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大型買収を経て、日立が本気でめざす「グローバルDXパートナー」とは?〜HSIF2021 JAPANレポート①

2021年10月11日〜15日にかけて、日立製作所主催のビジネスイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN」(以下、HSIF2021 JAPAN)が開催されました。
本イベントでは、世界中から多彩なスピーカーが登壇。「Lumada(ルマーダ)」を核として社会イノベーション事業を推進する日立の取り組みや、社会のDXにまつわる様々な取り組みが発信されました。

中でも注目を集めたのは、同社によるグローバル戦略の指針です。2021年3月末に日立が買収したとして話題となった、デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニー米GlobalLogic Inc.(以下、GlobalLogic)と、ITプラットフォームやサービスを提供するHitachi Vantara(以下、日立ヴァンタラ)とともに、Lumadaのグローバル展開をどのように加速させていく構想なのか。

本記事では、日立のLumada事業を統括する德永俊昭副社長がGlobalLogicと日立ヴァンタラの2名のCEOとともに登壇したハイライトセッション「Lumadaのグローバル展開の加速~グローバルDXパートナーに向けて~」の様子をレポートします。

Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPANのストリーミングを視聴する
※12月27日(月)17時までご視聴いただけます

プロフィール

德永 俊昭(とくなが としあき)
株式会社日立製作所
執行役副社長/日立グローバルデジタルホールディングス取締役会長兼CEO

 

Shashank Samant[シャシャンク・サマント]
GlobalLogic Inc.
President & CEO

 

Gajen Kandiah[ガジェン・カンディア]
Hitachi Vantara
CEO

顧客の新しい価値を創り出すLumadaとは?

まず、Lumadaの事業紹介からセッションがスタート。スピーカーはLumada事業を統括する德永俊昭氏が務めました。

「Lumadaは“Illuminate” と“Data”を組み合わせた造語で「データに光を当てる」という意味が込められています。お客さまがお持ちの生産設備や建設機械、鉄道車両などから収集した現場データと、ITシステムから収集したビジネスデータをフルに活用して新しい価値を創り出すエンジン。それがLumadaです」(德永氏)

徳永氏は、Lumadaには3つの要素があると言います。

1つ目は「顧客協創」。日立では「Lumada Innovation Hub Tokyo」に代表されるような協創施設で、お客さまやパートナーなど業界の枠を越えたステークホルダーをバーチャルとリアルでつなぎながら、本質的な課題を共有していると言います。顧客協創を成功に導くのが、日立独自の顧客協創方法論「NEXPERIENCE」です。「NEXPERIENCE」は、同社のデザイナーと研究者が長年培ってきたノウハウを「手法」「ツール」「空間」として体系化したものです。

2つ目は「XaaS(X as a service)」、つまりクラウドによるサービス提供です。顧客協創を通じて、ソリューションとしてのソフトウェアを開発し、クラウド上でサービス提供していきます。

「Lumadaには協創の成果として、既に1,000を超えるユースケースが蓄積されており、それらを組み合わせて、様々なお客さまへのソリューション開発に活用しています。特に、サイバーとフィジカルをデータでリアルタイムにつなぐ『ミッションクリティカルIoT』は日立の強みであり、お客さまに付加価値の高いサービスをご提供しています」(德永氏)

そして3つ目は、顧客協創やクラウドによるサービス提供を支える「デジタルプラットフォーム」だと、德永氏は続けます。
日立では「Lumada Alliance Program」と呼ばれるパートナー制度を通じて様々なパートナーと協調して顧客課題を解決するソリューションを開発しています。これによりデジタルプラットフォームである「Lumada Solution Hub」を活用したソリューションの柔軟な組み合わせや再利用による迅速なサービス提供を実現していると言います。

そして、Lumada事業のグローバル展開加速に向けて重要な役割を担うのが、GlobalLogicおよび日立ヴァンタラです。

「GlobalLogicは、2020年度実績で年率24%を超える売上成長を記録しています。これはお客さまに寄り添ってDXジャーニーを歩んできた証であり、2020年度の顧客取引平均継続年数10年、売上継続率114%という事実から見ても、GlobalLogicがお客さまから高い信頼を得ていることはご理解いただけるのではないかと思います。
日立ヴァンタラは、2020年11月に発表されたLumada Alliance Programを通じた各社との強固なパートナーシップにより、マルチクラウド環境で充実したサービスを提供しています。また、プラットフォーム上での高度なデータハンドリングを支えるストレージ分野においては、マーケットのリーディングプレイヤーとして認知されています」(德永氏)

