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「エンジニアとしての価値観を変え続ける会社でありたい」稲垣裕介氏×竹内秀行氏が語るユーザベースのあり方とは

ユーザベース稲垣氏、竹内

企業・業界情報プラットフォーム『SPEEDA』やソーシャル機能を兼ね備えた経済ニュースプラットフォーム『NewsPicks』が注目を浴び、2016年10月にマザーズ上場を遂げたユーザベース。

「経済情報で、世界をかえる」

このミッションに基づいた破竹の勢いは留まることを知りません。2016年12月、ジャパンベンチャーリサーチを買収。日本最大級のスタートアップデータベース『entrepedia』の運営を開始し、2017年5月には、B2Bマーケティングプラットフォーム『FORCAS』をリリースしました。

こうしたサービスの躍進をサポートしているのは、同社のテクノロジーに他なりません。では、そのテクノロジーの担い手であるエンジニアたちが働くユーザベースとは、どのようなカルチャーや思想を持った組織なのでしょうか。

その実際を紐解くべく、代表取締役(共同経営者)を務める稲垣裕介氏とチーフテクノロジストを務める竹内秀行氏のお二人にお話を伺います。お二人にお話を聞ける貴重な機会ということで、取材テーマにはあえて「エンジニア組織が直面する課題」を用意して質問をぶつけてみました。

目次
“尖った”エンジニアが活躍する組織には何が必要?――「『自由にさせられるかどうか』に尽きます」(稲垣)
代表取締役が技術者である方が働きやすい?――「エンジニアやテクノロジーへの投資に理解があると楽」(竹内)
新技術は積極的に実践導入すべき?――「プロダクトに合った技術を選ぶ」(竹内)/「迷ったら楽しいと思う方を選ぶ」(稲垣)
優秀なエンジニアに高給を支払うべき?――「(特定の職種に関わらず)十分な価値を発揮して、お金を稼いでくれるのであれば払うべき」(竹内)

“尖った”エンジニアが活躍する組織には何が必要?――「『自由にさせられるかどうか』に尽きます」(稲垣)

稲垣裕介

稲垣裕介・代表取締役社長(共同経営者):豊富なシステム技術の知識、経験を基に株式会社ユーザベースを共同創業者の梅田氏と新野氏と共に設立。2017年より株式会社ユーザベースと株式会社ニューズピックスの代表取締役に就任。

――優秀なエンジニア採用はできたものの、定着率が低いという問題を耳にするケースがあります。こうした「“尖った”エンジニアが活躍する組織には何が必要」だと考えますか?

竹内:組織の話をする前に、尖ったエンジニアや優秀なエンジニアの定義とは何か? の話からしたいです。個人的には、技術だけがすごいという人ではないと思っています。会社に勤めるのであれば、お金につながるかどうかの意識が大切です。

これは、すぐにマネタイズするという意味ではなくて、5年後でも10年後でもいいんですけど、そこに向かっていける思考と行動力がなければ、優秀だったり尖っているエンジニアとは言えないと思うんです。

稲垣:ビジネスなので価値に紐付いていなければいけない。ビジネスにおいて、技術は「HOW」として非常に重要なものですが、目的ではないので。企業に所属して仕事をするのであれば、自分の技術力を使ってビジネスを成長させていくことに興味や関心を持って、結果を残す必要があります。

また、冒頭の質問である<活躍する組織に何が必要か>については、僕の答えは極めてシンプルです。「自由にさせられるかどうか」。ここに尽きます。規律性を高めて、縛れば縛るほどエンジニアは働きづらくなるんじゃないかな?

竹内:そうですね。

稲垣:組織としては尖った人のために、余計な仕事は排除した方がいいと思うんです。僕と竹内もそういった関係で仕事をしてきました。彼はいろいろなことができるエンジニアですが、プロダクト作りに集中してもらった方が会社としてメリットが大きい。なので、昔から竹内にとって余計な仕事は僕が引き取っていました。エッジの効いたエンジニアが活躍する組織には、マネジメントができる人材も必要だと思いますね。

竹内:最近、CTO(Chief Technology Officer)とVPoE(Vice President of Engineering)に分かれていた方がいいよね? って話が出ていますが、ユーザベースははじめから稲垣がVPoE的なものを、私がCTO的なものを担ってきました。振り返ってみるとバランスが良かったんですよね。

代表取締役が技術者である方が働きやすい?――「エンジニアやテクノロジーへの投資に理解があると楽」(竹内)

竹内秀行氏

竹内秀行(チーフテクノロジスト):2008年に稲垣氏と知り合いユーザベースの創業期に参画。『SPEEDA』『NewsPicks』『FORCAS』の設計・開発を担当。

――ユーザベースは、稲垣さんがエンジニア出身で代表取締役ですが、「代表取締役が技術者である方がエンジニアは働きやすい」と思いますか?

