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ウェルスナビのAIグループ長が考える「ものづくりする金融機関」のあり方とは

「働く世代に豊かさを」というミッションのもと、日本の働く世代の豊かな老後に向けた資産形成をサポートするウェルスナビ株式会社(以下、ウェルスナビ)。政府による「貯蓄から投資へ」の積極的な政策等が展開される中、国内における資産運用の認知拡大と普及に向けて事業展開を進める同社の開発組織のあり方について、これまで2回に亘ってVPoEおよびソフトウェア開発を主管する執行役員にお話を伺ってきました。

▶︎IPO推進経験が豊富なウェルスナビ・VPoEが語る、エンジニア組織の魅力と事業のポテンシャル
▶︎創業フェーズでジョイン、ゼロからプロダクトを開発したメンバーが見てきたウェルスナビの変遷と面白さ

ウェルスナビでは2023年7月に「AIグループ」を組成し、生成系AIの活用を踏まえて、AIの研究開発を積極的に進めています。具体的にどんな背景でAIグループが立ち上がり、どのような未来を目指して取り組みを進めているのか。AIグループ グループ長の上杉 忠興氏にお話を伺いました。

プロフィール

上杉 忠興(うえすぎ ただおき)
ウェルスナビ株式会社
AIグループ グループ長
2023年4月にデータサイエンスグループ(現AIグループ)のグループ長として入社。理論物理学で博士号取得後、大手SIerで上(コンサル)から下(インフラ)まで幅広くこなした後、同SIerと大手Web事業者で10年以上のデータサイエンス担当者及び責任者を経験。機械学習や数理最適化を用いてKPI最大化問題を解決してきた。現在は主に「AIモノ作り」に挑戦中。

ウェルスナビのミッションに強く共感して入社

――まずはじめに、ご経歴について教えてください。

上杉:理論物理学で博士号を取得したあと、大手SIerの研究開発部門および事業部門に合計13年ほど在籍して、ハードウェアからネットワーク、セキュリティ、ミドルウェア、アプリ開発など、様々なことを行ってきました。後半の6年間でビッグデータのデータ分析コンサルに従事したことをきっかけに、データサイエンスの本場であるWeb事業者の楽天グループに移りました。

そこでデータサイエンスの責任者を7年間務め、機械学習や数理最適化を用いてKPI最大化問題を解決してきました。そのあと2023年4月にウェルスナビに移り、現在はAIグループのグループ長として「AIモノ作り」に挑戦しています。

――様々なご経験をされてきたのですね。ウェルスナビに入社された理由は何ですか?
上杉:楽天グループに所属していた際の知り合いが、すでにウェルスナビで働いており、熱心に誘ってくれたことがきっかけです。

またウェルスナビのミッションにも共感していました。私自身、10年以上の資産運用を通じて、お金のゆとりは人生のゆとりにもつながることを体感してきました。一方で友人知人に聞くと、意外にも資産運用をしている人が少ないことに疑問を抱いていました。

そのような経験や考えがあった上で、ウェルスナビであれば資産運用を普及させられるなと、会社のミッションと自分の想いがフィットしたことも理由の一つです。また前職までは大きな企業だったので、比較的小さめの会社で新しい経験をしてみたいというのもありました。

人と区別がつかないAIフィナンシャルアドバイザーの実現に向けて

――2023年7月に発足した「AIグループ」は、どのような背景で立ち上がった組織なのでしょうか?

上杉:新しく立ち上がったというよりは、組織の名称変更と説明するほうが適切です。もともとウェルスナビが成長してきた次のフェーズとして、データの利活用が重要な戦略的アジェンダになっており、「データサイエンスグループ」という組織が存在していました。私がジョインした時の肩書は、データサイエンスグループ長でした。

データを戦略的に活用するということは、大きく2つの観点があると考えています。1つ目は、例えばマーケティングなどの領域で適切なターゲットに対して広告を打ったり、プロダクトのUI・UXや検索結果を改善することで、売上や利益等のKPIを少しずつ上げていく「最適化」の観点です。そしてもう1つは、新規の事業や既存サービスの新機能を開発するという観点です。今後は、生成系AIの登場によって、後者がより重要になってくるだろうと考えた結果、データサイエンスグループからAIグループという名称に変更することにしました。

――特に最近は「生成AI」の登場によって、様々な議論や取り組みがされているかと思います。AIの活用に対して考えていることをお聞かせください。

上杉:組織のヘッドをやる上で一番重要なことは、技術を使って、最終的に事業視点で何を目指すのかという目的設定にあると考えています。データもAIもあくまで手段にすぎないため、ウェルスナビが何を実現するのかが大事なポイントです。それで、今後私たちは何を目指すべきだろうと考えた結果、「雑談力と共感力をもつ、人と区別がつかないAIファイナンシャルアドバイザーの実現」というビジョンに至りました。

AIファイナンシャルアドバイザーを目指すということは、資産運用に限らず、お金にまつわるあらゆる相談ができるAIを作る、ということです。例えば、オンライン通話で、家計相談をしていた相手が「人ではなくAIだった」という世界を作って行きたいと考えています。

もちろん短期的に実現できる話ではありませんが、言語、音声、動画という順番で、マイルストーンを設定し、少しずつ進めていきます。現在はLLMで何ができるかの研究/検証を進めている段階です。

AIグループ長が考える、AIを活用する際の重要な論点

――LLMの研究開発を進めるにあたって、具体的にどのようなことが課題として出てきている状況なのでしょうか?