GlobalLogicの3つのコンピテンシー

次のスピーカーは、今夏に日立グループ入りしたGlobalLogic President&CEOのシャシャンク・サマント氏です。GlobalLogicとはどのような会社なのか。サマント氏は「デザイン主導のデジタルエンジニアリング企業」だと言います。

「当社では、デザイン、高度なエンジニアリング、そしてデータを融合させ、お客さまのデジタル化を成功させたい、という思いを実現します。その過程で新しいビジネスモデルや収益源を創出し、お客さまのビジネスを変革しています。私達の協創アプローチは、日立のLumadaとそのOTとITソリューションの豊富なポートフォリオを強化します」

GlobalLogicは、企業のDXを実現するコンピテンシーとして、以下の3要素を提供していると言います。

特に中央の「高度なエンジニアリング」について、サマント氏は「エッジデバイス上で吸い上げたデータをクラウドへと送る“Chip-to-Cloud” まで対応可能」と表現し、同社の技術力を強調しています。また「コンテンツエンジニアリング」についても、同社の専門家によるデータの収集と分析を通じて価値を創出することで、消費者体験をより良いものにすることも示されました。

その上で同氏は、昨今世界中でトレンドとなっているDXプロジェクトについて、以下のようにコメントしました。

「DXは何年にもわたる旅のようなものです。だからこそ、日立のような長期的なパートナーを持つことが重要です。私たちは変革の様々なステップを玉ねぎの層のように捉えています」(サマント氏)

中心にコア製品があるわけですが、最新技術を活用してコア製品を強化することで、第2層の「デジタルの拡張」へと進みます。ここでは、企業はデジタルプラットフォームやインタフェースを使って消費者とのタッチポイントやチャネルをいかに増やすかを検討します。

さらに第3層の「デジタルサービス」で、サービスモデルをデジタルで強化し、多様化する顧客ニーズを満たすend-to-endのソリューションを提供します。そして第4層では、新たな収益源創出のための「デジタルエコシステム」や、サプライヤー・パートナー・顧客とのインタフェースとなる「ユニバーサルプラットフォーム」を構築すると言います。

「私たちは、お客さまのコア製品から、お客さま独自のデジタルサービスやエコシステムの創出を追求します。そして、我々のデザイン、エンジニアリング、Lumadaのユースケースとプラットフォームなどを活用し、迅速かつ効率的に実現することができます」(サマント氏)

デジタルエコシステムの構築に向けて

次に、GlobalLogicによる具体的な協創事例が紹介されました。

まずは、イギリス国営の教育出版企業のピアソン社(Pearson Education)です。ピアソン社は従来型の出版事業からの脱却をめざし、GlobalLogicと共に、一人ひとりに合わせてカスタマイズされたコンテンツを提供するアダプティブラーニング・プラットフォームを設計・構築しました。
これにより同社は、コンテンツや教科書から学習者およびその過程に合わせて、インタラクティブに管理するLaaS(Learning as a Service)へと、ビジネスモデルを移行することに成功したのです。
まさに、先ほどの「デジタルエコシステム」の第4層へのビジネスモデル変革に成功した事例と言えます。

このようなDXのソリューションプロセスについて、サマント氏は “DXのWHY – HOW – WHAT” のフレームワーク活用を説明しました。

「お客さまからデジタルでどうやって変革するのかと聞かれたら、私たちの出番です。
製品やサービスがどのようにお客さまと相互作用するかを理解する設計から始まり、プロトタイプエンジニアリング、開発、またはプロダクション・エンジニアリング、そしてアジャイルな方法で継続的に製品を改善するなど、全ての工程を行います。
これこそが私たちの活躍の場であり、この分野で膨大な経験を積んできました」(サマント氏)

もう1つデジタルエンジニアリングの変革力を示す好例として紹介されたのが、グローバル建設用工具を提供するHILTI Corporation 社との協創プロジェクトです。