竹内:弊社の場合、稲垣は2017年に代表取締役になったばかりで日が浅いので、代表がエンジニアであるから働きやすいか? というのはなんとも言えません。ただ、これまでを振り返ってみても、創業者の中にエンジニアやテクノロジーに対しての投資に理解のある人がいると楽だなというのはあります。

稲垣:どの投資にも言えることですが、会社全体の財布からお金を使う以上はきちんと必要性を説明すること。これさえしてくれれば、必要なことにはどんどん投資していきます。エンジニアのために本を数百冊購入したり、開発しやすいように実験用のサーバを調達したりと。高額過ぎると考えますけどね(笑)。

竹内:エンジニアやテクノロジーに対してちゃんと投資をする会社にしていくなら、経営陣の中に技術を理解している人が一人だけでは難しいと考えています。他の経営陣に納得感を持って説明するためにも、二人以上いた方が望ましいんじゃないですかね。

稲垣:確かに有限である予算をどこに投資するのかという議論は大事な点ですね。ユーザベースって私と梅田(代表取締役社長/共同経営者・梅田優祐氏)と新野(取締役・新野良介氏)の3人で創業した会社なんですが、この二人は投資銀行出身なんです。

事業展開を僕を含めた3人で決めてきた中で、途中から執行役員制度を導入して、エンジニアや編集などのメンバーにも経営会議に入ってもらうことにしました。それによって多様性が増して経営の意思決定の幅がより広がったと感じています。さらにそこで見えてきたのは、いろいろな才能を持った人たちを掛け合わせることが、エンジニアの働きがいにもつながっていくんだなって。

――興味深いです。いろいろな才能を持った人たちを掛け合わせるというのは、具体的にどういったものになるんでしょうか。

稲垣:例えば『NewsPicks』のエンジニアは「編集のメンバーがすごく尖ってて、この尖ったメンバーと一緒に仕事できることが何より楽しい」と言っているんですね。

エンジニアと編集者。ポジションは違いますが、編集チームを彼らは誇りに感じているんです。これは逆も然りで。編集の世界で生きていると、エンジニアが横で働いている環境というのは少ないですよね。

「全く違う才能が掛け合わさることによって生まれる新しい価値を世の中に提供できている」というのが、ユーザベースでの働きがいにつながっているんです。

竹内:エンジニアだけの環境で閉じてしまうのってエンジニアにとっても楽しくないし、刺激も少ないと僕は思っています。それよりも、いろいろな人とコミュニケーションしながら事業を推し進めていくことが楽しいんですよ。

稲垣:ユーザベースは営業同行しているエンジニアも多いんですよ。『NewsPicks』の経済ニュース番組『LivePicks』でも、放送が止まったらアウトなので毎週フジテレビまでエンジニアが行っていますし。アナウンサーの方を拝見できてテンション上がってるみたいですけど(笑)。

竹内:『SPEEDA』だけの頃から、お客さま先に行って問題の対応をしつつ、どういう使われ方をしているかとか聞いたりしていましたよね。お客さまが金融機関で、だいぶ環境が違って、ビックリしたりもしました。

――エンジニアとしては、技術以外の経験も積んだ方がいいということでしょうか?

竹内:そこは人によって考え方が違うと思います。中には、自分の技術をエンジニアから評価されたい方もたくさんいるので。でも、僕はそれって本当に面白いのかな? 正しいのかな? って、思うんです。

お客さまのところに行って、お客さまから評価されるのって面白いし、楽しいんですよ。エンジニアだけから感謝されるより、より多くの人から感謝される方が、うれしいんですよね。

稲垣:実際にお客さまのところへ行かないと分からないことってありますよね。お客さまから直接ご指摘をいただくと「ハッとする」気付きってあるじゃないですか。「使う人の目線で開発をしなければならない」って、一気にマインドセットが変わったりする。

そういった体験のないエンジニアが、ユーザベースに入社して意識が変わったという話もあります。ユーザベースで働くことで「エンジニアとしての価値観が変わった!」とインパクトを与えるような体験を提供できる会社でありたいと思います。

新技術は積極的に実践導入すべき?――「プロダクトに合った技術を選ぶ」(竹内)/「迷ったら楽しいと思う方を選ぶ」(稲垣)

稲垣裕介氏竹内秀行氏

技術選定については「新旧問わずプロダクトに合ったものを選ぶ」というのがお二人の共通見解。

――価値観が大きく変わるくらいの仕事ができるというのは、とても共感できるポイントだと思います。では技術面についても質問させてください。プロダクトを作る上で、「新技術は積極的に実践導入すべき」だと思いますか?