上杉:現在多くの会社がChatGPTなどを活用したPoCをされていると思いますが、多くの企業が突き当たる課題は、大きく3つあると考えています。1つは対話の精度です。会話が不自然だったり、何かしら有害なことを言ったり、自信満々で嘘をついたりすることなどが挙げられます。

続いてはコスト。高価な半導体を使って複雑な深層学習をしていて、ものすごいコンピューティングパワーを使っているわけですから、当然それなりに大きな資金が必要です。そして最後は応答速度。大規模なモデルであるが故に、なかなか返答が戻ってこないということもあるでしょう。

この3点は、大抵の企業は共通で直面していると思います。

上杉:これら以外にも、世間ではあまり語られない重要な課題が2つあると考えています。1つはQAについて。生成AIの場合、品質保証の再定義が必要と考えています。

ご存知の通り、きちんとした開発プロセスをもつ会社であればQAのプロセスがあり、そこを通らないと製品を出荷できないようになっています。ここでのQAの基本的な考え方としては、インプットに対する期待アウトプットを元にテストを考える、ということでしょう。しかし生成系AIは、必ずしも同一のアウトプットではありません。よって、何をもってOKとするかを定義するのが非常に難しく、新たにAI版のQAを作っていく必要があると考えています。

――たしかに。従来のQAプロセスには乗っかりにくいですね。

上杉:それからもう1つは、チャットボットの対話にゴールを持たせる必要があります。先ほどファイナンシャルアドバイザーをAIで実現するとお伝えしましたが、最初に着手するのはチャットボットです。現在の一般的なLLMだと「ユーザーの質問に、都度、反射的に、回答する」だけなので、AIにとって、対話に目的とゴールは存在しません。

他方で、私たちには、AIを通じて、お客様にウェルスナビを使ってほしい、という明確なゴールがあります。初回利用してもらうとか、既存のお客さまには積立投資に変更してもらうとか、継続利用してもらうとか。そのようなゴールをチャットボットに持たせる必要があると思っていまして、そこがウェルスナビのミッションを実現するための戦略的課題と捉えています。詳しくはこちらのブログでも説明しているのでご確認ください。

▶︎ウェルスナビのAIビジョンご紹介(ウェルスナビ開発者ブログ)

――そう考えると、これもよくある議論だとは思いますが、どこまではAIでどこからは人がやるべき領域だとお考えでしょうか?

上杉:前提として、AIはITの一分野にすぎないことを認識すべきと思います。そして、ITの導入目的は自動化でした。数十年かけてITが業務に導入されてきたことで、人の仕事は着々と自動化されてきました。ですから、AIは自動化を加速するに過ぎない、と考えていて、「ITを導入しておいて、何を今さら」と思ってしまいます。それを踏まえて人間の創造性がまだまだあると信じるのであれば、今やっている遊びが仕事になるなどして、新しい分野を切り開いていくのが人間の領分なのかなと思います。

どれだけ「打席に立ち続ける」ことのできる土壌を作れるかが重要

――AIファイナンシャルアドバイザーの実現以外に、AIグループとしての中長期的な方針はありますか?

上杉:AIファイナンシャルアドバイザーのようなAI化が実現できるかどうか如何に関わらず、ウェルスナビとしては「お金にまつわる様々なサービス」を展開していきたいと考えています。そのために重要なのは、プロダクト開発やサービス開発における「多産多死」を受け入れること、すなわち、打席に立ち続ける土壌を作ることです。

「打席に立ち続ける」という言葉を、データサイエンスの立場で置き換えると、ビジネスに実験科学を導入し、たくさん実験を繰り返せるような組織づくりが必要かなと思っています

具体的には、金融における新しいアイデアがあったときにプロトタイプを作成して、データを用いて検証する。検証で分かった結果を、また別の結果に反映させるというサイクルを作っていける組織づくりです。

また、既存のデータを使うだけでなく、プロトタイプをユーザーに使ってもらうことで、積極的にフィードバックデータを収集していくことも重要です。

これがデータサイエンスで行いたい/行うべきことです。広い意味で言うと、​​データサイエンスは、企業が新しく何かに取り組む文化を作る役割をになっていると捉えています。

――これまで様々な業務を経験されてきた上杉さまが思う、ウェルスナビで働くことの魅力は何だと感じますか?

上杉:前職では、与えられた戦略を如何に迅速に高品質なオペレーションに落とし込むかが重要視されていました。とにかく行動にうつすことが求められたように思います。

翻ってウェルスナビでは、戦略レベルにおいても必ずしも上から降りてくるわけではなく、自分たちから提案していくカルチャーが深く根付いている会社だなと思います。戦略から考えられる、つまり広い裁量権を各メンバーが任されているところが、ウェルスナビの大きな魅力かなと感じています。

――ありがとうございます。それでは最後に、読者の皆さまに対してメッセージをお願いします。

上杉:今はウェルスナビの第2創業期というか、次のフェーズに入ってきたと感じています。これまでは求める人物像として、きちんとやり切るような「責任感」や「チームワーク」が最重要視されてきましたが、これからは裁量権がどんどんと与えられていく中で、自律的かつ積極的に動ける能力が必要に思います。自己主張が強く、多少図々しいと思われるような人も歓迎したいと思っています。

ウェルスナビ株式会社(金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2884号・加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会)
・金融商品等の取引に関するリスクと費用はこちら:https://www.wealthnavi.com/rule/01.html

編集後記

途中で「AIと人の役割分担」についての質問をさせていただきましたが、1時間というインタビュー時間の中の一質問としてするにしてはあまりに深遠なテーマであり、今度はこのテーマをメインに据えてお話を伺いたいと思えました。それにしても、プロダクトの多産多死を会社として受け入れる土壌を作るというのは、非常にチャレンジングなことだと感じます。数年後、会社がどのような実験プラットフォームへと昇華されているのかが非常に楽しみです。

取材/文:長岡 武司
撮影:法本 瞳

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