同社はGlobalLogicのソリューションを利用することで、工具の製造販売だけでなく、建設用工具の「サービス提供」という形でビジネスモデルを変革し、全く新しい収益源や収益化モデルを構築しました。
その過程でUXを向上させることにも成功し、現在(イベント開催時点)は63カ国で1万4,000社の法人と30万人のユーザーが、65の言語でこのプラットフォームを利用していると言います。
こちらも、工具を「XaaS」として提供する「デジタルエコシステム」の第4層へのビジネスモデル転換が行われた良い事例と言えます。

最後に、サマント氏から日立グループ参画の意義と、今後への意気込みが語られました。

「社会イノベーション事業にデジタルエンジニアリングをもたらす日立の旅に参加できることを、非常に嬉しく思います。私たちはともに、Lumadaのポートフォリオを拡大し、お客さまが次世代のデジタルプラットフォームを推進することを支援します。また、お客さまのソリューションを日立ヴァンタラのデータドリブン型インフラストラクチャーで実行することで、お客さまのデジタル価値の進化を加速させます。私たちは日立と一緒に社会イノベーション事業と “POWERING GOOD” を実現していきます」(サマント氏)

日立ヴァンタラが積み重ねる「データドリブン」実績

次いで、日立ヴァンタラ CEOのガジェン・カンディア氏がプレゼンテーションを担当。同社からも、具体的な事例ベースのソリューションが紹介されました。

「ここ1年半で、世界のあらゆるリーダーは1つのことを学びました。それはパンデミックにより、産業界のデータドリブン型への変革が劇的なスピードで進んでいるということです。データドリブン、データに基づく意思決定こそが、組織を成功に導く上で今後は鍵となります」(カンディア氏)

一方で、データドリブンな製品や体験の創出には、それを支える強力なデジタルインフラが必要であると、カンディア氏は強調します。そこで最初に紹介されたのが、イギリスにあるサルフォードロイヤル病院(Salford Royal NHS Foundation Trust)の事例です。

昨年来のコロナ禍において、世界中の多くの病院の救急治療室は新型コロナウイルス感染症の患者であふれ、医療資源が逼迫しました。患者の命を助けるには、救急医療用のベッドや人工呼吸器などの医療資源を確保し、医師と看護師の的確な連携が必要となりました。

そこで日立ヴァンタラはこの問題を解決するために、「デジタルコントロールセンター」と呼ばれるプラットフォームを開発。IoT機器や病院内オンプレ環境のシステムと統合されることで、患者の入退院状況や病状、病床、医療機器、手術室の空き状況などがリアルタイムで見えるようになりました。

このデジタルコントロールセンターの導入により、同病院の業務効率性は15%向上したとのことです。

もう1つ面白い事例が、こちらの熱帯雨林の保全でのテクノロジー活用でしょう。

レインフォレスト・コネクション(Rainforest Connection:RFCx)は、ブラジルの熱帯雨林地帯で蔓延る違法伐採を防ぐ活動をしている団体です。国連によると、熱帯雨林での伐採は最大90%が違法なものとのことです。

非常に広大な面積を有する熱帯雨林で違法伐採の有無や場所を特定するのは容易ではありません。その上、一般的にレンジャーの介入までに14日程度かかります。これは違法伐採を行うために十分な期間と言っても過言ではありません。

そこで日立ヴァンタラはレインフォレスト・コネクションとともに、熱帯雨林上に太陽光発電を使った集音装置を設置し、違法な森林伐採を検知するデジタルソリューションを開発したのです。

収集した音源データにディープラーニングを適用することで、例えば動物が通常発する鳴き声と、侵入者が近づいたときに発する鳴き声の違いを検知し、アラートを発する仕様に設計されています。もちろん、熱帯雨林では通信状況が不安定なため、エッジAIがデバイス上で動き、通信が可能になったタイミングでクラウドにデータが送信されるようになっています。