竹内:2つあります。まず、新しいか古いかではなく、プロダクトに合ったものを選択した方がいいということ。次にその技術が5年、10年という長期スパンで見た時でも通用する技術なのか見定めるということです。

こうした考えを持って、ユーザベースでは新しい技術を積極的に取り入れていますし、必要に応じて歴史のある技術も選択しています。

稲垣:この質問に竹内が答えた以上の回答はありません。ただ、僕としては迷ったら楽しいと思う方を選ぶでいいんじゃないかなって思います。最後は技術選定したエンジニアが「この技術を自分が選んだんだ」と強い意思を持って、楽しんでやれる方が良いものづくりができるんじゃないでしょうか。

竹内:それも大事ですよね。昔は僕が全ての技術選択をしていましたが、今はメンバーから相談を受ける側に回っていて。「楽しみながら、責任を持って最後までやれるんだったらいいんじゃない?」って答えているので。

――メンバーの主張を受け入れるスタンスなのですね。

竹内:ええ。ただし、「オープンソースの開発が止まってしまった場合、そのメンテナンスを自分自身で続けられるのか? この点も考えた方がいい」とは伝えています。

稲垣:厳しいですよね(笑)。

竹内:できればそこまで見据えて技術は選ぶべきだということです。

――竹内さんにお聞きしたいのですが、変化の波が激しい技術サイクルの中で5年、10年先を見据えるために必要な判断基準はどのようなところにあるとお考えですか?

竹内:一番はコンピュータ・サイエンスの基礎です。技術の根幹を理解していれば、上っ面の部分は入れ替わっても問題ないですから。これは、基礎がちゃんと分かってない人が作っているのであれば、採択しないということにもつながります。

一人のエンジニアとしてコンピュータ・サイエンスに関しての信念を持つこと。そして、その信念に沿っているのか? という自問自答を繰り返していくことが、技術選定には大切だと思いますよ。

――実際、ユーザベースのエンジニアは、竹内さんのような技術選定の肌感に長けている方が多いのでしょうか?

竹内:ジュニアなメンバーもいるので、もちろんみんながみんなそういうわけではないです。僕も適宜アドバイスしている感じなので。最近は、Mozilla発のRustという言語について社内で話題になりました。Rustってメモリ安全性をうたっているとはいえ、言語レベルでGCがないんです。

なので、「書き方によっては、メモリーリークが起きるプログラムを書いてしまう可能性があるんだけど、その用途で使って大丈夫? はじめにGCってどういう歴史から生まれて、どういう問題を解決しているのか調べてみた方がいいよ」とか。そう考えることで、もしRustを使った時に何に気を付ければいいかが分かります。

稲垣:その点に関しては、それぞれが話し合いながら進めればいいかなって思うんですよね。役員クラスのエンジニアも増えてきたので、一人のエンジニアが全てを抱え込む必要もないわけですし。

――『FORCAS』の技術構成を見ると、サーバサイドKotlinやVue.jsなど、積極的に新しい技術を取り入れている印象がありました。こうした竹内さんの思想が浸透して取り入れられていたのですね。

竹内:あっ、Vue.jsは僕の趣味です(笑)。『FORCAS』だけではなくて、『SPEEDA』や『NewsPicks』でも部分部分でVue.jsを使っています。3年くらい前から使いはじめて、それが最近になって流行りはじめたので良かったなって。

――そういった選択もあると(笑)。ただ、社内で使える人が限られる新しい技術って、退職者が出た場合にメンテナンスに支障が出るなど問題が生じるケースもありますよね。この点は経営判断としてはいかがでしょう?

チャレンジする土壌ができてきたと語る稲垣さん。ユーザベースの価値観を明文化した「7つのルール」の「迷ったら挑戦する道を選ぶ」にも通じる話。

稲垣:今はもうそこに臆することはないですね。以前は竹内がエンジニアとして特出していたので新しい技術を取り入れた場合、他のメンバーがついてこれないのではないか、と考えることはありました。

その頃はメンバーから「やりたい」という声が挙がっても、本当に責任が取れるのか? プロダクトにとって最良の選択であると言えるのか? と問い掛けると、自信を持ちきれなくて取り下げたりも多かったんですけど、3年前くらい前からかな。

