドのAzureポータル上からAzure Arcの機能を使い、Azure Stack HCI上の仮想マシンをセルフサービスする機能の提供が予定されています。IaaS上に仮想マシンを作成するのと同じような感覚で、サブスクリプションに紐付けられたオンプレミスのAzure Stack HCI上の仮想マシンを展開する、といったことが可能になる予定です。

また、すでにアナウンス済みのAKS for Azure Stack HCIを利用すれば、パブリッククラウドとオンプレミス環境にまたがってコンテナアプリケーションのポータビリティを実現し、より価値の高いアプリケーションを開発できるようになるでしょう。

もう1つだけ予定機能を紹介すると、「Fleet Scale monitoring in Azure portal」があります。これは、Azure Portal上で複数のAzure Stack HCIクラスタを一元管理する機能で、たとえば多数の拠点を抱えている環境やIoTデバイスを活用してエッジコンピューティングに取り組んでいる環境などで便利だと思います。

このようにマイクロソフトでは、継続的にAzure Stack HCIに投資し、機能追加を行っていく予定です。

さて、このAzure Stack HCIがいくらで使えるのか、というのも気になるところでしょう。料金体系は非常にシンプルで、1物理プロセッサコアあたり月額10ドルという価格設定になっています。ただしこれはホスト部分の料金のみで、ゲスト部分は別途費用が必要です。また、完全なオフライン利用は不可能で、最低でも30日に一回はAzureに接続して、稼働中のコア数を通知する必要があります。ただ「コストは非常に予測しやすいですし、集約率を上げていくことによって、よりコストパフォーマンス良く使っていただくことができるでしょう」(佐藤氏)

Azure Stack HCI――名前は同じですが中身はずいぶん異なることがおわかりいただけたでしょうか。広範な選択肢が用意されているハードウェアを利用して、新しいハイブリッドフォーカスなOSをベースに、Azure Arcと連動する形で利用できる新しいプラットフォームです。ぜひ利用を検討してみてください。

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文:高橋睦美

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