このソリューションにより、レンジャーは違法伐採の可能性を96%の精度で事前に把握できるようになったと言います。

世界中のスマートシティ・プロジェクトにも着手

このように、グローバル規模で様々な社会や企業の課題に応えてきた日立ヴァンタラでは、顧客が抱える課題を大きく3つに分類しています。

1つ目は、急増するデータ量と急速に進むデジタル化への対応です。2025年までに世界のデータ量が5倍拡大するという予測もあり、企業データも爆発的な増加が見込まれます。だからこそ、データドリブン型組織へのトランスフォーメーションと、それに伴う高性能なデータストレージとデジタルインフラが不可欠になると言えます。

2つ目は、社内データの一元管理の実現です。データがサイロ化していたり、統合整備されていない状態では、適切なデータを適切な専門家に届けることができません。そして、適切なタイミングで適切な決断を下すことが難しくなります。先述したサルフォードロイヤル病院もこの問題を抱えており、デジタルコントロールセンターの導入で機器・患者・施設のデータを統合できたことで、院内資源の有効活用が実現したのです。

そして3つ目は、専門知識の不足です。DXを推進したくても、専門知識や人財が不足している。これは往々にして起こる問題です。多くの企業はデジタルエンジニアリングやデジタルプロセス設計、あるいはデータドリブン型の業種独自ソリューションの専門性を必要としています。

「これらの課題に対し、日立ヴァンタラは世界最高クラスのデータストレージ製品やインダストリアルIoTプラットフォームを駆使して、エッジからクラウド、データセンターまでをつなぎ、お客さまのデータアーキテクチャーの策定を支援します。私たちはこの事業を『デジタルコアのモダナイジング』と呼んでいます」(カンディア氏)

日立ヴァンタラでは、「Lumada DataOps Suite」と呼ばれるデータ管理・分析ソフトウェア群を提供しています。これは、顧客情報や業務情報、製品情報からコンプライアンス・不正行為等の管理に至るまで、企業がデータ利活用環境をモダナイズするために必要なデータ管理や分析用のツールが搭載されています。さらに、データガバナンスソリューションを用いてデータを適切に管理すれば、データへの不正アクセスを防ぐこともできると言います。

同社は、2019年よりフロリダのウォルト・ディズニーワールドリゾートおよび、カリフォルニアのディズニーランドリゾートにおけるオフィシャルアナリティクスプロバイダーに認定されました。人気アトラクションの運営効率の最適化を支援する中で、それぞれのテーマパーク自体がスマートシティのようであるため、新たな発見があったと言います。

また、日立ヴァンタラのソリューション適用先は、企業にとどまりません。同社では、アメリカのラスベガス市やインドのアンドラ・プラデシュ州、メキシコのテキーラ市といった、世界中の都市の「スマートシティ化」にも取り組んでいます。

設備管理から公衆衛生、電気や水の供給、人や物の輸送、セキュリティ、そしてヘルスケアなどの課題に対して包括的に取り組むことで、都市全体への「スマート化」に世界中で貢献しています。

最後にカンディア氏は、GlobalLogicとの連携について言及しつつ、今後についての意気込みを述べました。

「日立ヴァンタラとGlobalLogicが、どんな方法で業界をリードするのでしょうか?答えは、データでつなぐことです。
これまでの事例でお分かりのように、ビジネスがデータドリブン型になると、その変化がもたらす効果は非常に大きくなります。私たちは全てのお客さまにこのメリットを提供できると確信しています。なぜなら、日立ヴァンタラはデータドリブン志向な企業だからです」(カンディア氏)

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編集後記

今年3月に、日立製作所が米IT大手のGlobalLogicを買収したとのニュースを見て「すごい!」と感じてからまだ半年程度ですが、早くも両社の事業シナジーに向けた具体的な道筋が描かれるセッション内容となりました。
GlobalLogicと日立ヴァンタラ、それぞれのCEO登壇も相まって、Lumadaのスピード感や本気度を感じる内容であり、今後さらに取材したいことが増えたなと感じた次第です。
日立が強みとするIT×OT、さらには傘下となる両社が持つ強力なグローバル展開力が掛け合わさることによって、Lumadaを中核とする成長戦略はますます加速することでしょう。当然ながら日立の各セクターとの連携も増えていくでしょうから、グローバル市場でデジタルエンジニアリングを活かしていきたい方には、さらに魅力的な環境になることは間違いでしょう。

取材/文:長岡武司


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