それでもやるという気概がメンバーから出てきて。徐々にボトムアップでチャレンジする土壌が定着した印象があります。

――組織カルチャーになっていったということでしょうか。

稲垣:そうですね。これは本当にカルチャーと言っていいでしょう。責任を持ってチャレンジしてみて、上手くいかなかったとしてもチームとして対応して次へつなげる。この土壌を作ることに時間を掛けたので、新しい技術にも臆さず取り組んでいける組織になりました。

竹内:「新しい技術にチャレンジしたいけれど、責任が伴うとなるとちょっと…」というような方もいるかもしれませんが、それについては「責任が伴うと、エンジニアの仕事ってもっと面白くなるよ」と伝えたいですね。責任が取れるからこそ深くコミットできるし、頑張る張り合いも出てきます。

優秀なエンジニアに高給を支払うべき?――「(特定の職種に関わらず)十分な価値を発揮して、お金を稼いでくれるのであれば払うべき」(竹内)

給与以外でのやりがいとなる指標を伺うと、竹内さんからは「自分の作りたいものを作ること」という答えが。

――技術選択について貴重なご意見ありがとうございます。それでは最後の質問になります。「優秀なエンジニアに高給を支払うべき」でしょうか?

竹内:これは明確ですね。十分な価値を発揮して、お金を稼いでくれるのであれば払うべきでしょう。ただ、ユーザベースという視点でいくとエンジニアだけじゃなくて、他のポジションにもちゃんと払わなくてはいけないと思っています。特定の職種にだけ予算を掛けるのもバランスを欠いた話になってしまうので。

稲垣:僕たちが目指している世界観としては、会社全体としての給与水準を上げるということです。エンジニアだから特別扱いするというのは価値観が違うかな、と思いますね。

竹内:とはいえ、ユーザベースでは経営陣含めた全社員の中で僕が1番給与が高かった時期もありましたよね。

稲垣:僕や他の創業者よりも高かった時期がありましたね(笑)。当時ユーザベースにとって新しい異能である竹内を採用するために、彼のフェアな給与を払えるレベルに会社の成長が追いつくまでは(竹内氏を)給与テーブルから外したんですよね。

竹内:そうそう。だから会社として優秀なエンジニアに対して、高い給与を支払うかと聞かれると、支払うという答えになります。

稲垣:ユーザベースにとってフェアであることはとても重要ですが、新しい異能つまりマイノリティに対する一時的な手当ては柔軟に対応するべきだとも考えています。そして、最終的には職種に関わらず、全員が平等に高い利益を享受できる世界にしたいということですね。

――補足でお伺いしたいのですが、給与に限らない、仕事のやりがいを持つためにはどういった考え方が必要でしょうか?

竹内:「自分の作りたいものを作る」ということでしょうか。ちゃんと自分のものだと捉えてプロダクトを作っている方が面白いし、自分が育てているという実感も持てるはずです。エンジニアとしてのQOL(quality of life)も高まっていくと思います。

稲垣:経営者目線だと「お金がなくてもハッピーだったらいいよね?」って、絶対に言ってはいけないと思うんです。仕事をする上での楽しさと給与のバランスをユーザベースでは大切にしていきたいんです。これは、設立からの10年でようやく市場で見ても見劣りしない給与テーブルを海外含めた全メンバーに適用することができました。さらに今後も継続して取り組んでいきたいと思っています。

――ありがとうございました。最後にこの記事を読んでいるエンジニアに向けてメッセージをお願いします。

竹内:ユーザベースでは、エンジニアだけでなくて、いろいろな職種で優秀な人たちが揃っているから面白い。これは昔から変わっていません。また、使っている技術がプロダクトによって大きく違うので、そこでも多くの経験を積むことができるでしょう。

稲垣:ユーザベースグループとしては連結で、『SPEEDA』は約200人、『NewsPicks』は100人ほど。『entrepedia』、『FORCAS』は約35人規模のチームになっています(2018年2月時点)。

各プロダクトで意思決定を完全に独立させる経営をしているので、同じユーザベースというグループ会社の中でも、スタートアップ的な環境で挑戦することもできるし、大規模のチームでも仕事ができます。これから新しいプロダクトにもどんどん挑戦していくので、そのタイミングで創業メンバーとしてCTOという役職にチャレンジすることもできます。

海外にも拠点を持っており、『SPEEDA』はアジア、『NewsPicks』はUSに展開しています。各拠点の人員を増やしていきたいと考えているので、グローバルに興味がある方にも応えられるフェーズになっています。

ぜひお気軽にご応募ください。

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当記事と対となる企画、ユーザベース開発メンバーへのインタビュー記事をこちらからご覧いただけます。
ユーザベース開発現場の思いが伝わる内容となっています。併せてご覧ください。

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